この道一筋に力を尽くしてきた人に贈られる春の叙勲が29日に発表され栃木県関係は54人が受章しました。

政治や企業経営などで功績をあげた人をたたえる旭日章が15人、公共の仕事に長年携わり成果を残した人に贈られる瑞宝章を39人が受章しました。

那須烏山市金井の路地裏にたたずむまちの中華屋さん、富士食堂。年季が入ったのれんをくぐれば中華鍋を振る小気味よいハーモニーが聞こえてきます。旭日双光章を受章した店主の佐藤邦行さん(76)です。

佐藤さんは繁盛するようにと店名の由来となった富士山の開山日に合わせて1969年7月1日に店をオープンさせました。21歳の時に結婚した妻の悦子さんと夫婦二人三脚で切り盛りし、2015年から6年間は県内の中華料理店でつくる団体の理事長を務めあげました。

店は今年、開業から54年目を迎え、この間、多くの常連に愛されてきました。自然と人が集まり、そこにはいつも笑顔。息子の寿正さんが跡を継ぎ、数々の定番メニューと創業から変わらないギョーザの味を守っています。

店には午前10時を過ぎたころから出前の電話が鳴り始め、昼近くになると次々と客が訪れます。息子に調理を任せられるようになった今、佐藤さんが厨房に立つ機会は減った一方で、出前の配達で店の外で客と会うことが増えました。隣りまちから注文があることも珍しくありません。

元々は屋台から始めた店が老舗、名店という言葉が似合うようになってきました。「ごちそうさん、また来るね」このために続けていると佐藤さんは笑います。