「原爆は悲劇でしかない」長崎平和祈念式典に参列したアメリカ人の思い - BLOGOS編集部

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※この記事は2019年08月09日にBLOGOSで公開されたものです

8月9日、長崎原爆犠牲者を偲ぶ平和祈念式典が74年前と同じような晴れた空の下で執り行われた。

BLOGOS編集部

式典には安倍晋三首相を始め、核保有国である米露英仏中など66ヵ国の代表が参列。原爆投下時刻の午前11時2分には「長崎の鐘」が鳴らされ、平和を祈る1分間の黙とうが捧げられた。

朝早くから多くの人々が平和祈念像の前で手を合わせ、平和の泉に千羽鶴を手向ける中、そこには日本人だけではなく外国人参列者の姿も見受けられた。




「核兵器の無い世界へのリーダーシップは日本が取るべきだ」

「原爆は悲劇でしかない」。そう述べたのはアメリカ人のKevin Lukacsさん(26)と、Steven Fletchenさん(39)。2人は、戦争や原爆を学ぶプログラムに参加しているという。6日に行われた広島の平和記念式典と原爆ドームにも訪れたそうだ。

(右) Kevin Lukacsさん (左) Steven Fletcherさん

「たくさんの女性や子ども達が犠牲となったこの残酷な悲劇を、2度と引き起こしてはいけない。平和祈念像に込められた戦争を繰り返さないという誓いは本当に素晴らしいと思う」とStevenさん。

トランプ大統領が日米同盟の撤廃をほのめかしていることについて、Kevinさんは「多くのアメリカ人は日本と友好的な同盟を保ってほしいと思っているが、トランプ大統領はそうは思っていないのかもしれない。第二次世界大戦後、アメリカと日本は敵対視するのを止めて良好なフレンドシップを形成してきたし、それが2国間の関係で最も重要だと信じている。なので、それが壊れていくのを見るのはとても悲しい」と答えた。

また、同盟関係が崩壊すると日本が核武装を始める危険性があることについては、「近年、自衛隊の行動が憲法9条を違反しているという指摘もある。本来の同盟で定められた自衛隊のミッションが少しずつ変わってきていることを感じる。核兵器の無い世界をつくるためにはリーダーが必要で、そのリーダーシップは日本が取るべきだ」と語ってくれた。

一刻も早く核兵器禁止条約に署名を

式典の中で、長崎市長・田上富久氏はアメリカ、ロシアを始めとする核保有国に核兵器撤廃を訴え、日本政府には被爆者の救済を求めた。

共同通信社

「核保有国のリーダーの皆さん。核不拡散条約(NPT)は、来年、成立からちょうど50年を迎えます。核兵器をなくすことを約束し、その義務を負ったこの条約の意味を、すべての核保有国はもう一度思い出すべきです。とくにアメリカとロシアには、核超大国の責任として、核兵器を大幅に削減する具体的道筋を、世界に示すことを求めます。

日本政府に訴えます。日本は今、核兵器禁止条約に背を向けています。唯一の戦争被爆国の責任として、一刻も早く核兵器禁止条約に署名、批准してください。そのためにも、朝鮮半島非核化の動きを捉え、『核の傘』ではなく、『非核の傘』となる北東アジア非核兵器地帯の検討を始めてください。そして何よりも『戦争をしない』という決意を込めた日本国憲法の平和の理念の堅持と、それを世界に広げるリーダーシップを発揮することを求めます」。

共同通信社

その後、安倍首相は来賓あいさつの中で

「明年は、核兵器不拡散条約発効50周年という節目の年を迎え、5年に一度のNPT運用検討会議が開催されます。この会議において、意義ある成果を生み出すために、昨年11月にここ長崎で開催された核軍縮に関する『賢人会議』の提言等を十分踏まえながら、各国に積極的に働きかけていく決意です」。

と述べたものの、昨年同様、核兵器禁止条約に関しては言及しなかった。

被爆者の数は1980年度末の37万2264人をピークに減少が続き、19年3月末現在では14万5844人にまで減少。平均年齢はすでに82歳を超えている。

原爆や戦争被害を語り継いでいける人が減りゆく中、日本は唯一の被爆国として核兵器禁止条約や憲法第9条とどう向き合っていくべきなのだろうか。


核保有国のアメリカなど「核の傘」に入っている日本の今後の決断に、世界中の注目が集まることとなりそうだ。【中田凌子】