ヤクザ役でクレジットされているのに本編に登場しない谷垣健治
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 映画『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(公開中)でアクション監督/セカンドユニットディレクターを務めた谷垣健治がリモートインタビューに応じ、「役者としてクレジットされるも本編に一切登場しない」という謎の真相について説明した。

 国際機密部隊G.I.ジョーの最強戦士として知られるスネークアイズを主人公に、日本の平和を守る忍者組織・嵐影に入門し、真の忍者として成長していくさまを描く本作。谷垣は、『G.I.ジョー』の世界観と日本の忍を融合させた斬新なアクションを演出しつつ、スネークアイズが立ち寄る銭湯で出会う眼帯のヤクザ(Yakuza with Eye Patch)役として、エンドクレジットに名前が載っている。

 ところが、本編をくまなく探しても谷垣の姿は見当たらない。出演パートについて本人に質問すると、「役名だけ残っていて、本編には登場してないんですよ。てか、撮影さえしてない(笑)」と回答。ヤクザ役を務めるはずだった役者のスケジュールがNGになったことから、全ては始まったという。

 「Yakuza with Eye Patch (眼帯のヤクザ)という役がありまして、最初は『ジョン・ウィック:チャプター2』にも出演していた相撲取りの役者さんが呼ばれる予定だったんですが、スケジュールが合わなくなってしまったようなんです。この役の撮影はカナダパートの2日間に加え、日本のパートもあったので、製作側としてはコストがかかるので、日本でたった1日だけ撮影のために役者を連れて行きたくない。その後、代役を探す中でプロデューサーから『ケンジがいるじゃないか』となりまして……(苦笑)。僕は『ちょっと待って! 他にも誰かいるでしょ? 僕はアクション監督に集中したい』と断ったんです。日本から連れてきているスタントチームから誰か起用すればいい話なんですけど、みんな他のシーンで顔が出てしまっていて。『ケンジ、お前しかいない!』って話が進みました」

 本作における谷垣の仕事は、アクション監督とセカンドユニットディレクターだ。役者として出演するためには、複雑な手続きが必要になる。「まず、その役を務めるためにカナダのユニオン(ACTRA)に加入しないといけません。また、ステータス変更のためアメリカに行き、カナダには役者としてのステータスで再入国しないと認められません。もちろん、現地のユニオンは自国の役者を守るために『なぜカナダ人の役者じゃダメなんだ』って言ってきますよね。そのために、『この役は〇〇というキャスティング・ディレクターが、カナダ中のアジア系の俳優をキャスティングしたが、適切な人はいなかった』という証明書を用意されてました。一応キャスティングも行ったが、現地からは見つからなかったというアリバイを作るためにです。他のスタントマンも顔が出ているため、この役は彼しかできないということを、書類で証明して、それを持たされて再入国して(笑)」

 では、正当な手続きを経てキャスティングされた谷垣がなぜ本編に登場しないのか。「撮影当日になって、ロベルト(・シュヴェンケ)監督がちょっと考え込んでいて、『ケンジ。申し訳ないが、君の役をふくらませられないかもしれない』と言われたんです(笑)」と明かすと、「『そうだよね! てか、ふくらませなくていいから!』ということになり、本編には登場していません。しかし、あれだけの手続きを済ませ、衣装やトレーラーまで準備したもんだから、エンドクレジットに載せる必要があったのかなと。だから、クレジットだけは残っているんです」と真相を打ち明けた。ちなみに、谷垣が演じるはずだった眼帯のヤクザは、本編ではエキストラが演じている。(取材・文:編集部・倉本拓弥)