2010年以降、公の場には姿を見せていないといわれる創価学会の池田大作名誉会長(94)。写真は2006年に撮影

 統一教会問題が創価学会に“飛び火”した。高額献金(財務)、宗教2世、政教分離……。両教団に共通する問題を、各週刊誌が一斉に叩き始めたのだ。そこで本誌は、新宗教の“有力教団”に対し、世に溢れる創価学会批判をどう考えているか聞いた。設問は、以下の3つを用意した。

 質問1:教義ではなく運営面について、貴団体は創価学会を評価したり、参考にされる点はありますか。

 質問2:旧統一教会と創価学会については高額献金、宗教2世問題、政治への関与などについての共通点が指摘されています。貴団体はこれら2つの教団について、共通点があるとお考えでしょうか。

 質問3:貴団体が、創価学会と「ここが違う」と明確にいえる点はなんでしょうか。教義ではなく、運営面についてお教えください。

 その結果ーー。多くの教団が「無回答」「回答拒否」という対応だったのである。

「弊会といたしましては、マスコミ各社からのご質問へのご回答は、できる限り対応させていただきます。

 しかしながら、今回のような特定の団体に限定したご質問にお答えすることが、結果的にその団体の批判や評価に繋がるようなことは、差し控えさせていただきたいと考えます」

「霊友会」は葛藤に満ち、そうした回答。これを見ても、他教団について、自らの立ち位置を示すことの困難さがわかるだろう。宗教学者の島田裕巳氏が語る。

創価学会について、自分の教団がどこまで問題を正確にとらえているか、自信がないのでしょう。それ以上に、今のような情勢で、自分のところにまで飛び火し、変に突っ込まれたくない。だから、よけいなことは言いたくないということだと思います」

 そんななか、歯に衣着せぬ回答だったのが「幸福の科学」だ。質問1に対しては、創価学会を評価・参考にする点は「ない」と答えた。

「もともと、創価学会は宗教ではなく大石寺(編集部注・日蓮正宗総本山の寺院)の在家の講であるため、金集めを行動原理とし、その資金の運用のみを考えています。信仰心、教義、儀式とも不足しています」

 そして質問2の「旧統一教会と創価学会の共通点」は、「2つの教団とも政治的権力や影響力を宗教の正統性の根拠としています。当会は宗教の考えの一部が、政治的意見となっています」。

 質問3の「創価学会との違い」への答えはこうだ。

「信仰の対象、教祖、教義が一貫しており、大石寺を破門された創価学会とは違います」

 前出の島田氏が、幸福の科学の回答について、こう見解を示した。

「信者数が公称で1100万人の幸福の科学の、信者世帯数が公称827万の創価学会への対抗心かもしれません、かつて、創価学会の幹部が幸福の科学のナンバー2になったことがあるなど、両教団には因縁があるのです。

 それに、戦後に急拡大し、大きな存在感を持つ創価学会を、ほかの教団は意識せざるを得ない。幸福の科学のこの回答は、新宗教の教団すべての創価学会に対する本音かもしれません」

 一方、「ワールドメイト」からは以下の回答があった。

質問1への回答
「信者が約827万世帯という創価学会は、信仰者がそれだけ多数いるということであり、そこで人々が幸せを実現していれば、素晴らしいことだと思います。

質問2への回答
 もちろん、当法人とは規模が違い過ぎるため、運営面の参考にはなりません。また、信者数が『世帯数』で表わされているように、家族単位の信仰が奨励されていると思います。当法人は個々人の信仰ですので、その点でも運営方法が異なります」

質問3への回答
「共通点の有無でいえば、どんな宗教にも共通点はあるでしょう。ただ、例示されている問題については、それぞれの団体ごとに主張があることと思います。当法人は、他団体についてそこまで詳しく知らないため、詳しく比較ができません。しかし、日本は法治国家なので、法に反することは、正すべきだと思います」

「運営面の違いは幾つもあるでしょうが、顕著な違いをひとつ挙げるなら、政治や選挙に関する姿勢ではないでしょうか。当法人は、特定の政党や候補者に投票するよう信者に呼びかけたことは、これまで一度もありません。信者を選挙活動に関わらせたくないので、特定候補への投票願いや、選挙のビラ配りなども、させることはありません」

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 じつは、今回の取材では「質問4」を設けていた。12月10日、参院本会議で成立した、旧統一教会の被害者救済新法への賛否を問うものだ。新法は、悪質な寄付の勧誘を禁止し、行政の勧告や命令に従わなかった場合、懲役や罰金などの刑事罰を科す。

 このには、創価学会に関する質問には「無回答」だった複数の教団も回答した。

「賛成。不完全かもしれませんが、まず第一歩として、これまで救われなかった方々を救う道が、開かれたことを評価します。もっと早くに定められるべきものだったと思います」(ワールドメイト)

「賛成。慎重な議論のうえで、適正な法整備がなされ、信仰に対する安心感に繋がることを望みます」(真如苑)

「被害者救済の対策は必要であるが、新法案および国会審議で『信教の自由』が侵害されないか懸念している」(新日本宗教団体連合会)

「救済については賛成。基準やその運用については今後も慎重に進めていただきたいと思います」(天理教)

 多くが新法を前向きに評価するなかで、幸福の科学のみは明確に「反対」と答えた。

「変質者による暗殺事件は、宗教界全体への法規制や、政教分離規定に関係ないと考えています」

 新法成立には、世論の後押しがあった。「信教の自由」侵害の懸念を拭えない新宗教も、大っぴらに「反対」とは言いづらいのだろうか。新法制定のきっかけとなった旧統一教会と、創価学会の共通点を指摘するのは、ジャーナリストの乙骨正生氏だ。

「フランスの『反セクト法』では、旧統一教会も創価学会もリストアップされています。『セクト』とは反社会的全体主義集団のことで、いわゆるカルトを意味します。『精神の不安定化』『法外な金銭的要求』『子供の囲い込み』『公権力への浸透の試み』などが認定の要件となります。

 旧統一教会は、高額な献金や2世問題、政治への浸透で問題視されていますが、創価学会にも『財務』があるし、宗教2世問題もあり、政治へも、公明党を通じて浸透しています。旧統一教会問題で、これらの問題が表沙汰になったことで、いま学会内部には不満が広がっています」

 創価学会に限らず、「新宗教」と呼ばれる各教団はみな、多かれ少なかれ統一教会問題のあおりを食った。

 次なる“飛び火”は、はたしてーー。