有名人のディープフェイクムービーというと、顔が浮かんで見えるような不自然な映像が思い浮かぶ人も少なくないはず。しかし、俳優のマイルズ・フィッシャーとVFXアーティストのChris Umé氏がタッグを組んで作成したムービーを再生すると、偽物だと言われなければ本物だと思ってしまいそうなトム・クルーズパリス・ヒルトンと言葉を交わしているのを見ることができます。

@deeptomcruise @parishilton and I are #sliving ♬ Aesthetic - Tollan Kim


ムービーを再生すると、タキシードを羽織るトム・クルーズが画面に向かって歩いてきます。



トム・クルーズが姿見の前に立つと、後ろからドレス姿のパリス・ヒルトンが登場しました。



トム・クルーズのしぐさや表情に不自然さはほとんど感じられません。



投稿者名が「deeptomcruise」となっていることからも分かるとおり、実はこの映像はトム・クルーズディープフェイク映像を投稿するTikTokアカウントによるもの。



トム・クルーズを演じているのは、俳優のマイルズ・フィッシャーです。フィッシャーは映画「スーパーヒーロー ムービー!! 最’笑’超人列伝」でトム・クルーズのパロディの役を演じたことがあるほどトム・クルーズ似なことで有名で、フィッシャーがエンターテインメント情報誌のThe Hollywood Reporterに寄稿したエッセイによると、ハリウッド入りを目指したのも「まるで映画スターみたいですね」とよく言われるからだとのこと。

しかし、顔がトム・クルーズによく似ていることは、かえってフィッシャーの役作りの障害となってしまいました。そこでフィッシャーは、声の出し方やイントネーション、ファッションを変えたり、演技力を磨いたりして「自分がトム・クルーズではないこと」を証明しようとしましたが、その努力が実を結ぶことはありませんでした。

そしてついに、「トム・クルーズに似ていることを隠そうとするのをやめて、いっそ誰も見分けがつかないほど完璧にマスクをかぶって、それを自分のものにしてしまおう」と思い立ったフィッシャーが出会ったのが、タイ在住のベルギー人でVFXアーティストのChris Umé氏が作った一本のディープフェイクムービーです。

TOM CRUISE 2020 - RUN TOM RUN (Presidential Campaign Announcement) Deepfake - YouTube

このムービーは、フィッシャーがトム・クルーズになりきって演じた映像を、Umé氏がディープフェイク技術を駆使してさらに本物そっくりにしたもの。あまりにもよく似ていることに感銘を受けたフィッシャーは、すぐにUmé氏と連絡を取りました。そして、何回か言葉を交わすうちに意気投合し、2人でトム・クルーズディープフェイクムービーを作っていくことにしました。こうして生まれたのが、前述の「DeepTomCruise」というTikTokのパロディアカウントです。

このムービーを取り上げたソーシャルニュースサイト・Redditのスレッドには、「白昼堂々だまされてしまいました」というコメントや、「ムービー中のトム・クルーズの背がパリス・ヒルトンより高いが、本物は違うので偽物だと分かります」と指摘するコメントなどが投稿されていました。