「屋根がない生活」に不安も…台風15号の被害が大きい館山市内の現状 - 島村優
※この記事は2019年09月12日にBLOGOSで公開されたものです
非常に強い勢力で各地に爪痕を残した台風15号。被害の大きかった千葉県南部では、現在も停電が続くなど日常生活に大きな影響を残している。
館山市内では、幹線道路にも灯火していない信号機が見られるほか、停電の影響で休業する小売店が目立った。その一方、店舗の外に商品を並べるなどして営業する店舗もあり、食料品や生活物資を求めて多くの地元住民が訪れていた。
市内のあるコンビニエンスストアは、自家用発電機でレジ周りにのみ給電し、時間を短縮して営業。冷蔵庫などは使用できず、店内は暗いままだが、水や飲み物を購入する人が目立った。
市街地では携帯電話の電波も安定しているが、中心部から外れた地域に入ると依然として繋がりにくい状況が続いている。地元住民からは「通信障害が起きていて、ほとんど電波が入らない。家の電話が繋がる前までは、外部との連絡が取れなかった」という声も聞かれた。
ブルーシートが足りず、作業できる人もいない
千葉県南部でもとりわけ被害が大きかったとされる地域のひとつ館山市布良。11日午後時点でまだ停電が続くこの集落では、強風で屋根が吹き飛ばされる被害が相次いでいる。業者に修理を頼もうとしても「皆が同じ建築業者に修理を依頼するような状況なので、修理がいつになるかわからない」(地域住民)という。
雨漏り対策の応急処置として、ブルーシートを張ろうにも「そもそもブルーシートがない」という問題がある。アクセスできる圏内にあるショッピングセンターでは品切れが続き、自治会館で配布されるものもすぐに予定枚数がなくなってしまうということだ。
また、ブルーシートが入手できても2階建ての家屋の屋根に自ら登ることのできる住民は多くない。屋根が飛ばされ、近隣の人と協力して屋根にシートを張ったという70代の女性は次のように話した。
職人さんもいつ来てくれるかわからず、この辺りは手伝ってくれるような若い人もいません。私は一人暮らしなので、雨水をしのぐために配給されたシートをとりあえず自分たちで張りました。でも、一時しのぎにしかなっていないので、今後天気が崩れた時が心配です。
屋根がこんな状態で家の中も水浸しなので、停電が終わってもブレーカーはあげられない。少しでも乾かないかと思って、窓と戸を開け放っています。
市にも協力を求めているものの、「しばらくはこのまま(屋根がないまま)です」と不安を明かしていた。
停電の悩みは「お風呂」
地域の中でも、家のある場所によって停電状況には差がある。一部の地域では電気が使えるが、港寄りの多くの家では未だに停電が続く。水道は使用できるが、電気給湯機の家が多いため「大変だったのはお風呂に入れなかったこと」という声も多く聞かれた。
「2日間は冷たい水でシャワーを浴びた」という人もいたが、自衛隊が入浴サービスを開始したことで、お風呂の問題の解決に安堵する住民も多いようだ。
ただ、こうしたサービスの情報が届かない、という不満も上がっている。行政や自衛隊の情報については設置された拡声スピーカーで放送されるが、内容がほとんど聞き取れない場所がある。
特に少しの移動にも苦労する高齢者に、必要な情報が届かない状況が起こりやすい。そのため見聞きした情報を積極的に伝え合うような住民の姿が見られた。
炊き出しの実施に喜びの声も
食事についての悩みも多い。近隣のスーパーでは品薄が続くため「カップ麺など、とりあえず食べられればいい食事が続いているので、温かくて美味しいものが食べたい」と話す高齢女性も。12日には布良にキッチンカーが入り、午後から夜にかけて炊き出しが行われることになった。
炊き出しを企画・実施したのはキッチンカーのポータルサイトを運営するKITCHEN CAR'S JAPANのメンバー。千葉市を拠点とするメンバーを中心に前日に企画を開始し、寄付を募り、現地の青年会と連絡を取り合い、12日には早くも実現にこぎつけた。
大変な状況だと聞いたので、何かできないかと思い昨日から動き始めました。ご飯も満足に食べられないと聞いたので、少しでも助けになればと思います。(KITCHEN CAR'S JAPAN・武田さん)
市の広報車が炊き出しの実施を伝えると、開始時刻前から住民が集まり始め、ある住民からは「温かいご飯が食べたかったのですごく嬉しい」という声も聞かれた。