ヒョウと向き合う子鹿(画像は『Latest Sightings 2019年12月3日公開 YouTube「Baby Buck Headbutts Leopard Persistently To Try Escape」』のサムネイル)

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南アフリカのクルーガー国立公園で2019年、ヒョウと子鹿という非常に珍しいペアが一緒にいる様子が捉えられた。当時の動画は今月に『Latest Sightings』で取り上げられて注目を浴びている。

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南アフリカを代表する野生動物保護区「クルーガー国立公園」の中にある「ロイヤル・マレワーネ(Royal Malewane)」は、ラグジュアリーなロッジと豊富なアクティビティで人気がある。

そんな施設で2019年、サファリツアーのガイドとして働いていたアンドレ・フーリエさん(Andre Fourie)はある日の午後、ロイヤル・マレワーネの理事兼ガイドであるジュアン・ピントーさん(Juan Pinto)から、「近くにヒョウの足跡があった。追っていくとオスのヒョウ“モンゾー(Mondzo)”を見つけた」という連絡を受け、早速ゲストを連れて現地に向かった。

アンドレさんは当時のことをこのように振り返る。

「一帯はかなりの量の雨が降ったばかりで、モンゾーは自分の縄張りを念入りにチェックしていました。ただとても動きが速く、私たちはモンゾーを見失ってしまったのです。そこでもう1人応援を呼んだところ、そのガイドがモンゾーを見つけ出してくれました。私たちが駆けつけると、ちょうどモンゾーは茂みに隠れていた子鹿の“ニアラ(nyala)”を追い立てているところでした。」

「本能というものでしょうね。ニアラはすぐに走り出しましたが、ヒョウから逃げ切ることなどできるはずがありません。モンゾーはそんなニアラをもてあそぶかのように、後をついて回ったのです。」

「一方のニアラは、自分が逃げきれないことを知ってか、しばらくするとくるりと振り向いてモンゾーに近づいて行きました。それはまるで付添人に安らぎを求めるかのようでもありましたが、長くは続きませんでした。」

「ニアラは相手が捕食者であることを悟ったのか突如、攻撃モードに入り、モンゾーに近づいて頭突きを始めたのです。モンゾーは夕食に備えて毛づくろいをしていましたが、ニアラの頭突きは何度も続きました。」

ちなみに当時の動画では、モンゾーと顔を突き合わせるように立つニアラが頭突きをすると、小さな体がヒョウのお腹の下にすっぽりと収まってしまうのが見て取れる。モンゾーは全く痛手を負っていないばかりか、かなりの余裕で構えており、アンドレさんは「ヒョウは相手を仕留めるという本能が消えてしまったかのようでした」と回想する。

こうして2頭の非常に珍しいやり取りを観察していたアンドレさんは約1時間後、ロッジに戻らなければならなかったそうで、「2頭はしばらくそうやって過ごすと歩き出し、ニアラはモンゾーの後をついていきました。別のレンジャーの話によると、ニアラと40分ほど一緒に過ごしたモンゾーはその後、ニアラをあっという間に平らげたそうです」と明かした。

なおアンドレさんと一緒にいたゲストは、サファリの経験が豊富な人たちばかりだったにもかかわらず「こんな光景を見たのは初めて。一生に一度あるかないかの出来事だ」と大興奮だったそうで、アンドレさんは最後はニアラが食べられてしまったことについて、改めてこんな感想を述べている。

「実はゲストの1人は、モンゾーが狩りへの興味を失った時点で『ニアラが逃げ切ってくれれば…』と願っていました。でも『自然や野生動物は、私たち人間が持つ感情を持ち合わせてはいない』ということは誰もが知っていること。もしあの時、奇跡が起きてニアラが生き延びたとしても、捕食者の匂いをつけたニアラは母親に拒絶されてしまったかもしれませんね。そう考えると、どちらにしてもニアラが生き残ることはなかったかもしれないのです。」

画像は『Latest Sightings 2019年12月3日公開 YouTube「Baby Buck Headbutts Leopard Persistently To Try Escape」』のサムネイル、『Latest Sightings 2022年7月13日付「Baby Buck Headbutts Leopard Persistently To Try Escape」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)