快眠に導くストレッチをフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一氏が紹介(写真はイメージ)【写真:写真AC】

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連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」

 忙しい大人向けの健康術を指南する「THE ANSWER」の連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」。多くのアスリートを手掛けるフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏がビジネスパーソン向けの健康増進や体作りのアドバイスを送る。今回は「睡眠の質」について。「THE ANSWER」公式YouTubeチャンネルの動画では、中野トレーナーが提案する「就寝前のストレッチ3種」を紹介しています。

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 春は職場や家庭の環境の変化、寒暖差など変化の多い季節です。疲れが溜まりやすいこの時期、寝る前のちょっとしたストレッチはぴったりのコンディショニング法です。

 ストレッチには自律神経を整え、快眠に導く効果が期待できます。自律神経には「緊張させる神経」といわれる交感神経と「リラックスの神経」といわれる副交感神経がありますが、日常的にストレス過多で、絶えず緊張を強いられている人は、交感神経が優位になりがちです。すると、神経は昂り、興奮状態になります。しかし、ぐっすり眠るためには副交感神経を優位にし、交感神経の働きを抑えていく必要があります。

 交感神経が優位になると、筋肉に力が入りやすくなり緊張状態になります。逆に副交感神経が優位になると、筋肉は弛緩しリラックスします。そこで、この人間の体の作用を逆手に取り、ストレッチで筋肉を弛緩させることで副交感神経を働かせましょう。

 また、布団に入っても気になることが頭から離れず、なかなか眠れないという方にも、就寝前のストレッチはおすすめです。

 こういった方は「ハッピーなこと」よりも、その日起こったイヤな出来事や後悔など、ネガティブな思いや思考で頭がいっぱいになります。例えば「部長に言われたあの一言にはムカついた! 許せない!」「あの失敗はまずかった。どうしよう……」などと、繰り返しそのことを思い出してしまい、眠れなくなるのです。

 このネガティブな思考のループを断ち切るには、意識を別の何かに向ける自律訓練法が効果的です。

 自律訓練法とは「何かをしながらリラックスを得る」方法。人はなかなか「頭をからっぽにしましょう」「無になりましょう」と言われても、できませんよね? そこで、自分の手足の重さや呼吸のリズム、心臓の拍動などに意識を向けてみる。すると副交感神経が優位になり、リラックス状態に自律神経が整っていきます。

 就寝前のストレッチにはこの自律訓練法と同じような効果が得られます。ストレッチの最中は伸ばしている部位や周囲の変化、あるいは呼吸に意識を向けやすくなります。すると「あ〜今日はここが硬いな」「気持ちいいな」という気持ちにすり替わり、部長のことも仕事のことも一時的に忘れられる、というわけです。

中野トレーナーも日々行っているストレッチ3種を紹介

 さて、具体的なストレッチの内容ですが、今回は私自身も日々行っている種目を紹介します。しかも、たったの3種目。寝る準備を万端に整えてから、体勢をあまり変えなくてもできる内容です。

 通常であればたくさんのストレッチをやって欲しいのですが、寝る直前にたくさんは面倒ですし、続けられませんよね。それに、寝る直前に、立ったり座ったり横になったりと体勢が変わる内容では、目が覚めてしまって、寝る準備になかなか入れない人もいます。ですから、普段の生活のなかで非常に使いやすい筋肉だけを伸ばしていきましょう。

 伸ばす順番は、最初に大腿四頭筋、次に腰背部と殿筋、最後が内転筋です。

 大腿四頭筋は、立ったり歩いたりするたびに使われる太ももの前側の筋肉。特に人は体の裏側よりも前側の筋肉をよく使う傾向があるので、大腿四頭筋を酷使されている方もいます。ここを伸ばしてあげると、脚の疲れがずいぶん楽になりますよ。

 次の腰背部から殿筋にかけてのストレッチですが、歩行に関与する中殿筋、そして座りっぱなし、立ちっぱなし、いずれの姿勢でも負荷のかかる腰を伸ばします。最後の内転筋ですが、骨盤と脚をつなぐため、やはり歩くたびに使われます。またケアを怠ると硬くなり、膝のアライメントが崩れる原因に。ですから、伸ばすことで膝痛の予防にもつながります。

 私自身も疲労困憊でベッドに入った後、あれもこれもと動きながらストレッチをするのが正直、面倒臭い。それで、最初は横向きで伸ばし、あとはあおむけのまま行えるという、この3種目のストレッチに落ち着きました。疲れた日などは、内転筋に行く前に寝落ちすることもしばしば。皆さんもうまく眠りに誘導できるのでは、と自信を持っておすすめします。

中野ジェームズ修一
1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球・福原愛、バドミントン・藤井瑞希らの現役時代を支えたほか、プロランナー神野大地、トランポリン競技選手など、多くのトップアスリートから信頼を集める。2014年以降、青山学院大駅伝チームのフィジカル強化指導を担当。東京・神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。主な著書に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。