53歳・中村江里子さん「思春期の子ども」「高齢親」とのつき合い方
近しい仲だからこそ、家族とのコミュニケーションや、言葉のやり取りに難しさを感じる場面は多いもの。フランス人の夫と結婚し、パリに在住するフリーアナウンサーの中村江里子さんは、3人の子どもたちが大きくなり、以前ほど手がかからなくなってきた今だからこそ、ご自身のなかで「前にも増して大切にしている接し方がある」と言います。自身が憧れていた50代に本格的に突入し、「自分も周りのことも俯瞰して見られるようになった」という中村さんの生き方から、ESSE読者もヒントをもらえることは多いはずです。
中村江里子さんの家族とのコミュニケーションのコツ。50代は「心穏やか」に暮らす
「心穏やかに暮らすというのが、昔から大きなテーマなんです」とほほ笑む中村さん。それは東京に住んでいた頃も、結婚してからフランスに移住ののち、妊娠、出産を経験し、子育てをしている今も変わらないのだと言います。
「もともと感情の起伏がそこまで激しいわけではないし、人と競うのも得意ではないほう。でもね、そんな私でも、日々の中でフラストレーションがたまったり、イライラすることは、やっぱりあるんです(笑)」
●モットーは心穏やかに。できないときは「アナウンス」
そんなときこそ、あえてやっていることがあるという中村さん。
「シンプルですが、自分で自分に“穏やかに〜”、“穏やかに〜”と言い聞かせるようにしていますね。これは子どもたちが物心がつかない頃から、さらに習慣化するようになりました。それから自身を振り返り、イライラの原因は、単純に疲れている場合が多いのにも気づいて。感情の波に飲み込まれそうになったときは、『ママ、今すごく疲れてるの』『もしかしたら、なんでもないことでも“ピキっ”となっちゃうかもしれないよ(笑)』と。自分から彼らに、アナウンスするのも意識しています」
●言葉の選び方で子どもたちの反応も変わる
思春期まっさかりの長男を中心に、子どもたちといろいろな意思の疎通ができるようになっている時期だからこそ、「言葉を選ぶ」「声を荒げない」態度は貫きたいのだとか。
「相手が子どもでも大人でも、使わなくていい表現はあると思いますし、自分がどんな状況でも、家族に感情的になったり、乱暴な言葉を放っていい理由はないと思うんです。
わが家の場合は、私がやわらかい言い方で状況を伝え続けるうちに、彼らのほうでも『ママ、もしかしてカリカリしてる?』など、聞いてくるようになりました。そんなときは『うん。でもそれは、忙しかったから』という理由と同時に、必ず『あなたたちが原因じゃないのよ』と、返しています。原因が分からないまま親の心がささくれ立っていたら、子どもたちは“もしかして自分が悪いのでは?”“なにかしたのでは?”と、不安になります。繊細な年齢に差し掛かった子どもたちは、親がどんな言葉や態度を取るのかをよく見ていますから、不必要に彼らの心をかき乱したくありません」
●簡単に人を傷つけられる時代だからこそ、気をつけてほしいこと
また、普段から子どもたちに気をつけてほしいと伝えていることがあるそう。
「『人に対して荒々しかったり、攻撃的な表現は使わないで』と、教えています。『とくに、ケンカをしているときほど、口から放つ内容だけではなく、書く言葉にも気をつけなさい』とも。これは家族や身近な人間関係に限ったことではないですよね。今は、ネットやSNSの普及で簡単に人を傷つけられる時代になっていますから。
そんな中で心穏やかに生きていくためにも、表現の仕方、言い回しには気をつけて欲しいですし、親の私が実践して生活したいと心がけています」
●実家の母親とのやり取りは「ユーモアも交えて」
30代、40代は、子どもとコミュニケーションを取る一方で、年齢を重ねていく親とも向き合わなくてはいけない時期。さらに50代ともなると、親が老いていく姿を目の当たりにすることも。中村さんの場合、シニア世代に対しては、このような言い方を心がけているそう。
「正直、40代までは、母に対して『ママってば!』『もう〜!』などと、甘えの裏返しのような態度も取っていました(笑)。同性の母親だと、言動に遠慮がなくなりがちですよね…。でもある日、気づいたんです。頼りがいのあった母が、自分よりも小さくて弱い存在になっていることに。そこでもう、母を追いつめる自分からは卒業(笑)! とはいえ、彼女は気持ちも若いですし、まだまだ元気です。だからこそ、体力以上に動こうとする姿を見て、ハラハラするのも事実。そんなときは、彼女の言動を頭ごなしに否定せず、角度を変えて伝えています」
●少しの工夫でずっと穏やかでいられる
そんな中村さんの伝え方の工夫を教えてもらいました。
「『50代の私だって疲れてるんだよ〜。後期高齢者のママには、厳しいんじゃない?』『これまで十分やってきたんだから、もうがんばらなくていいのよ』など。こう言うと、『あなたも疲れることあるの?』『当たり前でしょ、私だって、もうかなりの大人なんだよ(笑)』『あら…。娘もそうなのね』『そうそう。お互い、無理はやめましょう』『わかったわ』と、なります。
パリと東京で離れていて、1年中同居しているわけではないからこそ、取れる態度なのかもしれないですが。でも自分の中で一呼吸置いてから伝えるように意識しただけで、前よりも、ずっと穏やかでいられるような気がしています」
満ち足りた日々を過ごすためにも、世代の違う家族との関係のつくり方を大切にしている中村さん。次回は、結婚20年以上になる夫とのパートナーシップから気づかされたこと、さらに現在の自身の体との向き合い方についてもご紹介します。
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