「小松空港に新滑走路」ホントに必要? “地方空港充実させすぎ問題”の再燃か ただ特殊事情も
現在、新滑走路を建設する動きが起こっている小松空港。しかし旅客数や今後の見通しを見ると、その必要性が問われています。増設によって期待される効果もあるといいますが、どのようなものでしょうか。
国の「滑走路増設基準」満たしていない?
石川県の小松空港で、2本目の滑走路を建設しようという動きが起こっています。地方空港は1990年代から2000年代に全国で整備が続き、公共事業のあり方が問われました。それから四半世紀以上が過ぎて現れた、小松空港の新滑走路構想は、地方空港問題の新たな課題を映し出しているといえるかもしれません。
小松空港のターミナルビル(画像:写真AC)。
地方空港の整備は大型の公共事業です。四半世紀以上前は、こうした空港の新設、ならびに既存空港の滑走路の延長が多くなされ、そのたび、需要に見合った必要性があるかも議論の的になりました。石川県もこの例にもれず、2003年、県内2番目の空港となる能登空港がオープンしています。
一方の小松空港は航空自衛隊の基地を一緒に使う形で1961年に開港。実は同空港の滑走路のすぐ脇には、もう1本滑走路があるのですが、これは本来の滑走路が工事などで閉鎖された際に使うため、2本を一緒に使うことはありません。
そのような小松空港で新滑走路を設けようという動きは、30年後の発展を見据えて始まったもので、2022年に石川県議会で1000万円の調査費が付きました。今年4月には、現滑走路より約210m離れた北西に新滑走路を配置し、ターミナルビルを移設する案が検討委員会から石川県に示されています。
ただしその一方で、2050年の年間発着数の予測は、滑走路を新設する際に必要な国土交通省の評価基準である10万回に満たないことも、明らかになっています。
この年間発着数10万回という評価基準は、かつての地方空港が大きく増備される問題を受けて、一定の歯止めをかける目的で設けられたものです。加えて、2021年の小松空港の旅客数は全国24位というデータも報道されているほか、北陸新幹線も2015年3月に金沢まで開業していることもあり、利用者が今後大きく増加するとは予測しづらいところです。
評価基準を満たさず新幹線と競争を繰り広げる、全国で“中間クラス”の規模をもつ小松空港で新滑走路の建設が決まれば、国は、ほかの地方空港が小松空港と同じように施設の増強を図らないか、頭を悩ませることになるでしょう。
小松空港新滑走路設置の効果、どんなもの?
一方、石川県にしてみれば、小松空港の発展によるメリットがいくつか考えられます。
石川県では今も、1963年1月に本格的な大雪になり起きた「三八豪雪」が語り継がれ、交通網が遮断されたのをきっかけに金沢港建設の機運が高まりました。最近では2018年2月の記録的な大雪で交通がマヒし、小松市が「陸の孤島になった」との声も聞かれました。こうした気象災害に備え、空の交通網を充実させるという意味合いも考えられるでしょう。
レール敷設が進む北陸新幹線 金沢〜敦賀間(JRTT鉄道・運輸機構の動画より)。
また、漆芸や金箔などの石川県の地場産業である伝統工芸は高い経済効果があるうえ、隣の福井県は定期便が乗り入れる空港がありません。小松空港の新滑走路は、2県の観光を含めた経済需要の増加へ寄与するものと考えているかもしれません。
加えて今後、同空港が「軍民共用」であることも議論の行方に影響を与える可能性があります。日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増す中、日本海側で唯一、戦闘機部隊が配備される小松基地の機能強化に新滑走路が必要との声が大きくなれば、民間オンリーの他空港と比べても、議論はより複雑になることが予測できます。
現在の数字や予測上だけで見ると「新滑走路を作る意味」に疑問符がつく小松空港ですが、石川県のみならず全国の空港整備や、安全保障問題に波及する可能性もあります。そういった意味では、新滑走路にまつわる議論の行方は注目すべきポイントかもしれません。