完全終了?「関空〜リニア奈良連絡線」知事交代で「必要ない」一蹴された壮大鉄道計画とは
最高速度200km/hで奈良から関空直結→「必要だと到底思えない」予算停止!
検討業務が「予算停止」どんな新路線なのか
関空と和歌山へスピーディーに直結?(画像:写真AC)。
2023年4月の奈良県知事選挙により、4期務めた荒井正吾氏に代わって就任した山下真知事。5月8日に初登庁し、前知事時代の事業の一部について、予算執行を一時停止しあらためて精査するとしました。
執行停止となった事業のひとつに挙がったのが、「リニア中央新幹線・関西国際空港接続線」という、新たな鉄道路線の整備に関する検討事業です。これはどんな計画なのでしょうか。
この鉄道路線は、リニア中央新幹線の奈良県駅(仮)と関西空港をつなぐもの。目的は、関空に下り立ったインバウンド観光客を奈良・和歌山へ連続的に取り込むこと。さらには、白浜など近畿南部方面への玄関口を、新大阪駅に代わって奈良県駅が担うという意図もあります。
ルートは大和路線・和歌山線を踏襲しつつ、クネクネした箇所では高規格のショートカット新線を建設。紀の川市内で北西へ分岐し、日根野・泉佐野を経由して関西空港へ直結するものです。
単線の在来線ながら最高速度200km/hをめざし、リニア駅〜関西空港は60分弱、白浜へは2時間半程度でむすぶとしています。資料では、国内最速の160km/hを誇った北越急行の在来線特急「はくたか」を意識しています。概算の整備費用は約2500億円となっています。
新線区間の建設には別の"腹積もり"があります。五條市内では南海トラフ大地震に備えた「大規模広域防災拠点」として2000m級の滑走路などの整備計画がありますが、それに必要な盛土のために、リニア中央新幹線のトンネル工事で出た掘削土砂を活用する案があります。その「土砂運搬貨物ルート」のためにJR和歌山線などを高規格化し、最終的に関空への新線整備に転用するというわけです。奈良市と五條市には、それぞれ土砂を積み下ろしする一時的な「貨物駅」を整備するとしています。
練りに練られた新線構想ですが、さらに構想の具体化を図るため、2023年度も検討業務の予算が計上されていました。リニアの奈良県駅の設置位置検討などもあわせて、予算は県単独の4500万円となっています。
この予算を、山下新知事は「一応担当課の話は聞きますけど、もうこの場で、これはもうしないという方向になる可能性が極めて高いと思います」とバッサリ。重ねて「必要ないと、予算執行はしないという判断になる可能性が高いと思います。必要性もないし、費用対効果も全くない。奈良から関空までリムジンバスも出ていますし、(略。鉄道を)乗り継げば、関空まで行けますから。(略)必要だと私は到底思えない。もうそれに尽きます」と完全否定しています。
当予算のもう一つの「リニア駅の位置検討」についても、「こちらであれこれ調査研究しても、結局はJR東海の意向が大きいのだから、まずそれをちゃんと聞いてから話を詰めるべきでは?」という主旨で、やはり予算執行を一旦保留にするとしています。