「強気の攻め」を貫く・神村学園神村・松永

<第151回九州地区高校野球大会鹿児島県予選:神村学園12−7鹿屋中央>◇10日◇決勝◇平和リース

 鹿屋中央は立ち上がり、準決勝で強打の鹿児島城西を上回る強打で逆転勝ちした勢いをみせる。

 1番・村山源(2年)から4連打を浴びせ、1つのアウトも取られないうちに4番・板敷 風哉(2年)の左前2点適時打で先制。更に満塁から相手のエラーで3点目を挙げた。

 神村学園も2回裏に反撃に転じる。1死二、三塁から9番・藤田 侑駿(1年)のスクイズで1点を返し、1番・今岡 歩夢(2年)の左越え三塁打、2番・上川床 勇希(1年)の左前適時打で4点を返し、瞬く間に試合をひっくり返した。

 3回表、鹿屋中央は無死一、三塁で併殺の間に同点に追いついたが、その裏、神村学園は再び9番・藤田のスクイズで勝ち越す。

 4回からは神村学園・松元 涼馬(2年)、鹿屋中央・松原 琉輝(2年)が試合を立て直す。

 次の1点がどちらに入るかで試合の趨勢を分けそうな雰囲気の中、6回裏、神村学園は2死から3連打を浴びせ、2番・上川床の右前適時打で待望の追加点を先にとった。

 7回には無死一、二塁からの送りバントが悪送球を誘って7点目を挙げると、1番・今岡、4番・秋元 悠汰(2年)の適時打など、打者10人で6点のビッグイニングを作った。

 鹿屋中央は8回表に6番・黒木 真翔(2年)の中越え二塁打などで2点、9回は途中出場の5番・豊重 伶王(2年)の右前適時打で1点を返し、なお1死満塁と準決勝の大逆転劇を思い出させる好機を作ったが、神村学園の3番手・松永優斗(2年)が2者連続三振で切り抜け、神村学園が2季連続となる優勝旗を手にした。

 神村学園の「強気の攻め」(小田 大介監督)が初回の3失点を瞬く間に覆し、春に続く優勝旗をもたらした。

 2回裏無死一、二塁。小田監督は打席の8番・今村 拓未(1年)に伝令を送る。

 「直球を狙って打て!」

 セオリーなら送りバントだが、鹿屋中央は内野守備が堅くバントシフトもうまい。「待っていても得点にならない」と強気の勝負に出た。今村の強襲打がバントと決めつけて前進してきた一塁手の右を抜ける。二塁手の好捕で安打にはならなかったが、一死二、三塁と好機が広がった。

 9番・藤田はスクイズ。「スクイズだから手堅いとか、消極的とは考えていない」(小田監督)。強攻策で浮足立った相手野手の動揺を突く強気の攻めで1点を返す。野選となって打者走者も残った。「スクイズの後で初球を打てば相手は余計に動揺する」と1番・今岡 歩夢、2番・上川床が初球を強打し、計4点で主導権を奪い返した。

 強打とバント、巧みに使い分ける攻撃は7回も功を奏す。無死一、二塁で今度は送りバントが悪送球を誘って7点目。これで打線が一気につながり、計6点を挙げて勝機を大きく手繰り寄せた。

 今年のチームは「力がなくて弱いが、言われたことを忠実に実行しようとする素直さがある」(小田監督)。大切なのはその弱さに向き合い、努力して実力をつけることだ。

 今岡は8月末の南薩大会決勝の鹿児島城西戦で「自分のエラーがきっかけで大敗した」と振り返る。「カッとなって周りが見えなくなる」短所を自覚し、今大会は「前のチームから出させてもらっている自分が積極的に声を出して笑顔でチームを引っ張る」ことを意識し続けた。決勝では4安打4打点と打線をけん引し、守備では8回2点を返された直後「必死で守った」と一、二塁間の難しいバウンドのゴロを処理してアウトをとった。

 2季連続Vで九州大会に出場するが「実力的には出場16チーム中16番目のチーム」(小田監督)。だからこそ、今大会できたことよりも「できなかったこと、まだまだやれること」に謙虚に目を向けて、実力を磨き、九州の猛者に挑む。

(取材=政 純一郎)