弱さと向き合え!・神村学園神村・上川床

<第151回九州地区高校野球大会鹿児島県予選:神村学園5−1国分中央>◇8日◇準決勝◇平和リース

 神村学園は3回裏、2死から好機を作り、2番・木下 夢稀(1年)の右前適時打で先制した。

 5回には1死一、三塁から1番・今岡 歩夢(2年)の左前適時打、2番・木下の犠飛、3番・正林 輝大(1年)の中越え二塁打で3点を追加した。

 国分中央は6回表、2死から好機を作り、5番・柳田 悠太(2年)の中越え二塁打で1点を返す。

 なおも二、三塁と畳みかける好機だったが、神村学園は先発の左腕・上川床 勇希(1年)から右腕・松永 優斗(2年)にスイッチ。遊ゴロでピンチを切り抜けた。

 7回裏には2番・木下の中越え二塁打でダメ押し点を挙げた神村学園が接戦をものにした。

 2季連続の九州大会出場を勝ち取った神村学園だが、3回戦・鹿児島玉龍戦、準々決勝・れいめい戦が1点差の辛勝だったように、この試合も反省点の多い内容だった。

 得点は挙げても畳みかけてコールドにできない。得点した後に失点して試合を苦しくする。

 「弱さに向き合え!」

 そんな選手たちに小田 大介監督はそんな言葉を日頃投げかけているという。力がないその弱さをまずは認める。そして努力する。そうすることが本当の「実力」を身に着ける唯一の方法ではないかと。

 2回戦の沖永良部戦から4試合連続でリリーフのマウンドを託されている松永の背番号は18。春の九州を制した3年生のチームからマウンド経験を積み、今年のNHK旗ではエース番号を背負った右腕だが、夏場から調子が上がらず、背番号1を託される信頼を得ていなかった。

 今大会は投手陣の台所事情も苦しい中で、小田監督は「お前でダメなら仕方がない」という苦しい場面で松永にリリーフを託すことで覚醒を促そうとした。

 鹿児島玉龍戦はうまくいかなかったが「それでも僕を使ってくれる」指揮官の信頼に応えようとする気持ちが松永を奮い立たせる。れいめい戦では1点差に追い上げられた無死一、二塁の場面を切り抜け、この日も1点を返された直後のピンチを絶ち、その後も国分中央の反撃を絶ち、勝利に貢献した。

 「新しい自分が表現できた」と松永。感情を表に出さず、淡々と投げるのが身上だと思っていたが、雄叫びを挙げたり、投げた後にガッツポーズをするなど、あえて闘志をむき出しにすることを意識してみた。

 それでいて8回表、先頭打者を出して当たっている3番・谷口 兼信(2年)を迎えた際には「外に投げていれば大きいのは打たれない」と丁寧な投球で併殺に打ち取り、9回最後の打者に130キロ超の直球をファウルで粘られたら最後はフォークで三振に打ち取るなど、冷静な投球の組み立ても怠らなかった。

 まだまだ道のりは険しいが「努力」を「実力」へと昇華させるための貴重な経験を積むことができた。

(取材=政 純一郎)