オムロン、現場改善のためのデータ活用基盤「i-DMP」を提供開始 データ活用簡素化で開発期間も短縮

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オムロン株式会社は、2022年8月18日、製造現場向けのデータ活用基盤「i-BELT Data Management Platform(i-DMP)」を開発したと発表した。オムロンが2017年から提供中の生産現場データ活用サービス「i-BELT」に組み込んで提供する。

「i-DMP」は様々な機器やシステムからデータを収集、整理して利用可能な形式に変換するデータ活用プラットフォーム。今まで現場改善に活用できていなかった多様なデータの統合管理を簡素化し、データを活用したソリューションの実装スピードを飛躍的に高めることで、課題解決を効率化し、コストを削減できる。既にオムロン京都太陽とオムロン太陽の工場に導入し、効果を実証しているという。



現場データ活用基盤「i-BELT Data Management Platform(i-DMP)」の概要
従来は都度開発していた各ソフトウェア群を、よりデータ活用を速やかに進めるための基盤として活用できるようパッケージ化した。2025年度までに「I-BELT」を含むソリューション事業全体で単年度500億円以上の売上を目指す。なお「I-BELT」の2022年3月現在での売上はハードウェア・ソフトウェア含めて120億円。作業者の最適配置や搬送ロボットの効率良い運用にも活用されている。

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●製造業はサービスを含む「コト」作りへ変革中



製造業のビジネスモデルは「モノ」から「モノ」+「サービス=「コト」へ
製造業が解決すべき課題はEV化、人材不足、環境対応など高度化・複雑化している。新型コロナ禍は本質課題を顕在化させた。グリーン投資や人権課題への取り組みなど社会要請も強い。これらがものづくり現場へのDXを後押ししており、多くの企業が「モノ」の差異だけでなく、「モノ」と「サービス」を組み合わせた価値をを提供する「コト」視点に切り替えてビジネスを進めようとしている。オムロンの現場データ活用サービス「i-BELT
」サービスもその一つだ。

「i-BELT」は現場診断を通して課題を見える化、分析して、制御へと進み、段階的に現場革新を進めるソリューションで、生産性向上、歩留まり向上、稼働ロスの提言、エネルギー効率の4つのサービスを提供している。



オムロン「i-BELT」の4つのサービス
これまでの取り組みで実際の製造現場では様々な通信規格の異なる機器が存在することからデータ収集が困難、また改善にはコストがかかり、改善の継続が困難といった課題があることがわかっている。

製造現場のデータを簡単に収集・蓄積し、現場革新をスピーディ&リーズナブルにし、革新の拡張と展開により製造現場と経営を進化させるために「i-BELT」サービス導入をよりスムースに進めることを目的としてオムロンが開発したのが「i-DMP(i-BELT Data Management Platform)」だ。従来個別に対応していたソフトウェア群をパッケージ化してプラットフォームとした。



診断、見える化、分析、制御と段階的に現場革新を支援

●小さく始めて拡張可能、様々な通信プロトコルや機器に対応する「i-DMP」



現場データ活用基盤「i-BELT Data Management Platform(i-DMP)」
「i-DMP」は多様な通信プロトコルのネットワーク(OPC-UA、Ethernet/IP、PROFINET、Edgecrossなど)やリージョナルデータベース(PostgreSQL、Oracle Database、Microsoft SQL Serverなど)、コードリーダ、産業用カメラ、パーティクルセンサ等を含む多様なFA機器と簡単に接続でき、既存システムや各社PLC情報など、現場に点在するデータをリアルタイムに収集・蓄積し、一元管理できる。

クラウドを使用せず、まずはスモールスタートで製造現場でのデータ活用を行なっていくことが可能だ。設定ゴールや進化シナリオに応じて、段階的に機能を拡張し、現場へ展開することができる点を特徴としている。



現場や経営層などそれぞれにおけるデータ活用の課題を段階的に解決するための基盤
オムロンが製造現場で培ったナレッジを組み込んだ50種類以上のマネジメントソフトや部品を活用。エッジ領域で収集したデータを現場課題に合わせて、製品単位/工程単位、標準工数/実績工数、人作業のバラつきなど様々な状態の変化を簡単に可視化できる。オムロンでは、目的に最適化したデータ活用の仕組みをスピーディに実現して潜在する課題を顕在化、そしてアクションへつなげられるとしている。

