第2回「東宝シンデレラ」審査員特別賞を受賞し、以後、ドラマやCM、映画、バラエティーなど幅広く活躍されている水野真紀さん。本日公開の映画『今夜、世界からこの恋が消えても』では、ヒロイン・日野真織の母・敬子役で出演されています。

水野真紀さん『今夜、世界からこの恋が消えても』インタビュー

仕事に子育てに奮闘される水野さんに、映画“セカコイ”にまつわるお話や年齢を重ねてもきれいな秘密について教えてもらいました。

●自分にとって大切なものはなにかを考える作品

映画『今夜、世界からこの恋が消えても』(通称:セカコイ)は、道枝駿佑さん(なにわ男子)と福本莉子さんのW主演映画。眠りにつくと記憶を失ってしまう、実在する難病「前向性健忘」を患ったヒロインと、そんな彼女を献身的に支えるも、自らも大きな秘密を隠し持っている主人公の儚くも切ない愛の物語です。

水野さんは最初に台本を読んだときに「記憶と思い出の大切さを呼び起こされた」と語ります。そして、同時に自身が高校生の保護者ということもあって「不思議な気持ちになった」のだとか。

「前向性健忘は人によって症状が異なるそうで、事前資料に加えてネットなどでも情報を調べたりしたのですが、やっぱり、親として自分の子どもが前向性健忘を発症したと考えると、重いことしか想像できないですよね…。でも、いちばんつらいのは子ども。だからこそ、子どもが日々明るく楽しく心穏やかに生活できるようにサポートする、そういう母親であろうと思いました」

知識や大切な思い出も翌日には忘れてしまう…。だからこそ明日や未来のためにも「書いて記憶する」ことが必要になり、周りの協力も不可欠です。

「眠りにつくと忘れてしまうということで、なかなか未来が思い描けないけれど、家族、友達…みんなによって支えられて生きていく。そのなかで、切なくて悲しいこともありますが、見終わったときに、『大切なものはなんなのか』を今一度確認するという作品だなと感じました」

●心揺さぶられる空間に自分を連れて行くことも大切

主人公たちは高校生ですが、大人が見ても楽しめる作品になっています。水野さんが注目してほしいポイントとは?

「やっぱり記憶・思い出というものが人をつくるうえでどれだけ大事なものかこの映画を通して感じますよね。そして、それが奪われてしまった少女に対しての(道枝さん演じる)神谷君の献身・優しさも見どころ。多分人間って深い思いやりを無意識のうちに持っているかと思うので、その新たな形を思い起こされる作品になっていると思います。

一見主人公が遠い存在に見えても、『だれもが主人公の気持ちを自分事化できる』。それが映画とスクリーンがある映画館のなせる業。そういう気持ちにさせてくれる魔法が映画館にはあると思うので、ぜひこの作品で、感動できる映画館という空間に自分を連れて行って、心揺さぶられてほしいですね」

●年齢を重ねて変わっても、“最良”の自分でいたい

現在52歳になった水野さんですが、その美しさや女性らしいイメージは変わらないまま。そこで、水野さんに年齢を重ねるにつれて気をつけていることについて伺いました。

「意識としては、『がっかりさせちゃいけないな』という気持ちはあります。それは、“きれいなおねえさん”という形でいろいろ認知してもらって、そのときにみなさんに『すてきだね』『いいね』と思っていただいた自分がそこにあったわけですよね。

そこから大切に育ててもらった水野真紀というひとりの俳優が、52という年齢になって…それはもちろん私でもありますが、育ててもらったひとつの屋号(ブランド)でもあると思うので、私に関わってくださったスタッフや見てくださるみなさんをがっかりさせたくないという責任感はもってます」

