※この記事は2019年07月30日にBLOGOSで公開されたものです

いやあ、参院選も終わったけどさ、俺は投票日が間近になって急に泣いて訴えるヤツが出てきたから、ずいぶんと必死な候補者だなあと思ったら吉本興業の芸人さんだったよ(苦笑)。やむにやまれぬお家の事情らしいけど、あれで投票直前のテレビは吉本一色。せめてもう2日待ってさ、投票日過ぎてから記者会見でも何でもやってくれたらと思うね。

反社会的勢力との関わりがどうこうって話だけど、あれって見方によったらさ、吉本興業自体が国民から参院選の興味を削ぐ「反社会的勢力」だって話になりかねないよ。まあ、芸人と事務所の関係とかその話はまたいずれさせてもらうよ。

投票率48.40% 残念だった参院選

それにしても参院選、投票率が低くて残念だったな。48.80%か。前回2016年の参院選が54.70%だろ。まあ、どっちも紅白歌合戦よりは高いけどな。こっちは国政選挙だからな。もっともっと高くなってほしいな。

なに、都道府県別の投票率も出てるの? 一番高かったのが山形県で60.74%か。すごいね。山形は胸張っていいよ。東北は他の県も投票率が高いのか。岩手県が56.55%、秋田県が56.29%。なるほど東北は米どころだけに、「いっぴょう(一俵)」を大切にするでしょう、なんてな(笑)。

逆に投票率が最も低かったのはどこ? 徳島県で38.59%か。ああ、これはあれだろ、比例代表の特定枠って仕組みが出来たところだ。自民党が一票の格差是正をするのに選挙区をこねくり回して「鳥取・島根」「徳島・高知」を合区にしたんだよな。そこで選挙区からハミ出しちゃう自民党議員を救う為に、比例で優先的に当選させちゃうって、なんだか妙な仕組みだ。

それで徳島からの自民候補が特定枠に入って、投票前からほぼ自動当選だから県民も選挙やる気なくなって投票率下がったって話だな。しかし今回の参院選、47都道府県で46都道府県が前回よりも投票率落としたっていうのは寂しいな。ちなみに参院選の投票率って、過去のベストとワーストってどうなってるの?

< 参議院議員選挙 投票率 >

最高 1980年(第12回) 75.54%  ※衆参同日選挙

最低 1995年(第17回) 44.52%

ほう、最高は衆参ダブルでの75.54%か。これぐらいの投票率がコンスタントに出たらいいよな。そこで、その為にどうするかってことだよ。ちょっと俺も投票率アップ策を考えてみたんだ。

投票率をアップさせる3つの秘策

1.テレビ報道よ奮い立て

2.夏にやるな

3.参議院を廃止しろ

この3つの策があるんだけど、ひとつずつ話していこうか。まず「1.テレビ報道よ奮い立て」。これは深刻な話だぞ。安倍さんが政権とってからさ、「報道番組が偏向している、政治的公平性を欠く」なんて圧がテレビ局にかかるようになったんだ。何年か前にあっただろ、TBSの「NEWS23」に安倍さんが出た時、アベノミクスを批判する街の声がVTRで流されて、安倍さんが怒っちゃったやつ。どうして批判的な声ばかり流すんだ、そうでない声もあるだろって。あれいつだっけ? 2014年の11月か。

その直後だよ、在京キー局あてに自民党が抗議の文書を回したんだよな。報道は公平公正にしろって。その流れで当時総務相だった自民党の高市早苗さんが国会で、ちょこちょこテレビ局に圧をかける発言をするようになってさ、で、一番問題になった発言がなんだっけ? 「テレビ局が政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、電波停止を命じることができる」(2016年2月)。

そうそう、詰まる話が政権を批判してばかりいると免許取り上げて局ごとつぶすぞって、国を挙げてのパワハラだ。これにテレビ局はビビっちゃったんだ。それからだよ、局を代表する報道番組の顔がどんどん画面から消えちゃったんだ。

