韓国での整形ってどんなの? 実際に挑戦してきた - 清水かれん
※この記事は2019年09月13日にBLOGOSで公開されたものです
「もう少し目が大きければ…」「鼻が高ければ良いのに」――漠然とそう思ったことはないだろうか。筆者(20代後半・女性)は、何度もある。
日本美容外科学会(JSAPS)の調査によると、2018年に日本国内で行われた美容外科手術の約9割が顔や頭部に関する手術だったという。この結果は、顔に関する手術が4割程度という世界の手術結果と大きく傾向が異なり、顔を整形したいと思っている日本人は私だけではないようだ。
そこで今回、韓国整形について取材するために韓国へ渡った筆者は、美を求める女性たちの心境に一歩でも近づけたらと思い、整形をすることにした。
異国で"手術"という緊張感
筆者が整形を行う場所として選んだ病院は、多くの美容整形外科が点在する江南区にある「ナム整形外科」。院長であるグァク・インス代表に「韓国で整形をする日本人について」のインタビューをしたこともあり、こちらで手術をすることにした。ナム整形外科は、整形外科と皮膚科が一緒になっている病院で、輪郭形成など、大きな手術をともなう美容整形の施術を得意としている。
しかし、整形の決意をしたが、いざ手術となると尻込みしてしまった。そこで、韓国の女性たちの多くが美容整形皮膚科でおこなっているという皮膚への「レーザー」を受けることにした。この治療は、肌にレーザーをあてて肌細胞を破壊することで肌は再生しようと働き、肌の代謝が良くなるため、レーザーをあてる前よりも肌が綺麗になるというものだ。
韓国には、「肌管理」という概念があり、レーザーや注射などを肌に施しスキンケアを行うため、肌がきれいな人が多いのだという。韓国の保健福祉部によると、訪韓する外国人患者にも皮膚科での治療は人気で、美容整形をする外国人約9万人のうち、皮膚科を訪れる人は13.7%になるという。
まず治療の前に、カウンセラーのイムさんに自分の悩みを伝え、治療内容のカウンセリングを行う。私は、日本人のあかねさんに通訳してもらいながら話を進めた。
お二人とも柔らかい雰囲気の女性で、緊張する私に治療の流れやリスクをわかりやすく教えてくれた。なので、カウンセリング面での心配はなかったが、通訳を介して病院側と話しているという状況から「私は異国で治療を受けるんだ」と、緊張した。
レーザーをあてるだけでも「もし火傷を負って取り返しのつかない肌になったらどうしよう。日本じゃないから、馴染みの病院へすぐに駆け込むこともできない」と不安がよぎった。
イムさんによると、レーザーは肌を破壊…人工的に火傷をさせるため、ゴムで肌を弾かれるような痛みが治療中続くという。カウンセリング後、その痛みを和らげるために、顔全面に麻酔クリームを塗ってもらった。
麻酔クリームを塗ったことで、歯医者で麻酔を打たれた時になる、「唇の感覚がない…」という麻酔状態が顔面に起こった。爪で肌を挿しても痛みがなく、不思議な感覚だった。
異様な雰囲気漂う治療室に腰が引ける
20分後、麻酔クリームを拭き取ってもらい、レーザーを打ってもらうために施術台の上に寝転がり天井を見上げると、緊張からか鼓動が速くなった。
整形に関する取材(https://blogos.com/article/384333/)で話を聞いた、韓国で整形手術を受けた日本人女性の華さん(18歳・仮名)も「施術台に乗ると、ああ、整形するんだ。と実感が湧きました。それまではなんだか他人ごとだったかもしれない」と話していた。確かに施術台の上に乗った瞬間、実感が湧いた。強い意志を持ち、「整形をする」と決めていても、実際に手術の段階に至るまではどこか他人ごとで、いざ手術、となると、頭が冷静になるのかもしれない。
天井を見つめること5分、いや、もっと短かったかもしれないが、私が寝転がる施術台の周りを看護士や通訳などが取り囲んでいる状態は居心地が悪く、先生が来るまでの時間がとても長く感じた。
皮膚科専門医のペク・サンフン院長が1発目のレーザーを打つまで、「痛みに強いので」と、自信満々の私だったが、実際に打たれると、外科的手術を伴わないレーザーでさえこんなに痛いのかと混乱した。麻酔で麻痺しているにもかかわらず、なぜ痛いのかと泣きたくなった。
レーザーはハンコを押すように何回も顔に機械を押し当てていくのだが、1発目から痛かったので、気を逸らすために家族の誕生月をひたすら足し算したり掛け算したりして、約5分間耐えた。
治療直後の私の肌には無数の横線が入り、赤くなり、毛穴が肥大したように見えた。「肌が綺麗にするどころか、良くないことをしたのでは」という不安に襲われていると、通訳のあかねさんが「よく頑張りましたね!!」と褒めてくれた。そこで気づいた。「私、頑張ったんだ」と。美しくなろうと、痛みに耐えたのだ。多くの女性が「美しくなろう」と痛みに耐えて美容整形を行っている。なんて偉いんだろう。
