消費税2%アップで負担は25%増 安倍首相は野田氏との約束も改ざんか - 毒蝮三太夫
※この記事は2019年07月19日にBLOGOSで公開されたものです
今月、ニュースで聞いたけど、税収が過去最高だって? なになに、2018年度の税収が「60.4兆円」で、バブル期の1990年度の税収「60.1兆円」を超えて過去最高を記録したってことか。ふうん。それだけ聞くと「日本の経済は好調なんだね~」って印象になるよ。税収過去最高だなんて耳ざわりがいいもんな。税収60兆円の内訳が変わった
でも、それって額面どおりじゃないだろ、どうせウラがあんだろ。どういうことになってんだ? ええと、国債の発行額が全然違うってか。国債ってのはぶっちゃければ借金だ。それを見てみると1990年度の国債発行額が6.3兆円、2018年度が約34兆円。なんだよ、莫大な借金しながら「税収過去最高」って宣言か。都合のいいとこだけ堂々と発表するな財務省は(苦笑)。こんなの賭場だったら、胴元が身銭きってタネ銭をわざわざ若い衆に配ってさ、そいつら集めてツボ振ってテラ銭巻き上げてるような話だぜ。なに、わかりにくい? アハハハハ、わかんなかったら身近なジジイに聞いてみてくれ(笑)。
それからなに、この1990年度と2018年度、税収の内訳に注目だって? 両方とも税収は約60兆円でほぼ同じだけど――、
ふむふむ、見てみると1990年度からの約30年で、所得税と法人税が合わせて12.2兆円下がってる。その一方で、消費税が13兆円増えてる・・・。ほほう、つまり所得税と法人税が減った分、そっくり消費税が上がったって話か。
ちなみに1990年度の所得税は最高税率70%で、2018年度が45%。法人税は1990年度が37.5%で、2018年度が23.2%か。どっちもずいぶん下がってるね。まあ、バブル崩壊後に平成不況も長びいて、経済政策の一環で税率を軽減したってことだな。経済立て直しってことで与党が舵取った減税策はわからないでもないよ。それに対して野党は「金持ち優遇」「大企業優遇」って批難してるっていう構図だな。
しかし、そのシワ寄せが消費税にすげ変わったってことになると、ちょっと問題だな。小泉純一郎さんと竹中平蔵さんが「痛みをともなう改革」なんて言ってさ、その結果「痛み」を受けたのは消費税の負担を受けやすいとされる普通の庶民ってことか? 結局、デフレやら不景気やらの「痛み」は高所得者よりも、中所得者や低所得者に片寄ったってことか?
税収の内訳を比較する限りそう見えちゃうよな。(上記の内訳で)消費税の名称をためしに「痛み税」にしてみたら、この30年が何だったのかをズバッと表しちゃいそうだな。
しかしさ、昔から財政の原則って「入るを量りて出ずるを制す」と言うよ。健全な財政ってのは収入に合わせて支出を抑える、収入以上の支出をしないという至極単純なことだよ。それが今や、国債という将来への借金が毎年30~40兆円となるのが当たり前になっちゃった。「出ずりっ放し」だ(苦笑)。しかも「入る」のほうも所得税・法人税・消費税のバランスがいびつに見える。今の日本って「入るは乱れて出ずりっ放し」だよ、困ったね・・・。
消費税が「1.25倍」になるという現実
そんな状況で10月から消費税増税だろ。いやあ、消費税アップはでかいぞ。令和になって最初の国民的ハードルだ。それゆえ消費税は参院選の大きな争点になってるよ。与党の自民・公明は増税ゴー派。野党は見直し、減税、廃止含めて増税ストップ派だ。先に言えば、俺は消費税ってのはどうも好きになれないね。まあ、消費税が好きな人なんていないだろうけどさ。あのね、消費税って1989年に導入されたろ。それ以来、3%、5%、8%って、細かく上げてるだろ。あの上げ方がイヤらしいんだよ。まるで国民をでっかい電気イスに乗せてさ、政府閣や財務省が電流を流すツマミを回してさ、「3%は大丈夫そうだな」「5%はちょっとビリビリきてるようだな」「8%は痛そうな顔だけどまだ耐えてるぞ」「よし、このまま少しずつ上げて、どこまで耐えられるかやってみるか・・・次の目盛りは10%だ」なんてさ、国民がどれぐらいまでビリビリに耐えられるのか実験してるみたいだもん。
