※この記事は2019年12月30日にBLOGOSで公開されたものです

今年もあとわずか。大晦日には恒例の紅白歌合戦があるけど、俺がわかる歌手も年々少なくなってきたよ。だから紅白は紅白で普通に放送してさ、裏番組でいいから今年なにかとお騒がせした政治家たちがこぞって出場する「永田町紅白歌合戦」があったら見てみたいな。

紅組キャプテンは共産党の田村智子議員

紅白で男女に分かれるとさ、あちこちで呉越同舟になってモメるから、ここはいつもどおり与野党で二組に分かれるほうがいいな。与党が白組、野党が紅組だ。白組キャプテンは安倍晋三さんだな。紅組キャプテンは誰だろう。今年の終盤に「桜を見る会」問題を投じて大きな波紋を巻き起こしたから共産党の田村智子さんでいいか。赤旗も大挙して応援に来るだろうから紅組が丁度いいよ。

まずオープニングだ。文部大臣の萩生田さんが出てきて選手宣誓だな、「皆さん、身の丈にあった歌をうたいましょう!」。すると全国の受験生がいっせいにブーイングだ。ひるまずに萩生田さん「大学の入試改革をヘンテコに進めていたのは私ではありません、前文部大臣の下村さんですから」なんて言って、横から下村さん出てきて萩生田さんと内輪モメになったりしてな。最初から波乱のオープニングだよ。

白組のトップバッターはやっぱり小泉進次郎さんかな。現閣僚の中ではいちばんスター性があるし、つい先日に週刊文春に叩かれたばかりだから旬でもある。トップにふさわしいね。

一人で歌うかと思いきや、滝川クリステルさんが出てきてデュエットだよ。進次郎さんは過去の不倫を蒸し返されてるから、ここで夫婦の絆を見せるという、カミさんの助け船だね。まあでも見映えのいい夫婦だよね。ルックス的にはヒデとロザンナみたい。歌は「愛は傷つきやすく」かな? 懐かしいね。わかるのは60代以上だろうな。歌い終わったところで小泉純一郎さんが出てきてひとこと言うよ、「進次郎はともかくクリステルさん! 痛みに耐えてよくがんばった、感動した!」ってね(笑)。

スター性のある人材がいない野党

これに対抗する紅組は誰だろう? 今の野党はスター性がある人材が少ないからな。進次郎夫婦に対抗するには、いきなりだけど外国からの助っ人でいいか。スウェーデンの少女グレタさんの登場だ。進次郎夫婦に向かって、「あなたたち夫婦のアツアツぶりは熱すぎて地球温暖化によくない!」っていきなり噛みつくよ(笑)。「あなたがたオトナたちは無責任に歌ってる場合じゃない。私はあなたたちを絶対に許さない!」って、歌わずに帰っちゃったりしてね。そのほうが彼女らしくていいんじゃないの。

白組の2番手は、三原じゅん子さんだな。歌う前に紅組を睨みつけて啖呵を切るよ。「民主党政権では開催できなかった永田町紅白歌合戦が実現したことに、あなたがた野党は安倍総理に感謝こそすれ、野次を飛ばして白組の邪魔をするなど、まったくの常識外れ、愚か者の所業とのそしりは免れません。恥を知りなさい! そして私の歌をしっかりと聴きなさい!」なんてね。

三原さんって歌手やってたから持ち歌があるよね。なんだっけ? 「セクシーナイト」っていうの? それを歌ってもらおう。で、歌い終わったところで小泉進次郎さんがひと言コメントを言うんだ、「セクシーな取り組みでしたね」。あははははは。

続く紅組は、女性には女性をぶつけようってことで、歌はともかく喋りで対抗できそうな社民党の福島みずほさん、立憲民主党の蓮舫さん、辻元清美さん、3人いっぺんに登場だな。女性3人だと何がいいかな。ま、にぎやかにAKBでいいか。「私たちAKBでーす! 安倍政権は、公文書隠して、ばっかりだー!」「安倍政権で、国民は、ビンボーだ!」ってAKBの意味が違う、AKBの頭文字にかけてウマいこと言う(笑)。「麻生さん、漢字、勉強しろ―」って大喜利だね。歌わずに座布団もらっておあとに交代だ。

続く白組は雰囲気変わって菅官房長官。演歌が似合いそうだよな。なんか切々と歌い上げる「雪国」とか「酒よ」とか、寂しそうな曲が良さそうだね。なんでもいいから歌ってもらおう。でもって、途中で歌詞が出てこなくなると黙っちゃうんだ。すると、すぐに官僚が歌詞をメモして横からサッと出すの。菅さんそれ見て、また歌い出す。そういう演出だ(笑)。

その姿を見てさ、菅さんが毛嫌いしている女性記者がいるだろ。東京新聞の望月さん? その望月さんが出てきて菅さんに対し、「それでは歌になってません、きちんと歌ってください」って詰め寄るの。だけど菅さんは「あなたに答える必要はありません」「すでに歌った通りです」ってひとこと言って袖にハケちゃう。