治療が終わると、術後のDT(ダウンタイム。治療のあとの腫れがひくまでの期間)だ。鏡で自分の肌を確認する時間もなく、術後の肌は火傷をしている状態なので保冷剤でガンガンと冷却を始めた。この肌を冷やしている時間が治療の中で一番長く、30分ほどかかっただろうか。この間に私は改めて思った。「整形している人たちはすごい!!」と。
外科手術を伴う場合、こんなレーザーの痛みどころではなく、血も出る。一瞬で腫れなど引かない。痛さ・寂しさ・不安、様々な気持ちが入り混じり、浮き沈みは激しくなるだろう。実際私は、治療後3日感はまるで顔がサンドペーパーのような肌触りで「今後どうやってこの肌と付き合っていけばいいんだ…」と軽く絶望することになる。
また、今まで自分が見てきたもの・触れてきたものが変化すると、「なんとも言えない」気持ちになる。私の場合、肌だけなので大げさだが、目や鼻、輪郭が変化すると、今まで見てきた自分の顔とは大きく異なるだろう。もちろん、変わることができるのが整形の良さだが、治療前の顔には、もう戻れないのだと実感する。
孤独で息がつまる…先の見えないDT
病院を出た後、夜は韓国で手術を行った日本人が多く滞在するというコンドミニアム型のホテル「オアシスホステル」に滞在した。コンロや電子レンジ、洗濯機がついているので、ちょっとした我が家のようなホテルだ。DT中は顔が腫れていたり、安静が必要だったりするので部屋の中に何日間か引きこもることができる、こういったホテルが好まれる。普通のホテルに比べて金額も安いので、長期間滞在する人たちのお財布にも優しい。
テレビをつけると韓国語の番組が流れていた。言葉はわからず、スマホはあったが退屈だった。そして、自分の顔の様子が猛烈に気になった。たまらず鏡を覗くと、術後よりも赤くなっているような気がして、不安に襲われた。大きな手術を行った人が、異国の地で、1人DTの期間をこういった空間で過ごすのは孤独でさぞかし心細いだろうなと感じた。
オーナーのボビーに話を聞くと、滞在客で一番多いのは日本人で、観光客と整形を目的とした滞在の割合は半々だという。 ボビーは韓国へ整形に来る日本人女性について、「美しくなりたいと整形手術をすることは個人の自由であり、批判はどうかと思います。日本と韓国の整形手術の違いはよくわからないが、個人が望んで選んでいるのだから、尊重したい」と話してくれた。
実際に韓国で治療を受けて思ったコト
さて、レーザー治療から1ヶ月ほどたった私の肌はどうなったのか。この記事を執筆している今、実は特段元の肌から変化はない。全体的に肌質は良くなったのかもしれないが、この箇所は荒れたことがなかったのに…と思う箇所もある。しかし、自分で調べ決断し、望んだ結果こういった肌になった。どうなろうと自己責任だと思っている。
整形を施す人たちは、自分の意志で整形を行っている。彼女・彼らも私と同様、自分の行ったことに責任を持っていると思う。そんな人たちの決死の決断を、何も知らない第三者が批判するのは間違いではないだろうか。
今回取材に協力いただいた通訳のあかねさんは、何週間か前に、自身が勤める本院で鼻の整形手術をしたのだという。「先生がきちんとした技術を持っていることを知っているので、安心して手術を受けることが出来ました。まだDT中なので完成ではないんですけどね」と少し照れ笑いで教えてくれた。
また、目もこちらの院ではないが二重手術をしたそうで、「日本の友達に会うと『目、やった?』と質問されちゃいます」と微笑んでいた。韓国では、整形をしている人が多いのであまり否定的な言葉をかけられることは少ないが、日本に行くとデリカシーに欠けることを言われることもあるのだという。私は彼女の整形前の顔を知らないが、「自分が良いと思える目・鼻になれましたよ」と満足そうで、そんな彼女の決断を批判する気持ちは一切わかなかった。
「親からもらった顔を変えるなんて」「顔を変えるなんて詐欺」「子どものことを考えて」。整形をしている人を責める人もまだまだ多く存在する。整形を批判することが許されても、整形をした人を責める権利は誰にもないのではないか。
日本よりも整形という分野において進んでいる韓国。整形に対する意見を韓国の友人や、レストランで仲良くなった店員さんなどに聞くと、「受け入れるも受け入れないも、個人の自由」という答えが返ってきた。日本でも、芸能人の整形公表や一般人のSNS上での整形公表などが話題に上がり、整形に対する意識も少しずつ変化してきている。今一度、整形について考えるときなのではないだろうか。