人気小説家の燃え殻さんと爪切男さんが「超キン肉マン展」と2月の『キン肉マン』連載をレビュー!

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人気小説家の燃え殻さんと爪切男さんが「超キン肉マン展」と2月の『キン肉マン』連載をレビュー!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりがアニメ40周年展「超キン肉マン展」と2月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

アニメ40周年展の内覧会にふたりも参加してきました

燃え殻(以下、燃) 「超キン肉マン展」の内覧会、おもしろかったね。

爪切男(以下、爪) 楽しかったですね。自分がパロ・スペシャルやキン肉ドライバーをかけて、写真が撮れるコーナーで、僕らもキャッキャ言って撮り合ったけど。今日会場に来てた人たち、内覧会だから関係者じゃないですか。そういう人たちもみんな、写真を撮って喜んでいて。

燃 やってたやってた。あそこ『キン肉マン』初のインスタ映え感があった。

爪 それはありましたね。インスタ映えするスポットは多かった。夢中で写真撮ったもん。

燃 そこが時代と合ったというか、時代に無理矢理追いつかせたというか(笑)。やっぱり立体物は、観ると盛り上がるよね。超人たちの等身大の立像も、マスクとかバッファローマンの折れたツノとかも。

それから......アニメから『キン肉マン』に入った世代も、あの頃、いっぱいいたでしょ。僕はもうちょっと上で、『少年ジャンプ』を読んでいて、『キン肉マン』が盛り上がってきて、アニメが始まる、っていうのを追ってきた世代だから。もちろん、今日の展示、色がアニメ仕様だったでしょ?

爪 そうですね。

燃 僕らみたいに、マンガから入ってアニメに行った人たちは、そういう違いがわかっておもしろい、というのもあったな。当時のアニメが観れるコーナ−があったじゃない? あれで、リキシマン対スプリングマンの試合を観て......俺は忘れてたんだけど、アニメだと、リキシマンがバラバラにならないんだね。

爪 アニメだと、リキシマンがスプリングマンに締められて、内出血で身体が黒くなって、バタッと倒れる。リキシマンが八つ裂きにされるのは、残酷だからでしょうね。

燃 そういうマンガとアニメーションの違い、けっこう忘れてて。それもおもしろかった。

爪 『キン肉マン』の当時のおもちゃのコーナーも良かったですね。キンケシ、フィギュア、キン肉マンソーセージ、キン肉マンカレー、僕が持ってたコロムビアから出たカセットテープと本のセットもあった。

燃 それ、爪さんいつも言ってるよね。超人ひとりひとりのテーマ曲が入ってるやつ。

爪 キンケシも、全種類、全サイズあって。

燃 俺が持っていた28体ボックス入りのやつもあった。爪さんのカセットブックもそうだけど、かつて自分が持っていたものを、一所懸命観ているのって不思議だよね。でも「ああっ、これこれ!」ってなる。

爪 なりますよね。観ていて楽しかった。

キン肉マンの恍惚とバッファローマンの不安―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第406話 忌まわしき"火事場のクソ力"!!の巻(2月6日分)
第407話 不死身のキン肉バスター!!の巻(2月20日分)
第408話 最強神! 調和の神!!の巻(2月27日分)
あらすじ
超神vs超人のバベルの塔第6戦は、キン肉マンvsマグニフィセント。数々の苦難に追い込まれるも"火事場のクソ力"を発動し、キン肉バスターの進化系の技を繰り出しキン肉マンが勝利。バベルの塔最終決戦は、バッファローマンvs調和の神ザ・ワンとなった

***

燃 さて、2月の連載分、406〜408話だけど......。

爪 火事場のクソ力で、あのとんでもない新技「キン肉バスターイモータル」を繰り出しましたね。この新技、エグかったですね。

燃 キン肉バスターにまだ改良する余地があった、ということにびっくりした。

爪 ミートくんも同じことを言ってましたよね。「キン肉バスターのこんな進化形がまだあったなんて......」(407話)って。でもやっぱり、キン肉マンの試合はカッコいいな。

燃 すごく正統な試合だったよね。真正面試合。主人公感があった。さすがだったな。

爪 それだけに、このあとのバッファローマンとザ・ワンの闘いが......。

燃 ああ、死の匂いがするよね。

爪 相手が調和の神、超神の代表であるという時点で、負けフラグが立ってますもんね。ザ・ワンのフォルムはどうですか? ツノがいっぱいありますけど。

燃 だからもう、たぶん、バッファローマンが、宙に舞いますなあ。

爪 (笑)。

燃 バッファローマン、負けが似合うじゃない? 『超キン肉マン展』にも折れたツノが展示してあったけど、ツノが折れるのも似合う。傷だらけでボロボロになっていくさまが、そのままフィギュアにできるっていうか。無傷でリングを下りない佇(たたず)まいがカッコいい。プロレスラーっぽいんだよね、やっぱり。

