改正少年法施行18、19歳「特定少年」 実名報道が可能に 更生か処罰か…課題は
特集です。今年4月1日から民法の改正で成人年齢が18歳に引き下げられたことはお伝えしていますが同じ日に改正少年法も施行されました。「成人」となった18歳と19歳を新たに「特定少年」と位置づけ、引き続き保護の対象とする一方で、より大人に近づける特例の規定が適用されます。例えば、犯した罪によっては成人と同じように刑事裁判を受け起訴された際には実名報道が可能となるなどの変更点があり、詳しく見ていきます。
1949年に施行された少年法は少年の立ち直りを重視し心身が成長途中で変化の可能性があることを前提に刑罰よりも更生教育を重視しています。すべての少年事件をまずは家庭裁判所に送致し犯罪の背景や生育環境などを調査した上で更生への道を考えるこの手続きはこれまでと変わりません。ただし、成人と同じ裁判を受けるべきとされ、家庭裁判所から検察官に送り返される、いわゆる「逆送」の対象が拡大されました。
これまでは殺人や傷害致死など故意に人の命を奪うなどの重大な事件が対象でした。今回の改正で強盗や放火など法で定められた刑の下限が1年以上の罪も対象となり起訴された場合にはこれまでの非公開の少年審判ではなく成人と同じ公開の裁判が開かれます。
選挙権年齢や民法の成年年齢の引下げで責任ある立場となる「特定少年」が重大な犯罪を起こした場合、17歳以下の少年よりも広く刑事責任を負うべきということです。処罰か更生か立場によって見方は分かれます。今年3月まで被害者支援センターとちぎの事務局長を務め多くの犯罪被害者に寄り添ってきた和氣みち子さんは次のように話します。
和氣みち子さん:「被害者にとっては被告の年齢は関係ない。少年法に守られて悔しい思いをした被害者もいる」
一方で栃木県弁護士会の子どもの権利委員会委員長・稲葉幸嗣弁護士は更生の道に影響があるのではと危惧します。
稲葉幸嗣弁護士:「刑務所は刑罰としての作業本人の考え方を変えるには限界がある」
少年法では立ち直りの妨げになるとして氏名や写真など本人と推定できる報道を禁止していますが、特定少年については起訴された場合は実名報道が可能となりました。山梨県甲府市で去年10月に夫婦が殺害され自宅が全焼した事件で殺人の罪などで起訴された19歳の少年について甲府地検が実名を公表しました。検察が特定少年の氏名を公表した初めてのケースで多くの報道機関が少年の氏名を報じました。全国で発刊している新聞で、匿名で報じたのは東京新聞だけです。
一方で顔写真の扱いやインターネット配信の対応は分かれました。有料のサイトだけに氏名を公開した社もあります。このうち毎日新聞は「更生を重視する少年法の理念を踏まえ、ネット上で不特定多数が実名を見られる状態にすることは望ましくない」としています。将来の就労機会を奪う結果を招きかねませんし、そうなると立ち直りの阻害なってしまいます。
栃木県警察本部によりますと県内の少年による去年1年間の刑法犯の検挙件数は204人で、10年前と比較して少子化の影響などもあっておよそ1000人減っています。(2011年は1299人)
更生が重視される「少年法」のもとでは性格や家庭環境などが考慮され、本人の状況にあったやり方で更生を目指します。しかし、罪の重さを基準に処分が決められる場合には少年を取り巻く環境が考慮されず、更生につながらないおそれも懸念されています。改正少年法には施行から5年後に社会情勢や国民意識の変化を踏まえて18歳と19歳への措置を改めて検討する規定が設けられています。少年の立ち直りと被害者などの思い、バランスの保たれた運用が課題となります。