与党・野党・霞ヶ関…不倫でモメた人々

ピリピリしてきたから、ここで盛りあげタイムだ。紅白の垣根を越えたアトラクションがいいよな。来年は東京五輪だからね。かれこれ半世紀前だよ、1963年の紅白では三波春夫さんが出てきてフィナーレ―で東京五輪音頭を歌って盛りあげたんだよな。

それにちなんで、与党も野党も霞ヶ関の役人も、とにかく不倫でモメた人がズラ―ッと登場してさ、「東京不倫音頭」を歌う。「♪フリンしちゃった顔と顔 ソレ トトント トトント 顔と顔~」ってね。

最近も、首相補佐官の和泉さんって人が、ノーベル賞の山中伸弥教授に対して国からの補助金をカットするぞって上から目線で脅かしながら、そこに同行していた厚労省の女性幹部と、国民の税金である公費を使ってちゃっかりと京都を不倫旅行してたって話が出てたよね。その二人にセンターで歌ってもらおうか――、

「♪フリンしちゃった顔と顔 ソレ キョ京都 キョ京都 税金で~」ってね。

ここで小泉進次郎さんが再び出てきて後ろで踊るよ。もう開き直って踊るしかないよ(苦笑)。

石破茂氏の登場に自民議員は応援自粛?

そして後半突入、対戦再開。今度は紅組先攻で共産党の志位和夫さん。顔がムーミンに似てるってよく言われてるから歌は「ムーミン」。会場はますます和んじゃうね。

そのあとなら白組は石破茂さんだな。歌は「アンパンマン」。妙にほっぺたが赤いところが似てるって言われるよな。最近の石破さんはさ、「桜を見る会」で安倍さんが逃げ回って支持率落として、次期総理への期待値が石破さん逆転して高くなってるから、張り切って歌うと思うよ。

これに白組も協力して応援するかと思いきや、白組のほとんどがまだ安倍さんの顔色見ちゃって、石破さんが歌っているのを静観してたりしそうだな(苦笑)。

でまあ、色々あって紅白トリの登場だ。紅組は立憲民主党の枝野さんと国民民主党の玉木さん、しばらく袂を分かつようになってたけど、最近は野党共闘に向けて近づいてるみたいだからね。男ふたりでデュエットだな。歌はロスインディオス&シルビア「別れても好きな人」とかな(笑)。

安倍首相に歌ってほしい「さくらさくら」

白組のトリはもちろん安倍総理だよ。歌はそうだな・・・、今は桜がからむのがいちばん盛りあがるだろうね。童謡「さくらさくら」、軍歌「同期の桜」、演歌「夜桜お七」、森山直太朗さん「さくら(独唱)」もいい曲だよね。

まあどれか歌えばいいや。漢字が苦手で歌詞間違えるとまずいからいちばん簡単な童謡「さくらさくら」にしとくか?

で、安倍さんが歌い出すと客席にいる地元山口の後援会が大声援だよ。おそらくみんな前の晩にホテルニューオータニで安倍事務所主催の前夜祭やってるから頑張っちゃうよ。会費5千円でね。とにかく安倍さんの応援だ。

舞台上は桜の枝を持った連中がぞろぞろ出てきて、安倍さんの後ろで踊りだすよ。これがマルチ商法で問題のジャパンライフの元会長とか、世間で「反社」って呼ばれる連中とか、みんなで安倍さんを盛りあげる。よく見ると手に招待状持ってて番号が「60」って書いてある。

シュレッダーから「桜を見る会」名簿で紙吹雪

で、歌のラストには安倍さんの上に桜吹雪がパーっと大量に舞い散るよ。これがどんどんどんどん降ってくる。紙で出来た桜吹雪なんだけど、ずいぶんすごい量だなと思って見てると、舞台の天井に仕込まれていた機械が現れて、よく見ると内閣府のシュレッダーなの(笑)。そこで紙吹雪になってたのは「桜を見る会」の名簿だったことがわかる。

紅組の野党たちが飛び出してきて、紙吹雪かき集めてつなぎあわせて名簿を復元しようと頑張ったりしてね。

それも無理だからあきらめて、野党総出で安倍さんに詰め寄るんだけど、安倍さんはシュレッダーの担当が「障害者雇用の短時間勤務職員」だって説明して、なんだか障害者に責任を押しつけるような言い訳して歌が終わって引っ込んじゃう。

場内騒然としたまま、紅白どちらの勝利か審査に入るよ。そこに経済産業大臣だった菅原さんが現れて、審査員にそーっとカニやメロンを配り出すの。客席には法務大臣だった河井さんと妻の河井案里議員が出てきて、安倍さんの応援を仕切る応援団にお金渡してる。1日3万円だって。あはははは。別の場所では自民党の秋元議員が中国のカジノ業者からお金もらってて、なんだかワケわかんないよ。

そしていよいよ結果発表だけど、もうバカバカしいから結果はどうでもいいか(笑)。

(取材構成:松田健次)