◎2016年1月 「クローズアップ現代」(NHK) 国谷裕子氏 降板

◎2016年3月 「NEWS23」(TBS) 岸井成格氏 レギュラーコメンテーターから不定期出演に変更

◎2016年3月 「報道ステーション」(テレビ朝日) 古舘伊知郎氏 降板

みんな政権に物申す人達だよ。こんなに立て続けにクビが変わるって只事じゃないよな。この時期を境に、テレビの報道番組は妙に政権の顔色を伺ってさ、やり過ぎないようにようになっちゃったんじゃないかな。だから選挙になっても腫れ物に触るというか、触らぬ報道に祟り無しって感じで、なんだか毒にも薬にもならない触れ方でさ、ニュース番組はどこもおとなしいの(苦笑)。

各党を同じ時間配分で紹介することが政治的公平なのか

選挙前の政治的公平性って、ただ単に、各党の紹介を同じ時間配分で見せることじゃないだろ。それは政見放送で充分なんだから。今、この国で何が起きているのか、何が問題なのか、どんな候補者が何を考えているのか、国民ができるだけ多くの情報を知るためにテレビはあるべきだよ。

テレビってアイデアマンがたくさんいるよ。映像を見せるプロや才能が集まってるんだよ。そこで色んな演出、色んな見せ方で、政治への関心を高められるメディアなんだよ。

それがさ、今のニュース番組を見てると「参院選の特集です」ってやるんだけど、特集というほどの特集でもないし、そのあとのスポーツニュースのほうが放送時間が長くて、VTRも手間暇かけて編集されてたりしてね。その労力を選挙報道に注ぎ込んでくれって話だよ。

結局、すべての投票が終わって開票特番になってから各局が堰切ったように放送してね。しかも、当確の情報ばかり。当確の結果でテレビ各局が1分1秒を競いあったってしょうがないよ。開票特番よりも競いあってほしいのはその前の段階だよ。もっと選挙に関心が起こるような番組を流そうよ。

当たり障りのある中立公平を

テレビの報道姿勢がこういう尻込んだ状況に陥ってることに、苦言を呈する人も出てきてるんだろ? デーブ・スペクターさん、夏目三久さん・・・。みんな「テレビってこのままでいいの?」っていう警鐘だな。

しかも、番組の合間には安倍さんが「日本の明日を切り拓く」っていう自民党のCMばかり流れてる。あれなんなの? テレビの報道は政治的公平中立でないとダメだけど、CMは金があるならいくら流してもOKって・・・、うーん、センキョは金って昔から言うけど、そういうのも含めて今のテレビって何だか切ないな。

テレビが政権の顔色ばかり見て、最も大事な視聴者である国民を見ない。そんなことしてたら視聴者はますますテレビ離れを加速、テレビは自分で自分の首を絞めてるんじゃないの? どうか取り返しがつかなくなる前に、当たり障りのない中立公平を一歩進めて、当たり障りのある中立公平を目指してほしいよ。

与党からも野党からもどっちからも文句言われるぐらい、テレビマンがプライドを持って、「そこまでやるか!」っていう選挙への関心を高める報道を国民に見せてほしい。選挙期間のテレビ、もっともっと奮い立ってほしいね。

参院選を雨の多い夏にやるな

投票率アップ策、2番目は選挙を「夏にやるな」。参院選って基本的に6月か7月に実施されるんだよ。だけどその時期って、大雨や台風の影響が出やすいんだ。今年は九州地方に台風と大雨の被害が出て、如実に九州各県で投票率が下がっちゃったんだよな。福岡、佐賀、長崎、鹿児島で10ポイント以上低下か? そりゃそうだよ。可哀想だよ。自然災害に見舞われたら生活の余裕が消えちゃうんだから。投票に行きたくても行けなくなっちゃうし、行こうか迷ってた人はやめちゃうんだよ。

天候の影響を極力排除する。となれば、3月は年度末で4月は新年度であれこれとバタつくから、5月がベターだろ。ゴールデンウイーク明けてから公示して、新緑の季節に天候の影響を避けて、投票に行きやすくする。そういうことだよ。

