【日韓関係悪化】日韓問題で「文化交流」を叫ぶもエンタメは由々しき事態に - 渡邉裕二

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※この記事は2019年08月15日にBLOGOSで公開されたものです

日韓の対立がエスカレートしている。

日本政府による半導体素材などの輸出管理強化を受けて、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「盗人猛猛しい」などと常軌を逸した対日批判を繰り返している。さらに報復措置として、韓国からの戦略物資の輸出に関連し、手続き簡略の優遇措置を受けられる対象国から日本を外す制度の改正案まで発表した。

国家の体をなしていない韓国

それにしても、一国のトップが感情的になって「ここまで言うか」であるが、一方で韓国のホワイト国除外を巡っては南北共闘を打ち出し、南北間の経済協力で平和経済が実現すれば「一気に日本の優位性に追いつくことができる」なんて言い放っていた。ところが、都合のいいところでダシに使われた北朝鮮側は冷ややかで、韓国政府当局者を「大アホ」呼ばわりした挙句、米国との合同軍事演習の名称から同盟の文字を外して連合指揮所訓練と変えたことにも「糞(くそ)をしても花の風呂敷で包めば悪臭が出ないとでもいうのか」なんて表現していた。要は、南も北も似たり寄ったりで表現の仕方が汚いのである。

私自身は、普段は比較的リベラルな考えをしていると思っているが、韓国に対しては、正直言って「国家としての体をなしていない」と思っている。だいたい、「三星(サムスン)」や「現代(ヒュンダイ)」、「韓進(ハンジン)」「ロッテ」など、たった10大財閥だけで韓国のGDP(国内総生産)の4分の3を占めていて、さらに学歴社会で、この財閥に就職できなければ「負け組」になってしまうのは、どう考えても国家として歪んでいる。

もっとも、韓国の経済発展の基盤となった10大財閥を育てたのが、1965年に締結した「日韓基本条約」とベトナム戦争特需だった。この時、日本は韓国政府に戦後補償として当時のレートで1800億円を捻出した。つまり日本の経済支援が10大財閥を生んだとも言えるわけだが、その一方で韓国というのは近代国家としての考えが成熟していないため、10大財閥のトップは自分たち企業が社会の公器なんて考えもなく、伝統的に家業として認識しているのが現状で世襲経営が当たり前となっている。

日本で続く「韓流ブーム」文化交流は可能か

前置きが長くなってしまったが、今回の日韓が対立する中にあって、日本側からは「文化交流だけは続けよう」との声が高まっている。しかし、日本各地での交流イベントでは、韓国の自治体側から中止・延期を申し入れてきており、もはや聞く耳なんてものは持たないのが現状だ。

ここ最近の傾向を見ると、韓国は安倍政権を批判しているようにも思えるが、実は来春の大統領選を前に日韓関係を政治利用したいだけで、文在寅も振り上げた拳を下ろせないのだろう。頼りの? 北朝鮮にもコケにされた中で、もはや唯一、支持を得られるのは対日カード。とにかく日本に対して強い姿勢を打ち出すことで国民から支持を得たいだけだ。反日を叫ぶことでしか支持率を上げられないのである。

何だかんだ言っても結局は、経済や生活のことよりも反日姿勢さえ見せていれば人気がアップする都合のいい国民性であることは間違いない。安倍晋三総理は「国と国との関係の根本にかかわる約束を、きちんと守ってほしい」なんて述べていたが、いくらそんなメッセージを送っても、かの国には馬の耳に念仏なのである。

しかし、日韓の関係で、今の日本にとって考えなくてはならないのは芸能(エンターテインメント)を中心とした、いわゆる文化交流だろう。今の日本は〝韓流ブーム〟なるものが続いているのである。

韓国においては歴史的な背景もあって、長い間日本語による大衆文化は認められなかった。その流れが変わったのは金大中政権になってからで、98年の秋に、金大統領が訪日した際に「日本文化開放」の方針を打ち出したことだった。

もちろん、開放の背景には02年の日韓共催W杯があったが、理由はともあれ、98年に「第一次文化開放」として映画やビデオなど映像関係からの開放がスタートし、翌99年には「第二次文化開放」として2000人以下のホールでの公演においての〝日本語での歌唱〟が許可された。

その第1号アーティストになったのは当時、人気ロックバンドだったHOUND DOG。11月20日にソウル市内のチョンドン・アートセンターで行われたロックコンサートに友情出演し日本語で初めて歌った。

「会場はわずか600人のキャパ。〝開放〟と言っても現実には、まだ見えない壁があったことは事実です」と事務所関係者は振り返るが、一方で「初めてナマで観る日本のロックバンドに総立ちの盛り上がりとなった。ただ、やはり雰囲気として日本の音楽に警戒感のようなものはあったと思う」。

その後、「第三次文化開放」によって、条件付きながらもアニメの劇場公開やテレビ番組の放映も認められるようになっていったが、「音楽やアニメなど日本の文化を開放することによって韓国のマーケットに何らかの影響をきたすのではないかと危惧する声が強かったことは確かですね」(韓国事情に詳しい芸能記者)。