そういった責任感もときには負担になってしまうこともあります。しかし、水野さんは「仕事をするのはそういうことでもある」と、語ります。

「独身時代と比べると、自分が決めた女優体重よりは若干増えてますが、それでもこれ以上は増えちゃダメって言う数値があって、それは守っています。人間は老いとともに変化していくしかない。それを『老化』といったり、たまに『劣化』というふうに言われたりもしますが…やっぱり変わっていくのは抗えないことです。でも、変わっていくなかでも最良の自分でなければいけないと私は思っています」

●お弁当は、自分や家族の将来を“つくる”

そして、年を重ねても「最良な自分」でいるために気をつけていることが日々の“食事”です。これは、『よいコンディションになるためには、どうすればいいのか?』ということを考えてたどり着いたもの。

「うまく消化されずに濁ったものが自分のなかに居続けるのってなんとなくイヤですよね。だから日々の体内の循環って大切だと思うんです。そのために食事にも気をつけていて、じつは20代の頃から現場に、自分で朝昼晩とたまに夜食分のお弁当をつくって持っていってました。

これはもちろん体のことを考えてもありますが、お弁当をもっていくことで、昼休憩の間に自分の時間がつくれたんですよね。人に会って気をつかうよりは、新聞やニュース見たほうが気楽だったので、自分を守るためでもありました」

毎日のお弁当づくりはやはり大変かと思いきや、水野さんは「お弁当づくりはそこまで苦ではないですね」と朗らかな笑顔でいい、その理由について教えてくれました。

「20代の頃に自分の弁当をつくっているとき『この食事が自分の5〜10年後をつくる』と思っていました。なので今、子どもが食べているものは、『1〜2年後の子どもをつくる』と考えています。将来のこの子をつくるんだなと思うと、栄養バランスはよくしようと思っています。

お弁当づくりで色は大切ですが、3色そろえばそれなりに見えます。たとえば、ブロッコリーは栄養バランスもよくて、そこにたまご(黄色)とトマト(赤)を入れればOK! トマトなしのときは、家に常備してるパプリカを焼いて入れたりしていますが、どれも大したことはしてないです(笑)」

調理師免許も取得している水野さん。その調理の過程を学んだことでわかったこともたくさんあります。

「私はグルメではないと思ってます。でも、お肉や野菜は国産のものにこだわって、素材の味を壊すようなことはしないですね。食べるべきものは食べるけど、そこまで手を加えてない。それは、いろいろ学んで調理の過程を見たからこそ分かったこと。そして、『家の料理』は状況によって、ごちそうをつくるよりも、家族のコンディションを整えるための食事であるべきなんだとそのときに悟ったんです」

●50代になって体感したこと

では、50歳を過ぎて気持ちの面で「変わったな」ということはあるのでしょうか?

「まだ30〜40代の方は気づいてないかもしれませんが、年をとると作業効率が下がったりして、じわじわとおっくうになってきます。ものをしまったところとか覚えてたはずなんだけど、それを忘れちゃって探すのに時間がかかるなんてこともあって(笑)。50代になった今、『これからは捨てていって、生活をシンプルにしないといけないな…』と思っていますね」

年齢による変化を感じている一方で、水野さんはこれからの人生もポジティブに考えています。

「50代になってどんどん面倒なことが増えてくるなと体感していますが、でもそれと向き合って、その年にならないと見えてこない風景や景色はあると思うので、これからどういうものが見えるのか年をとるのも楽しみです」

そう語る水野さんのステキな笑顔はとても印象的で、前向きな将来を過ごすためにも、今できることをやるということは大事なことなのだと改めて気づかされました。年齢を重ねてもきれいで居続ける水野さんから今後も目が離せません。

 

【『今夜、世界からこの恋が消えても』】

原作:一条岬『今夜、世界からこの恋が消えても』(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)

監督:三木孝浩、脚本:月川翔 松本花奈、主題歌:「左右盲」/ヨルシカ(UNIVERSAL J)、音楽:亀田誠治

<出演>

道枝駿佑(なにわ男子) 福本莉子

古川琴音/前田航基 西垣匠

松本穂香

野間口徹 野波麻帆 水野真紀/萩原聖人