参議院を廃止しろ

投票率アップ策、3番目は「参議院を廃止しろ」。おいおい、参議院無くしたら参議院選挙そのものが無くなっちゃうじゃないか、って話だけど、まあ聞いてくれ。参議院ってさ今のカタチだったらもういらないと思うんだ。存在意義としては衆議院を通過した法案をチェックする重要な機能を担っているって言うけどさ、基本的には衆院通過の法案は引っくり返らないし、もし、参院が否決しても結局与党一強だと、もう一度衆議院に回されて成立するわけだもんな。

最も重要な国家予算の先議権は衆議院にあるし、閣僚はほとんど衆議院から選ばれて、実際に国を動かす力は衆議院が背負っている。今みたいに衆参で与野党の比率がたいして変わらず、与党一強で二大政党の時代でもないとなると、参議院って独自性が無いし、たいした意味ないだろ。

参議院は「衆議院のカーボンコピー」なんて揶揄されてるし、「参議院って何のためにあるの?」って訊かれて即答できる人は少ないと思う。

参議院不要論って前々からあるよ。だけど活発にならないのは議員センセイ方が大量に職を失う死活問題になるからだろ? だけど、現在ある参議院の248議席をすべて無くして、運営しなくてよくなったら国家予算の大きな節約になるよ。

参議院をなくせば議会開催のコストも下がる

参議院を無くして、衆参二院制から衆院のみの一院制にした場合、メリット・デメリットがどうなるか整理してみようか。

< 一院制のメリット >

◎二院によるねじれ現象が起きない
◎立法の審議と可決が迅速化する
◎議会開催のコストが下がる

< 一院制のデメリット >

◎一院のみだと与党独走になる
◎審議の慎重さを欠いた議案が増える

明治時代になって日本で議会政治が始まって、参議院はもともと貴族院と言われ、ある一定の身分の人しかなれなかった。そこには政党政治に片寄らない為という理念があったんだ。かなり端折って言えば、目の前の現実に向きあうのが衆議院で、国家の理念や未来像を見つめるのが貴族院ということだ。

まあ、実際にそういう機能が働いたときもあれば、機能しない時もあったみたいだけど、参議院の理想像である「良識の府」という機能を、今この令和の時代に取り戻せるなら、参議院議員は政党所属の政治家じゃないほうがいい。

財界、学者、作家、文化芸能、スポーツ、福祉・・・、様々な分野で信頼を置かれている立場の人々が集って、与野党の党利からは別の立場で意見を述べて、国民に「あ、そういう見方があるか、なるほど」っていう気づきを与える、そういう場になったらと思うね。

せめて参議院議員の報酬を経費だけに

参議院を無くす、参議院を貴族院時代のような理念ある場に変える、そのどちらも非現実的なら、せめて現行の参議院議員にかかる報酬を経費だけにして実質無償にしてほしい。そうして議員みずから国民に対し、無駄の見直しを率先して見せてほしいよ。

だって、小泉内閣以来、正規雇用を削って非正規雇用を増やす「痛みを伴う改革」が国の方針だろ。だからね、参議院議員も事実上、非正規雇用ってことにして、「身を切る改革」を見せてくれたらなって思うよ。

おっとそうそう、投票率アップの為に「参議院を廃止しろ」って話だけど、そうしたら国政選挙が衆院選のみになるだろ。そうなると選挙への関心が一点集中になって、否が応でも高まる。一票の重みが確実に増す。そうなれば、投票率が上がるだろうって話だ。

なにしろ、投票率が上がらなければ世の中は変わらない。そして組織票が幅を効かせているうちは世の中は変わらないんだから。

でね、合わせて選挙期間をもっと伸ばしたらいい。そこで出来た時間で、党首討論や、選挙区ごとの候補者同士の直接討論をきちんと実施する。テレビの報道もそれを伝える。テレビが本来持ってる力を活かして、選挙シーズンに有権者が興味をそそられるようになれば、投票率75%なんてすぐそこだよ。

(取材構成:松田健次)