この開放によって、韓国で開催される音楽フェスティバルにも日本人アーティストが多数出演するようになり、2000年には単独での〝公式公演〟としてCHAGE and ASKAの公演が行われ、さらに安室奈美恵もステージを繰り広げている。だが、日本語による公演は全面開放されたものの、CDやDVDなどのパッケージ・ソフトに関しては開放されずに規制が続き、公式的に発売が許可されたのは01年に日韓W杯を記念して企画された公式コンピレーション・アルバムだった(日韓同時発売)。

ちなみに、ゲームも含め全てが開放(第4次文化開放)されたのは04年になってからだった。

日本では制限なく日常に溶け込む韓国エンターテインメント

このように、日本と韓国では、芸能や文化に対して認識に大きなズレがある。しかし、日本においては、韓国の映画やドラマに限らず、アーティストも制限なく自由に行き来している。これは、ある意味で「器が違う」のかもしれない。が、日本においてはぺ・ヨンジュンの主演した韓国ドラマ「冬のソナタ」が社会的現象となったし、それを機に、多くの韓国俳優や音楽アーティストがムーブメントを巻き起こし、いつの間にか音楽では「K―POP」と言うジャンルまで生まれた。しかも、中学生や高校生の多くが韓国アーティストのダンスに触発されダンスを始めるキッカケにもなっている(中学校以上は授業にも組み込まれるようになったが)。このように、今や日本では韓国発のエンターテインメントが日常に溶け込んでいるといっても過言ではない。

ところが韓国では反日感情や文化的影響への懸念、さらには国内産業を保護する観点もあるのだろう。日本の大衆文化が流入することに今でも警戒感を抱いているし、目に見えないところで規制している部分もある。99年に公開された中山美穂主演の日本映画「Love Letter」(岩井俊二監督)が大ヒットし、中山美穂の「お元気ですか?」のセリフは流行語となったというが、その後、この作品を超えるようなヒット作は見当たらない。これは音楽も同じ。日本発で韓国を席巻した作品は、文化解放後にどれだけあったか?

日韓で「文化交流」を深めようと言いつつ、日本のアーティストが韓国で公演を行うのは〝用心〟が必要なことは誰でも分かっている。これまでも「契約通りいかない」「騙された」「利益を持ち逃げされた」なんて言葉は日常茶飯事で聞いてきた。さらに「韓国とのビジネスで失敗して倒産した」なんて声もよく耳にした。要するに日本人は人がよく騙されやすいのだ。これは一事が万事だろう。

その一方で韓国人はしたたかである。徴兵制もあるし日本人のように「平和ボケしていない」のかもしれない。だからだろうか、何があってもイニシアティブを握ろうとする。日韓台を中心に活躍する人気女性アイドルグループで紅白歌合戦にも出場した「TWICE(トゥワイス)」や日韓女性アイドルグループでAKB48グループの宮脇咲良(21)らも加わる「IZ*ONE(アイズワン)」にしても、所属事務所は韓国の芸能プロダクションである。

つまり、文化という分野においては、ウィンウィンどころか、もはや日本のエンターテインメント市場は完全に韓国によって侵略し尽くされてしまっていると言ってもいい。

韓国人を一言で表現するとしたら「ズルい国民性」だろう。人のいい日本人はアジアの中でも絶好のカモかもしれない。

韓国で活動する日本人アイドルに「退出」求める声

「韓国では反日感情の加熱で、例えばTWICEの日本人メンバーやIZ*ONEの宮脇に対しても〝退出〟を要求する声が出ています。中でもTWICEのMINA(22)は、ネット上の悪質な書き込みなどもあって『極度の心理ストレスと不安』との理由でワールドツアーへの参加を辞退しています」(芸能関係者)。

韓国の一部では日本製品の不買運動が起こっているが、韓国の芸能界で活躍する日本人にも「出て行け!」という声が上がり出している。

日韓の問題は、この際だからウヤムヤにせず白黒つけた方がお互いのためだと思う。日本は経済では韓国を上回っていることは確かだが、いざ文化交流などソフトの部分では残念だがやられまくっている。この部分は日本の弱点と言っていい。

韓国は日本文化に対して警戒感を抱いているようだが、現実は…である。だいたい、このタイミングで韓国の人気ポップグループ、BTS(防弾少年団)が無期限の長期休暇を取ることになったのも不可思議だ。おそらく日本での活動を続けるために韓国内での反発を避けた措置なのかもしれない。ある意味、それほど韓国アーティストにとって日本の市場は魅力的なのである。彼らにとって一番のネックは韓国での反日感情なのだろう。

冷静に考えたら、こういった現状はどうにかならないものかと思う。安倍総理も芸能界が大好きなはず。この際、国を挙げて日本のエンターテインメントをバックアップする施策を打ち出し、少なくとも韓国からの〝侵略〟に対抗すべきだろう。