(写真:時事通信)

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社会人向け講座で取締役が不適切な発言をしていたとして、牛丼チェーン・吉野家が批判を浴びている。

ことの発端は、4月16日に早稲田大学で開催された社会人向け講座「デジタル時代のマーケティング総合講座」。そこで、講師として招かれた吉野家常務取締企画本部長(当時)の伊東正明氏が、同社の女性向けマーケティング施策を「生娘シャブ漬け戦略」と表現。これがSNS上で拡散し、伊東氏に批判が殺到する事態に。

吉野家は4月19日、伊東氏の解任を公式サイトで発表。その理由について、こう記している。

《同氏は人権・ジェンダー問題の観点から到底許容することの出来ない職務上著しく不適 任な言動があったため、2022年4月18日付で同氏を当社執行役員および株式会社吉野家取 締役から解任しました》

問題発言からわずか3日で解任された伊東氏。吉野家は前日18日にも、「当社役員の不適切発言についてのお詫び」と題する謝罪文を発表。文面には次のように記され、会社としてコンプライアンス教育を徹底することを誓っていた。

《当該役員が講座内で用いた言葉・表現の選択は極めて不適切であり、人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません》

《当人も、発言内容および皆様にご迷惑とご不快な思いをさせたことに深く反省し、主催者側へは講座開催翌日に書面にて反省の意と謝罪をお伝えし、改めて対面にて謝罪予定です》

《本件を受け、 社内規定に則って当人への処分を含め厳正に対応を進めてまいります。また、当社は今後一層コンプライアンス遵守の徹底に取り組むべく、コンプライアンス教育の見直しを図り、すべてのステークホルダーの皆様に対し、高い倫理観に基づく行動をお約束します》

■「広報の方で作成しております」

ところが、この謝罪文も波紋を呼んでいたのだ。

謝罪文はPDF形式で公表されたが、ファイル内容を示すドキュメントプロパティには作成者名として「Ito Masaaki」との表記が。その後、文書は同日15時半頃に更新され、作成者名の表記は削除された。

このことは瞬く間にTwitter上で拡散され、「謝罪文を作成したのは伊東氏本人なのか?」といった声が相次いだ。

《これを問題の当の本人が本当に書いたんであれば、もはや企業体質そのものを疑わざる得ないです》
《なるほど、しれーっと主語を会社にして実は自身で詫び文書いてるわけか。「当人も…深く反省し…」とかコンプライアンス教育の見直し云々とか、そりゃ「#お前が言うな」って思うわな》
《これ本当だとしたら、発言の張本人である常務取締役が従業員に対して「コンプライアンス教育の見直しを図り」とか言っちゃうの、震えるほどの地獄ですよね…》

そこで本誌は19日、吉野家広報に取材。18日に公表したお詫びの文書は、誰が作成したのか聞いた。

担当者に「伊東氏が作成したのですか?」と問うと、「そこは違います。広報の方で作成しております」と否定。だが、プロパティの作成者名が伊東氏になっていたことについて聞くと、担当者は「元書面が伊東ということもありましたので……」と回答。

「下書きなどは伊東氏が作成したということですか?」と質問すると、「あ、はい。それは、あの、はい。そういうことです」と返ってきた。つまり、伊東氏が下書きをした文書を元に、広報が作成したということだった。

伊東氏を解任することで幕引きを図った吉野家。その解任のプレスリリースで《当社と同氏との契約関係は一切ございません》と記されていたが、最後の仕事は下書きだったのかもしれない――。