【▲ NASAの惑星探査機「ボイジャー2号」が撮影した天王星(Credit: NASA/JPL-Caltech)】


三日月形をしたこちらの天体は、アメリカ航空宇宙局(NASA)の惑星探査機「ボイジャー2号(Voyager 2)」が撮影した天王星です。大気に含まれるメタンが光の一部を吸収するために、天王星は緑がかった青色に見えます。


1977年に打ち上げられたボイジャー2号は、今から37年前の1986年1月24日に天王星へ8万1500kmまで接近してフライバイ探査を行いました。同じ年に打ち上げられた同型機の「ボイジャー1号」は木星と土星をフライバイした後に太陽系外へ向かいましたが、ボイジャー2号は176年周期とされる稀な惑星の配置を利用して、木星・土星・天王星・海王星を一気に探査する通称「グランドツアー」を行ったことで知られています。


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【▲ NASAの惑星探査機「ボイジャー2号」が撮影した天王星(Credit: NASA/JPL-Caltech)】


太陽から約20天文単位(※)離れた軌道を公転している天王星は、地球からは太陽に面した側しか観測することができません。2023年1月現在、冒頭の画像のような裏側に近いポジションから三日月形の天王星を観測・撮影したことがあるのはボイジャー2号だけです。


※…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来。


天王星への最接近前後にボイジャー2号が取得した天王星やその衛星の画像は約8000枚に上ります。この観測でボイジャー2号は11個の衛星や天王星の2つの環、天王星の自転軸に対して55度傾いて中心からも外れている磁場を発見しました。


【▲ NASAの惑星探査機「ボイジャー2号」が撮影した天王星の衛星ミランダ(Credit: NASA/JPL-Caltech)】


また近年では、ボイジャー2号の磁力計が取得した当時の観測データをもとに、ボイジャー2号が天王星のプラズモイド(磁場構造をともなうプラズマの塊)を通過していたとする研究成果が発表されています。


関連:天王星の大気が一部失われていたらしき証拠、ボイジャーのデータから発掘(2020年3月27日)


【▲ ボイジャー2号による天王星フライバイの飛行経路を示した図(Credit: NASA)】


2023年で打ち上げから46年となるボイジャー2号は、太陽系の外に向かって飛行を続けています。2018年11月には太陽圏(ヘリオスフィア、太陽風の影響が及ぶ領域)を離脱し、ボイジャー2号はボイジャー1号に続いて星間空間に到達した人工物となりました。NASAによると、2023年1月26日の時点でボイジャー2号は地球から約199億km(約133天文単位)離れたところを太陽に対して秒速約15.4kmで飛行しており、地球とボイジャー2号の通信は片道だけでも18時間27分33秒かかります。


なお、ボイジャーに電源として搭載されている放射性同位体熱電気転換器(RTG※)は出力が年々低下し続けていて、2025年頃には探査活動を終えることになると予想されています。


※…RTG:Radioisotope Thermoelectric Generatorの略。原子力電池の一種で、放射性物質が崩壊するときの熱から電気を得るための装置


ボイジャー2号が撮影した美しい天王星の画像は、NASAの公式Twitterアカウントのひとつ「NASA Voyager」が2023年1月26日付で改めて紹介しています。



 


Source


Image Credit: NASA/JPL-CaltechNASA/JPL - PhotojournalNASA - 35 Years Ago: Voyager 2 Explores Uranus

文/sorae編集部