知事交代で「待った」近鉄奈良線「大和西大寺〜近鉄奈良 移設・地下化」どんな計画?
大和西大寺駅の高架化は「必要だと思う」とのことです。
「改良すべき踏切」だけでない背景があった「ルート移設」
3路線が交わる大和西大寺駅(画像:写真AC)。
2023年4月の奈良県知事選挙により、4期務めた荒井正吾氏に代わって就任した山下真知事。5月8日に初登庁し、前知事時代の事業の一部について、予算執行を一時停止しあらためて精査するとしました。
執行停止となった事業のひとつに挙がったのが、奈良市内を走る近鉄奈良線の連続立体交差化に関するものです。
具体的にどうするつもりなのでしょうか。まず大和西大寺駅は地上駅から高架駅となり、周囲の京都線・奈良線・橿原線の取りつけ部も高架化。京都・大阪・奈良・橿原方面の4列車が平面交差で入り乱れる当駅はボトルネックとなっており、ダイヤが乱れると踏切がなかなか開かないことも。まだ高架駅の構造は検討途上ですが、布施駅や京急蒲田駅のように「2層構造」とすることで、平面交差によるダイヤ上の制約の解消を図ることも可能です。
もうひとつは、大和西大寺〜新大宮〜近鉄奈良の移設・地下化です。現在は平城宮跡のど真ん中を突っ切る形で走っている奈良線を、南側へ移設。大和西大寺駅からいきなり平城宮跡南端の「大宮通り」へ入り、地下線でまっすぐ近鉄奈良へ向かうルートになります。さらに、途中に2つの新駅「朱雀大路駅(仮)」「油阪駅(仮)」を設置する構想もあります。
ルート移設・地下化には2つの背景があります。まずは2008(平成20)年に策定された「国営平城宮跡歴史公園基本計画」で「宮跡内を縦横断する道路や鉄道の移設」が課題として挙げられていたこと。
もうひとつの決定的な背景は、途中にある4つの踏切が、「踏切道改良促進法」に基づく「改良すべき踏切道」に指定されたこと。2017年の指定から立体交差化の機運は一気に高まり、2020年には県と国土交通省 近畿地方整備局とのあいだで「大和西大寺駅高架化、ルート移設」で進めるという基本合意が交わされるに至っています。
念願の事業化を果たすため、概略設計が進行中。一部国の補助を受け、昨年度予算は7000万円、2023年度は1億2500万円を執行予定――それに一旦ストップがかかりました。
山下知事は、国が指定した「改良すべき踏切」を解消することに関しては必要として、西大寺駅を高架化して西大寺〜あやめ池間の踏切を無くす現案には理解を示しています。しかし大宮通りへルートを移設して地下化することは「あまり意味がないだろうと思っています」とのこと。踏切解消は「今の平城宮跡の中のルート」で行う方向で、新たな協議をしていきたいとしています。