例えば、人作業が多い現場では、作業者の動線、動作や作業内容の分析など、原因・対策の具体化に向けてデータ分析による要因特定を行うことで、全体最適を見据えた改善サイクルの仕組み化ができる。エッジ領域の多様なデータを一元管理することで、製造現場で自動化すべき領域を特定、制御へのフィードバックも可能になるという。

●オムロン京都太陽では生産性を11%向上、開発期間は従来比1/8に短縮



オムロン京都太陽のラインでの活用例。センサー(下の図の赤点)とカメラでデータを収集、リアルタイムで見える化して停滞ポイントなどを見出す
オムロン京都太陽株式会社では障がい者雇用の現場特性に合わせたシステム導入を行っている。同社はここで「i-DMP」を使ってパフォーマンスを最大化させることに取り組んだ。取り組みの方向性は、作業者の「今この瞬間」を把握し、「いつもと違う」に素早く対応すること。取り組みには「i-DMP」の3つの特徴、1)システム構築の期間短縮、2)ミリ秒単位のリアルタイム状況の可視化、3)1ラインから始めて全フロアへの段階的拡張、が反映されている。

ライン上ではセンサーを使って作業者の動作を取得する。天井吊りカメラでは作業者情報や製品情報を把握する。サービス導入前はどこから改善に取り組むのかを経験を頼りに探していたが、品質状況や現場状況を見える化することで遅れやトラブルをリアルタイムに把握。設備の停止原因を分析、道具の置き場所を変えるなど改善サイクルを回すことで生産性を11%向上できたという。もちろん出来高推移もリアルタイム把握できる。

「i-DMP」はデータ収集や集計のためのソフトウェア部品群がパッケージ化されている。見える化画面では通常時と違う状況を把握し、動画で確認することで、そのときに何が起こっていたのか把握できる。向上具合を見える化して現場でも共有することで、作業者のモチベーションも上がるようになった。

改善は最初は1フロアから始め、その後、対象を順次拡大して3フロア分をまるごと可視化できるようになった。ソフトウェア部品群を活用することで、開発期間は従来比で1/8にまで短縮できた。

●改善ステップに合わせて対象データを拡張可能



様々なソフトウェア群が事前に準備されていて組み合わせることでシステム構築を短縮化
製造現場のデータ活用においては、データをいかに収集して活用できるかたちに加工できるかが重要だ。現場には様々な設備や外部システムがあり、これらのインターフェースはそれぞれ異なっている。また既存設備を入れ替えるのはコストがかかるし、生産そのものに影響を与える。「i-DMP」には事前に様々な機器に対応するデータ収集用ソフトウェア部品群が準備されており、システム構築期間を短縮できるという。

リアルタイムの可視化のためにはデータ遅延が小さいことが重要だ。「i-DMP」はミリ秒単位でデータを取得して、製造ラインの高速な製造スピードと同期できるデータ基盤を持つ。いったんデータベースに蓄積・格納するのではなく、取得データをすぐに表示する機能があり、すぐに現場に反映できるという。



取得データは即座に見える化可能
さらに改善状態を維持し進化させるためには、改善サイクルを回し続ける必要がある。また改善の段階に応じて、システムに求められるものも変化する。「i-DMP」はスモールスタートから始め、改善ステップに合わせて徐々に拡大できるという。オムロン京都太陽の場合はフロアごとに産業用PCを一台ずつ追加していったが、3つのシステムではなく1システムとして扱うことができる。

また、改善ステップに合わせて対象データを拡張していくことができる。「i-DMP」のデータベースは柔軟なデータ構造を持っており、最初からデータベースを定義しなくても、とりあえずデータを収集しておき、必要に応じて後から組み込むことができるようになっていて、継続的な現場改善に貢献できるという。



改善ステップに合わせて拡張可能
昨今重要性を増しつつあるエネルギー分野においても活用可能だという。「i-DMP」でエネルギーや生産性に関するデータを収集し、可視化。改善活動を行いながら、消費エネルギーを低減させる改善活動を行うことができる。オムロンでは「エッジ領域の現場DX基盤」として「i-BELTを今後も推進していく。



エネルギー分野でも活用可能