あふれた水は、戻らない。割れたガラスは、戻らない。

それならば、壊れた心は?

最愛の夫が犯した、一夜限りの過ち。そして、幸せを取り戻すと決めた妻。

夫婦は信頼を回復し、関係を再構築することができるのだろうか。

「再構築夫婦」一挙に全話おさらい!



第1話:「ごめん、魔がさした」夫のスマホに密会を匂わせるLINE…。幸せな家族を襲った危機

かわいい娘。子煩悩な夫。優しい義理の父と母。どこからどう見ても、何一つ不自由のない、完璧に幸福な家族のように見えるだろう。私も、そんなふうに思っていた。

でも今は、こんなに心温まる美しい光景のなかで、私の心だけが冬の夕暮れのように薄暗く冷えきっている。

疑いようのない幸福はすでに失われていた。幸せだった1週間前とは、今はもう何もかもが違っている。

それも当然。私と孝之は、“再構築”を始めたばかりなのだから。

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第2話:経営者の夫がまさかの浮気。献身を続けた妻の選択は離婚か、それとも…

「ママぁ、早くおうち帰りたいなぁ」

それもそのはずだ。金曜日の夕方からここグランドハイアット東京に泊まり始めたのだから『フレンチキッチン』での朝食もこれで2回連続になる。

あの日、孝之に土下座をやめさせて「帰ったら話し合いましょう」と、どうにか出張へ送り出したけれど…。

どんな顔をして向き合えばいいのか、わからなくなった私はほとんど衝動的に、孝之が帰宅する直前に絵麻とホテルへ家出してきたのだった。

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第3話:夫の浮気相手と三者面談。慰謝料は拒否され、泣きながら「彼を愛していますか?」と聞かれ…

傾斜のかかった壁が続く六本木ヒルズクラブの廊下は、いつもほんの少しだけ私の平衡感覚を狂わせる。

だが、軽いめまいに襲われているのは、今日に限ってそれが原因ではないだろう。

会員制の和食ダイニング『百味庵』の個室には、来客の方が先に到着していた。

ふすまを開けると、下座に1人で座っていた女性がハッとした表情を浮かべて振り向く。

彼女こそ、孝之の秘書を4年間つとめている…孝之の浮気相手・木村可奈だった。

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第4話:「本当に仕事なの?」夫に疑心暗鬼のサレ妻。久々にFacebookを開くと、懐かしの彼から連絡が…

とめどなく湧き出る疑念が、これ以上の気力を奪っていくことを恐れた私は、声に出して自分自身にこう言い聞かせる。

「再構築するって、私が決めたんじゃない。ダメダメ。暇だからロクなことしか考えないのよ」

とにかく、無理矢理にでも疑念を振り切らなければならない。そう考えて、ニュースでもチェックしようとスマホを覗きこむ。

そして、無造作にスマホを操作するうちに、思い出したのだ。数日前、家出していた時に、珍しく誰かからFacebookメッセージが届いていたことを。

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第5話:夫に内緒で男友達と密会。上機嫌な妻が自宅に帰ると、待ち受けていたのは…

ここは、最上くんが経営しているというウェブコンテンツ制作会社のオフィス。昨日メッセージを返してやりとりをした結果、彼からオフィスで会うことを提案されたのだった。

今日、最上くんに会うことは、孝之には伝えていない。古い男友達に会うことがやましいからではなく、私の目的が別のところにあったからだ。

配偶者の不貞による、離婚。最上くんのFacebookから断片的に読み取れたその情報が事実なら、経験談を聞いてみたい。

再構築生活に早くも限界を感じ始めている私は、とにかく、似たような経験がある人の話を聞きたかったのだ。

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第6話:「就活もやめて結婚したのに…」夢を諦めた妻を追い詰める、裏切り夫のヤバい行動

最上くんとの再会を果たし、バターを買って帰ったのは14時頃。

窓のない廊下は昼過ぎでも薄暗い。その廊下の片隅から、朝確かに会社に行ったはずの孝之が、帰宅した私を出迎えたのだ。

「きゃっ!?」

予期せぬ孝之の声に思わず悲鳴をあげた私を、奇妙な微笑みを浮かべて孝之がじっと見つめる。

「ちょっと時間が空いたから、たまには夫婦でランチでもどうかなと思って帰ったんだけど。こんな時間に美郷が留守にしてるなんて、珍しいね。どこに行ってたの?」

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第7話:「いい暮らしを続けたいなら、夫の浮気くらい目をつぶりなさい」姑の言葉に怒りがこみ上げた女は…

「ごめんなさいね。余計なお世話かとは思ったんだけど、この前絵麻ちゃんを預かったときに孝之も美郷さんも様子がおかしいから、ピンときて。

それで孝之を問い詰めたの。そうしたら、案の定…。美郷さんはいつも家族のために頑張ってくれているのに、本当にごめんなさい。母の私から謝ります」

そう言ってお義母様は再び深々と頭を下げる。けれど私はどんなふうに返したらいいのかわからず、ただうつむくことしかできなかった。

こちらも頭を下げるべきなのか。そう思って席を立とうとした次の瞬間。お義母様が言い放った言葉に、私は自分の耳を疑った。

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第8話:「夫を受け入れなければ…」ベッドの中でそう考えたサレ妻に、夫が浴びせた衝撃の言葉

仕事の内容は、最上くんの会社が手掛けるインディーズ映画を紹介するコンテンツの、ライティングと翻訳のお手伝い。

もちろん、こんなアルバイトにも満たないような仕事を始めたところで、経済的に独立できるなんて本気で思っているわけじゃない。

けれど、自分の夢を諦めてからこれまでずっと、私の人生の中心には孝之がいた。

依存ともいえる状態が、この息苦しい再構築の障害となっているのなら…、ほんの少しだけでもいい。抗ってみたかったのだ。

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第9話:夫に男友達との浮気を疑われたサレ妻。ショックのあまり向かった先は、自宅でも実家でもなく…

「最上くんと、仕事のふりして本当は何してるかって…?そう聞いてるの?」

今、耳にしたばかりの信じられない言葉を確かめるように声に出す。

孝之は何も言わずに目を伏せている。気がつくと私は、クローゼットにかけていたディオールのワンピースを素早く身につけ、ヘルノのコートを抱え込み、ドアノブに手をかけていた。

「仕事のふりして裏切っていたのは、あなたでしょ。一緒にしないで」

振り返ってそう言い放ったときも、孝之は黙り込んで下を向いていた。堪えきれずにこぼれた涙を見られないのは好都合だと思いながら、私は夫を置いて部屋を出た。

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第10話:深夜のオフィスで男友達と2人きり。夫の浮気を相談していたら、急に彼の体が近づいてきて…

孝之がした裏切りを、なぜ私はしてはいけないのだろう。ましてや私は、事実無根の状況でも孝之に疑われていたのだ。

ここ数ヶ月の騒動でひどく傷つき疲れた心を、最上くんの優しさは薬のように癒してくれる。

― どうせ疑われているのなら、いっそ、このまま最上くんに身を任せてみようか…。

積み重なった絶望と疲労が、私の背中を押した。なかばやけになって最上くんの目を覗き込んだとき…。私は、自分でも意外なことを感じたのだった。

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