体外受精ロボットを開発しているスタートアップのOverture Lifeが、ソニーのPlayStation 5のコントローラーを使ったロボット体外受精を行い、世界初の体外受精ロボットによる出生に成功したことが報じられました。

First babies made with 'sperm robot' are born

https://nypost.com/2023/04/26/first-babies-made-with-sperm-robot-are-born/



Life found a way with… a PS5 controller? - The Hustle

https://thehustle.co/life-found-a-way-with-a-ps5-controller/



女性から採取した卵子に細いガラス針で精子を注入する顕微授精は、不妊治療に望みをかける人にとっての選択肢のひとつですが、熟練した発生学者の高度な技量を要するため費用がかかってしまいます。

今回Overture Lifeは、PlayStation 5用コントローラーを持ったエンジニアが操縦する体外受精ロボットで12回体外受精を行い、これにより2人の女の子の赤ちゃんを誕生させることに成功しました。この赤ちゃんは、自動化技術の助けを借りて受精した後に生まれた人としては初めてとのことです。



by Overture Life

この体外受精ロボットを開発するため、Overture Lifeは体外受精用の「バイオチップ」を開発しました。これには、胚の成長を促す培養液や、精子が泳ぐための小さな溝がついています。

Overture LifeのCIO(最高情報責任者)で遺伝学者のSantiago Munné氏は、「最終的には、精子と卵子を入れると5日後に受精した胚が出てくる『ミニ体外受精ラボ』にすることを想定しています。この技術はどんな産婦人科医でも扱えるので、体外受精の専門医に診てもらうよりずっと安く済みます」と話しました。

同社は、ロボットの支援により体外受精の成功率を高め、手順にかかる費用を抑えることで、最終的にはコストを70%削減することを目標に掲げているとのこと。



Overture Lifeは、YouTubeの元CEOであるスーザン・ウォシッキー氏を始めとする投資家から約3700万ドル(約50億6000万円)の資金を調達しています。また、競合他社も続々とこの分野に進出しており、体外受精市場は2026年に362億ドル(約4兆9520億円)の規模に成長するとの見通しもあります。

卵子に精子を注入する「細胞内精子注入法(ICSI)」の開発者であるジャンピエロ・D・パレルモ氏は、メディアに対し、「この技術のコンセプトは素晴らしいですが、まだ産声を上げた段階です」と話しました。また、Overture Lifeのエンジニアも、注射針に精子をセットするのは手動であることから、「これはまだロボットによるICSIというわけではありません」と述べています。

一方、多くの不妊治療専門医は、将来的に体外受精ロボットが登場するのは必然であると考えています。体外受精を行う医療機関や研究機関のネットワーク・Innovation Fertilityでチーフサイエンティストを務めるキャスリーン・ミラー氏は、「発生学者とは何か、という定義が今後進化していくことでしょう」と話しました。