それに、増税する時の言い方がイヤらしいよ。「8%から10%です、2%アップします」って。そう聞くとさ、「ああ、2%アップか」って、ちょっと小さめに感じないか? ジュースに果汁2%って書いてあったら「少ねえな」って思うじゃない。数字の真意みたいなのがすぐには伝わってこないと思うんだ。
あのね、8%から10%になるってことは、現在の負担が1.25倍になるってことだろ。増加する割合を正確に表現したら25%アップなんだよ。ほら、プロ野球選手だって年俸が1億円から1.5億円にアップしたら1.5倍で50%アップって言うだろ。どうだい、25%アップって聞いたら大きいだろ。
だからさ、消費税増税に関して「2%アップ」って言い方は詐欺に近いよ。「2%だけ上げさせてください」なんて、耳ざわりのいい、もっともらしい言い方してる奴は腹の中でペロッと舌出してるよ。これ、誠実に説明するなら「消費税を8%から10%に引き上げます。2%のアップですが、割合で言えば1.25倍です。これまで払っていた消費税が1.25倍、25%のアップになります」って言わないと。もしそう言ってる政治家がいたら正直者だよ。一票入れちゃうよ。
なに? 消費税増税で政府も認めている金額があって、消費税10%になると国民1人当たり年間2万7千円の負担増になる? リアルだな。そうすると、「消費税を8%から10%に引き上げます。そうなるとこれまでより国民1人当たり、年に2万7千円余計に払って頂きます」ってことだ。そんなふうに言われたら、「高えぞコノヤロウ」って言っちゃうよ。「2万7千円あったら家族で焼肉食えるじゃねえか!」って。「叙々苑なら二人分だ!」とかな。
議員数を減らす約束はどこへ行った
そもそもさ、消費税を5%から8~10%に上げる法案が通った年の国会って、みんな覚えてるかな。2012年だよ。民主党の野田総理が自民党と公明党と3党合意してね、すったもんだあって法案が可決したんだよな。でさ、ムーミンみたいな顔した民主党の野田さんは自分が総理大臣でいる内に議員数を減らす公約を実現したかったんだ。一方、当時野党だった自民の安倍さんは衆議院解散で選挙に持ち込んで形勢逆転したかった。そこで解散するしないで二人がバチバチやりあってさ、議員数減らす法案があったろ? 議員みずから「身を切る改革」って言ってさ。そうそう、「衆議院議員定数削減案(小選挙区0増5減、比例区定数40減)」だ。それを二人が同意したのと引き換えに衆院解散になったんだよ。
で、そこから第二次安倍政権が誕生するわけだけど、あれから7年、安倍さんが政権取ってからの議員の数ってどうなってるかわかる? なになに、衆議院定数「0増5減」は実現。そのあと衆議院定数「10削減」を実現。でもって参議院定数「6増」を実現。ゾウ? あら、増えちゃったよ。おいおい、7年前に約束した「40減」って話はどこいっちゃったんだ。今の処とくに動きなし? 衆議院の定数10削減したのも「一票の格差是正」の範疇だから「身を切る改革」としてはカウントしづらいって?
なんだよ、安倍さんは野田さんとの約束も改ざんしちゃったの? これを突っついたら安倍さん、「国民の皆さん、悪夢のような民主党との約束はまさしく悪夢です。私は実行いたしません!」なんて言うのかな? もしそうなら、消費税増税のほうも実行しなくていいんだけどな。
(取材構成:松田健次)