爪 うん、そうですね。

燃 キン肉マンの今回の試合って、すごくレスリング的であり主人公的な試合だったけど、バッファローマンはもっと一直線な。全盛期の長州力とか、橋本真也とか、佐々木健介とか。

爪 ああ、ああ。

燃 ドーン! ドーン! ってぶち当たるような一直線な闘いを、力尽きるまで繰り返す。

爪 自分にも相手にも、ダメージが残る闘い方。

燃 そう、それで最終的にボロボロになっていくさまもカッコいい。それは今の新日本プロレスでは、石井智宏が引き継いでるけど。

爪 そういう試合になるといいですけど......。

燃 ザ・ワンが、そんな一直線のバッファローマンを、どこまで受けてくれるのか。一直線の試合をする人って、相手によるじゃない? 藤波辰爾みたいに受けがうまいと、名勝負になるけど、受けが下手だと力任せのぶつかり合いになる。長州力×橋本真也、途中で藤波が止めに入ったけど。

爪 ありましたね(笑)。藤波がリングに上がって「我々は殺し合いをしてるんじゃない!」って(※2001年1月4日、東京ドーム)。

燃 そういう試合になるかも。

爪 あと、バッファローマンに決定的に足りないことは、なんなんでしょうね。「少なくとも今のお前では私を倒せない」って言われてるじゃないですか。"今の"って言われている、っていうことは、次もあるのかな。

燃 そうか。前に爪さんが言った、キン肉マンがミートくんから卒業するっていう予想。あれ、外れたけど、俺は納得したんだよね。ミートくんからの卒業っていうのは、すごくいいテーマだなと思った。

だから、バッファローマンが卒業するとしたら、何からかなあ、と考えたんだけど。バッファローマンって、命を大切にしないで闘ってきたじゃない?

爪 そうですね、うん。

燃 命懸けで突進して行ったり、命を誰かにあげたり。そういう命を大切にしない闘い方を卒業して、「生きたい」っていう闘い方になる。だから、これまでのバッファローマンって、ものすごく刹那的だったのかもしれない。

爪 ああ、それはそうかも。

燃 最終的に犠牲になるのを卒業して、ちゃんと生きてリングを下りるようになる。葛西純vsエル・デスペラードみたいな(2022年9月12日、国立代々木競技場第二体育館)。

爪 ああ、試合が決まった時、デスペさんが「燃え尽きて死んでもいい覚悟でリングに上がる」って言ったら、葛西純が怒った。「死にたくて死ぬ奴なんていねえんだよ!」と。で、デスペさんが謝ったという。

燃 そうそう。

爪 あれ、いい話でしたよね。そうだ、ザ・ワン、最初に名乗った時に、「地上に降りて得た新たなる超神名はザ・ワン!」と言って、指を一本立てたじゃないですか。それをザ・マンがモニターで見ながら「ザ・ワン...」とつぶやく。

僕、あれが好きで。ザ・ワンって、いろんな意味で絶妙っていうかね。登場シーンで、怪鳥が壁をぶち破って、それに続いて現れるのも絶妙だし、持ってる扇子やそれをサッと広げるのも絶妙。そこがたまらない(笑)。

燃 昭和プロレスの感じするよね。

爪 ラスボス感って、そうなりますよね。

燃 ああ、それはわかる。ラスボス感はある。

爪 あと気になるのが、ザ・ワンの全身を覆っているプロテクターが、割れるかどうか。

燃 ああ、そうだね。

爪 プロテクターが破壊されるところを観たいですね、バッファローマンだけに。それこそ、自分からプロテクターを外すかもしれないですね。

バッファローマンがかなり追い込んだら、「ようやくこのプロテクターを外せる時が来た」とか言って。で、外したらバリ強い、みたいな。

前も言った、今までの常識を超えたハリケーン・ミキサーをバッファローマンが出して、プロテクターが割れるか、もしくはザ・ワンが自ら脱ぐかして、ようやく対等のレベルになれるのかな、と。それぐらいやらないと......このままだと、明らかに実力差を感じちゃいますもんね。

燃 ああ、それはそうだね。

爪 これはバッファローマン、勝てないだろう、っていう雰囲気が漂ってる。

燃 どう考えてもそうだよね......。

取材・文/兵庫慎司 撮影/鈴木大喜

「超キン肉マン展」パロ・スペシャルコーナーの様子