作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの音楽番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00〜19:55)。4月24日(日)の放送は「村上RADIO公開収録 和田誠レコード・コレクションより@The Haruki Murakami Library」をお届けしました。

番組ではこれまで、ライブイベント「村上JAM」などをおこなってきましたが、ラジオ番組の公開収録は、今回が初の試みとなります。昨年10月に開館した早稲田大学国際文学館(通称・村上春樹ライブラリー)に作られたスタジオで、村上さん自身がレコードに針を落とし、音楽を語る貴重なイベント。

今回の公開収録のテーマは「和田誠レコード・コレクションより」。2019年に亡くなったイラストレーター和田誠さんは、村上さんと親交が深く、多くの村上作品の装丁やイラストを手がけました。

今回は、和田さんが遺した膨大なレコードのなかから村上さんが厳選し、早稲田大学に寄贈されるレコード・コレクションを、貴重なエピソードや解説とともに紹介しました。この記事では、その中から前半3曲についてお話された概要を紹介します。

画像提供:早稲田大学



◆Mary Martin, Children「Do-Re-Mi」
まず「サウンド・オブ・ミュージック」から、メアリー・マーティンと子どもたちが歌う「ドレミの歌」です。しかし、この番組でまさか「ドレミの歌」がかかるとは思わなかったですね。でもかけちゃいます。

僕はこれまで映画のサウンドトラック盤でしかこの曲を聴いたがことなかったんですけど、今回初めてオリジナル・キャスト盤で聴いたら、すごく出来が良くて、聴き惚れてしまいました。もちろん映画のジュリー・アンドリュースの歌もいいんだけど、オリジナル・キャスト版、ブロードウェイの舞台で、耳の肥えた観客を前に毎晩毎晩歌い上げたメンバーだけあって、さすがに気合いが入っていて聴き応えがあります。映画のバージョンとはちょっと違って面白かったですね。

◆John Reardon「Lucky To Be Me」
レナード・バーンスタインの作曲したミュージカルというと、「ウエスト・サイド・ストーリー」が圧倒的に有名ですが、1944年に作られたこの「オン・ザ・タウン」もブロードウェイで大ヒットしました。462回の公演を記録しています。24時間の休暇をもらって、ニューヨークに上陸した3人の水兵が、それぞれに巡り会った女性と恋に落ちてしまう話です。話自体は大したものじゃないんですが、音楽はとても素敵です。

1949年に映画になりまして、そのときのタイトルは「踊る大紐育(大ニューヨーク)」、ジーン・ケリーとフランク・シナトラが2人で主演していました。ただ映画版ではダンスが中心の演出で、音楽がかなり差し替えられていて、音楽的にはブロードウェイ版の方が充実しています。
そのオリジナル・キャスト盤で聴いてください。“Lucky To Be Me(ラッキー・トゥー・ビー・ミー)”。以前は誰か他の人間になりたいと思ったものだ、でも今、僕は僕であって、ラッキーだったと思う、だってこうして君にめぐり会えたんだものね……。歌うのは、ジョン・リアドンです。この素晴らしい曲、映画ではなぜか削られていました。レナード・バーンスタインはとてもすぐれた指揮者だったけど、メロディメーカーとしても素敵な人だったんですね。

◆Gertrude Lawrence「Getting To Know You」
ミュージカル「王様と私」は1951年に、ロジャース&ハマースタインのコンビによってつくられました。「サウンド・オブ・ミュージック」と同じ作詞作曲チームですね、最近では渡辺謙さんがシャム王の役をやって、ブロードウェイで再上演されて、注目を浴びました。
1956年に映画化されて、ユル・ブリンナーとデボラ・カーの主演で大ヒットしたんですが、この映画、タイでは上映禁止になっていたということです。
ちなみに「サウンド・オブ・ミュージック」も、映画は長い間オーストリアでは上映されなかったみたいですね。「王様と私」のオリジナルの舞台には、ユル・ブリンナーとガートルード・ローレンスが出ていました。ユル・ブリンナーは意外っていうか、歌がけっこううまいんです。この人は歌のレコードも1枚出しています。

このミュージカル「王様と私」には「Shall We Dance?」とか「Hello, Young Lovers」とかいろいろ素敵な曲が入っていますが、今日は僕の好きな「Getting to Know You」、だんだんあなたのことがわかってくる……を聴いてください。オリジナル・キャスト盤、ガートルード・ローレンスが歌います。

<収録中のつぶやき>
僕と和田さんは13歳くらい年が違う。ちょうど10年ぐらいジェネレーションがずれているんです。和田さんの青春時代はアメリカのミュージカルがすごく盛んだった。僕の青春時代である60年代にはミュージカルが落ち目だったんです。だから、そのへんの教養体験みたいなものは、ワン・ディケイド違うんですね。
でも、こういうのを聴いているとなんかほのぼのとした気持ちになります。ジミ・ヘンドリックスとはずいぶん違いますよね。

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聴取期限:2022年5月2日(月)AM 4:59 まで

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<番組概要>
番組名:村上RADIO 公開収録〜和田誠レコード・コレクションより@The Haruki Murakami Library〜
放送日時:4月24日(日)19:00〜19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/