「年金生活」という言葉に漠然とした不安を抱く人も多いのではないでしょうか。ここでは月5万円の年金で豊かに暮らす、70代のひとり暮らしブロガー・紫苑さんを取材。やりくりと生活の工夫を聞きました。

月5万円の年金で豊かに暮らすやりくりと生活の工夫

30代で離婚し、子ども2人を女手ひとつで育てた紫苑さん。「目の前の仕事をこなし、子もを育てるのに必死。生活に困らない程度の収入があったので、お金のことは無頓着でしたね」と語ります。

食費は米代込みで1万円。紫苑さんの1か月の支出リスト(表)

60代に入り、仕事が減って貯金をどんどんと崩すことになっても「不安になるだけだから、お金のことは考えないように」と先々のお金のことは見て見ぬふり。一戸建ての購入で貯金をほぼ使い果たし、国民年金だけでやりくりすることになり、いよいよ現実を直視。

試行錯誤を繰り返した結果、今では月5万円の収入でやりくりできています。

まずは紫苑さんがお金と真剣に向き合うまでのヒストリーを詳しく伺いました。

 

<50歳の頃>

仕事に恵まれてタワマン暮らし。稼いでは使う日々

フリーランスのライターとしてバリバリ働き、家賃月23万円の都内のタワーマンション暮らし。収入は多いが、出ていくお金も多い生活。

 

<55歳の頃>

“着道楽”で着物にお金をつぎ込む

51歳で乳がんに。無事に回復後、「オシャレは元気なうちに」と着物に目覚める。着物、帯、小物を次々に購入し、お金と向き合う気は一切なし。

 

<60歳の頃>

仕事と収入が減り、タワマンから公団住宅へ

会社員なら定年を迎える年齢。仕事が減り始めて、この先の収入に不安を感じるように。タワマンから家賃の安い公団住宅に引っ越す。

 

<65歳の頃>

年金受給スタート。築45年の中古一戸建てを買って住居費0円に

収入が減っていくなか、家賃を払い続けることが負担に。貯金をはたいて中古一戸建てを購入。家賃負担はなくなったが、貯金もほとんどなくなる。

 

<67歳の頃>

人生で初めて真剣にお金と向き合う

コロナ禍で外出機会が減ったのを機に、支出を減らせないか、考えるように。年金で生活する工夫を考え始める。

食の工夫/安くて栄養のある“完全自炊”で月1万円

食費は月1万円という紫苑さん。その金額でやりくりするための工夫とは?

●豆腐は塩漬けにしておいしく使いきる

近所の豆腐屋さんの木綿豆腐は1丁が大きめ。半量は塩漬けにして保存。両面に塩小さじ1/2ずつふり、ペーパータオルで包んで冷蔵庫に1日おくだけ。
「水分が抜けて大豆の味がギュッと濃縮。炒め物、煮物などに使います」

 

●100円のサバ缶でつくる「サバ飯」は料亭の味

米1合とサバ缶(水煮)を一緒に炊くだけのお手軽炊き込みご飯。サバは缶汁ごと入れるので水はその分加減を。「サバ缶だけでいい味が出ます。ものたりなければ、しょうゆ、みりんで味をととのえます」

 

●ミネラルウォーターは買わずに、水道水を沸かして飲用に

水道水を沸かした白さ湯ゆを水筒に入れて、こまめに水分補給。「冷たいものをとらないことで体が冷えなくなりました。水道水でもしっかり沸騰させれば、カルキ臭が気にならなくなります」。外出時にも持参してカフェ代を節約。

 

●100円の鶏ガラでスープをつくり、いろいろな料理に

100円の鶏ガラを長ネギの青い部分と一緒に2〜3時間煮てスープに。「市販の鶏ガラスープの素は買いません。うま味たっぷりで、クリームシチューやカレーなど使い勝手抜群」

 

●色分けした保存袋で余り野菜はムダなく冷凍ストック

緑の保存袋は緑の野菜、白の保存袋はそれ以外の野菜を冷凍ストック。「使いやすいサイズにカットして冷凍しているので、そのまますぐ使えます。彩りやみそ汁の具に便利です」

<緑の保存袋>

・長ネギ(青い部分)

2、3等分に切って冷凍。肉などを煮込むときの臭み取りに。

・ホウレンソウ

生のままざく切りにして冷凍。軽くレンチンしておひたしにも。

・パセリ

葉を細かく刻んで冷凍。使う分だけ料理にパラリとふって自然解凍。

<白の保存袋>

・ニンジン

食感が気にならないよう、薄めの短冊切りにして生のまま冷凍。

・ゴボウ

ささがきにし、酢、しょうゆで薄めに味つけして生のまま冷凍。汁物に。

・長ネギ(白い部分)

粗みじん切りにして冷凍。解凍せず、そのままチャーハンやみそ汁に。