主翼4枚で垂直離陸に挑戦「X-19」の初飛行日 -1963.11.20 「オスプレイ」の″陰の先輩″
日本が「YS-11」を初飛行した翌年。まぎれもない「意欲作」でした。
VTOL実用化の “ひとつの試み”
試験飛行中のアメリカ空軍「X-19」(画像:アメリカ空軍博物館)。
今から59年前の1963年11月20日。カーチス・ライト製の試作機「X-19」が初飛行を行いました。
X-19は、滑走路を使わずホバリングで離着陸する「VTOL機」の黎明期に、空中で角度を変化させプロペラとローターを兼用できる「ティルトローター」の実用化をめざして造られた実機のひとつでした。
その中でも、X-19は主翼2対をもつ「タンデム翼機」で、合計4基のプロペラで飛行するという大きな特徴がありました。ただ、役割は異なっており、前翼は水平飛行時にはフラップで揚力を発生させるのに対し、後翼は水平尾翼代わりで昇降舵を備えていました。
もともとカーチス・ライトが行っていた「X-100」「X-200」という開発プロジェクトに、アメリカ空軍が参加して実現したX-19。実用化すれば、人員の救援やミサイル基地の支援、物資輸送や内乱鎮圧などに活用される予定でした。
初飛行に漕ぎつけたX-19ですが、そこからは順調に実用化には進みません。動力周りに設計上の問題を抱えており、1965年に墜落事故を起こすと、そのままプロジェクトは放棄されてしまいました。
その後、「タンデム翼機で4基ティルトローター」というコンセプトのVTOL機は現れず、基本的に主翼1対に計2機のティルトローターというのが主流になっていきます。
とはいえ、X-19の2年間の試験飛行で得られたデータは他機の開発に際しても参考にされ、ベル社「XV-15」や、2005年にVTOL史上初の実用化を果たすV-22「オスプレイ」にも活かされています。X-19はその他無数の実験機とともに「試行錯誤の失敗作」のひとつではあるものの、VTOLの歴史を陰から支えた存在だと言えるでしょう。