※この記事は2019年09月17日にBLOGOSで公開されたものです

日韓関係がこじれてるね。困ったもんだよ。俺が韓国で思い出すのは30年程前に韓国に行った時のこと。現地の人が俺を案内してくれてソウルの南大門に行ったんだ。有名な場所だよ。そしたら案内の人が俺にこう言うんだ、「ここは日本に攻められてやられた所ですよ」。

俺は「え?」となったよ。何の話かと思ったら豊臣秀吉のことなんだ。秀吉が朝鮮半島に攻め込んだ「文禄の役・慶長の役」で400年前の話さ。それを持ち出されてもこっちは何も言いようがなかったよ。「いやあ、あの節は秀吉がご迷惑をおかけしまして・・・」なんて言えないだろ。言葉を濁すしかなかったよ。

でも、向こうはたとえ400年前のことでも言いたいんだろうな。あなたの国がそういうことをしたんですよって。歴史を語り継ぐことは確かに必要だけど、何も400年前のことは持ち出さなくていいよ。古い歴史はお互いに胸に秘めておけばいいと思う。わざわざ口にすれば気まずくなるよ。

外圧を受け続けた韓国の歴史と国民性

しかしこれ、考えてみると国として歩んできた歴史の違いなんだろうな。朝鮮半島って長い歴史を遡れば、地理的に中国大陸からしょっちゅう圧をかけられて、時に海を挟んだ日本からも攻められて、どうしても力と力がぶつかりあう場所にある。そういう場所だから今も現実として38度線が厳然としてある。そういう衝突の連続が国の歩みと切り離せないまま続いている。

一方で日本は歴史を振り返ると、鎌倉時代に元寇があって攻められたが結局は水際の攻防でかわした。幕末の黒船来航では列強国から脅されて不平等条約を押しつけられたが、領土そのものを攻め込まれたわけではない。

他国に領土を直接侵攻された記憶というと、太平洋戦争での沖縄戦、米軍の上陸となる。合わせて日本各地をB29で空爆されたことも含め、とても痛ましい記憶だ。それらの傷跡は今も米軍基地問題に揺れる沖縄に残ったままだ。

とはいえ長い歴史の中では、日本は四方を海に囲まれた島国として、他国と地続きの国境がないという地理的条件が働き、外圧の少ない国として歩んできた。

このように日本と韓国、同じ極東アジアだけれども、外圧を受けてきた歴史が違うから、そのぶん国民性も違うんだと思う。だから南大門で「ここは日本に攻められてやられた所ですよ」って言っちゃうのが、全員が全員ではないだろうけど韓国人の国民性にはあって、かつて被害者になった歴史を忘れないことを大きな拠り所にしてるんだと思う。そういう国民性は理解するよ。だけど秀吉の時代のことは時効だろ。それを掘り起こして言われるほうの気持ちも想像してほしいと思ったんだ。

互いに反感あおる日韓両国の政府とメディア

今起きている日韓のこじれ、始まりは元徴用工の問題だった。これは戦後、日韓の国交が正常化した際に両国間で既に解決済みとして話は付いていて、日本は賠償に相当する経済協力金を出している。だから今になってそれを蒸し返すのは話が違う。もはやその解決は韓国の内政問題。文在寅大統領が国内で解決する問題だ。

だから日本側もこの問題が起きた時にその一点に押しとどめておけば良かったんだ。ところが徴用工の問題とは別とか言って、韓国との貿易関係を見直したりしてさ。もっと先送りにできる話だったと思うけど、これで感情的なもつれにスイッチが入った。安倍さんは7月の参院選に合わせて韓国叩きに舵を切ったのも事実だ。

これって結局、文さんも安倍さんも自分の支持率の為に国家間の問題をあおってる。あおってあおってお互いの国民に不要な反感を炊きつけてる。まさに「外交のあおり運転」だよ。しかもそれをさらに焚きつける形でテレビも週刊誌も韓国がどうこうって連日やってるだろ。こっちは「メディアのあおり運転」だ。

高速であおり運転して捕まったあの男とやってることの本質は似たり寄ったり。揉め事を大きくするばかりで何の解決にもならない。同じあおりでも国家の問題は影響力が大きいだけにもっとタチが悪い。そろそろみんな頭冷やして足元見つめた方がいいよ。来月から消費税10%だからね。韓国問題でカッカと熱くなってるうちに日本の経済が冷え込みました・・・って、あまりにもバカバカしいよ。

「昨日の敵は今日の友」求められるリーダー像は徳川家康

今回さ、日韓のことでふと思ったのは囲碁と将棋のことなんだ。囲碁って中国や朝鮮が本場だろ。将棋は日本で発展して今のカタチになってるから日本が本場だよな。囲碁と将棋の違いって何だと思う? なに、囲碁は石で将棋は木? そういうことじゃないよ。ルールにおける違いだよ。

囲碁って石を打ったらその石はそこから動かないよな。陣地取りのために基本的にはその場所から動かない。相手の石を囲んだら自分のモノに出来るけどそれは戦で言えば捕虜みたいな扱いだ。

一方で将棋は駒が動く。そして相手の駒を取ったら自分のモノに出来て、対戦中にすぐ使うことができる。つまり敵を味方に出来るんだ。

そこで考えたのは為政者として国を率いるリーダーって、囲碁タイプと将棋タイプとに分かれるんじゃないかなってこと。囲碁タイプは基本的に白黒の敵味方で区別していかにして自分の勢力を固めていくかってことに集中している。将棋タイプは昨日の敵は今日の友としてファミリー化していくタイプ。

例えば織田信長は囲碁タイプ。比叡山焼き討ちだとか敵をとことん潰していく。そして最後は明智光秀によって殺される。秀吉もどっちかと言えば囲碁タイプだ。戦略戦術というアイデアで陣地を増やしていった。秀吉は病で死んだけど結局は後継ぎが殺されて豊臣家は早々に滅ぶ。

一方で徳川家康は将棋タイプだ。天下を収めて江戸幕府を開き、それまでの関係性で御三家、譜代大名、外様大名と分けながら、かつて自分の敵側にいた武将もファミリーに組み込んで人材活用している。そういう家康が結局は260年続く江戸時代の礎を築いたわけだ。

だからね、今の時代を見渡しても信長みたいなやり方、次々に敵を潰していこうというやり方は、長い目で見れば恨みを買うだけ。先が無いよ。家康が260年も続く江戸時代を築いたのはまぐれじゃない。きっと家康は若い頃から信長や秀吉のやり方を見てたんだ。同盟と裏切りが猫の目のように変わる戦国の世で、余計な敵を作ることは回り回って、我が身を滅ぼすことになるんだと。

家康は敵であろうと相手の能力を見た。それを利用すべきと思う人だった。かつての大敵だった武田信玄からつながる家臣も登用してさ、八王子の開発とかをさせたんだよな。八王子には武田信玄の娘・松姫が尼として余生を過ごした信松院ってお寺があるよ。歴史好きに人気のお寺でさ、俺も何度か行ってるよ。

家康は将棋的為政者。そして日本にはそういう再活用の精神があるんだと思う。敵は一族郎党皆殺しにしろ、子孫を根絶やしにしろっていうのも日本の歴史には長くあったわけだけど、それを大きく変えた分岐点が家康だ。

そうして見ると安倍さんと文在寅さん、今現在は囲碁的だよな。そういう為政者が支持率の為に隣国を叩く。そこには何の生産性もないし、むしろマイナス。衝突して怒ったりイライラしたりしてエネルギーを消耗して、結局損するのは両国民。その自滅を喜ぶのは中国ロシア北朝鮮・・・。アメリカもいざとなったらトランプさんだし、見返り求めて足元見る商売人だからね。

米国から兵器を買って韓国から怒りを買う安倍外交

そう言えば安倍さん、5月にトランプさんと会った時にまた兵器買うって約束してたよね? F35戦闘機を105機買ってかれこれ1兆2千億円? あと最近、中国が買わなくなったアメリカのトウモロコシも全部買うって話が出てたね、よく買うね。トランプさんから兵器とトウモロコシ買って、韓国からは怒りを買う。安倍さんあちこち買い過ぎ。買い物外交だね(苦笑)。

そんな買い物外交を見込んでひとつ言わせてもらうよ。安倍さん、新大久保あたりに出かけてさ、あの界隈って韓国の色んなグルメを売ってるだろ。なんだっけ? トッポギ、ハットグ、ホットク、アリランホットドッグ、チーズダッカルビ? 安倍さんあれを片っ端から買って、新内閣の皆さんと一緒に食べ歩いてごらんよ。そんな姿が発信されたら韓国側も少しは和むんじゃないの?

良かったら俺が案内するよ。あの辺りに元レスラーのキラーカーンの店があってさ、たまに飲みにいくんだ。あおり外交、あおりメディア、いつまでもそんなことやってるとみんなまとめて、モンゴリアンチョップだな、アハハハハ。

(取材構成:松田健次)