ⓒ綿矢りさ・新潮社/「ひらいて」製作委員会

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ジャニーズJr.内のグループHiHi Jetsのメンバーとして活動する作間龍斗が、初めて本格的な映画への出演を果たした『ひらいて』が10月22日より公開となる。

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物語は学校では成績もよくて、明るくて目立つタイプの愛(山田杏奈)が、密かに想いを寄せていたたとえ(作間)に秘密の恋人・美雪(芋生悠)がいることを知り、そこから始まる歪んだ三角関係を描く。愛はたとえを自分に振り向かせるために、美雪に接近し、その心と体を奪おうとする。

作間の演じるたとえは、クラスの中では目立つ存在ではないが、周囲ともうまくコミュニケーションを取り、優しく接することのできる人物。だが一方で、病気を抱える地味な存在の美雪と密かに付き合っていて、実は抱えているものも多い。

本格的な映画の出演が初めてとなった作間は、一筋縄では理解できない内容に苦戦しながらも、監督の求めることに応えて「自分を変えちゃいけないんだろうな」と思いながら演じたという。

現場で感じていたことや、思いもよらず体験することのできた青春エピソード、またHiHi Jetsのメンバーへの想いなどを語ってもらった。

この物語は正解がわからないことが正解

――出演が決まったときの心境を教えてください。

めちゃめちゃ驚きました。まず映画というジャンルが初めてだったことと、ジャニーズ事務所関連のものではなかったことと、作品の内容が難し過ぎるということと。その3つが同時に来ました。

オファーと一緒に脚本もいただいたんですけど、全然理解ができなくて……まずは原作を読むか、と(苦笑)。最初はそんな感じでした。とにかく準備に時間をかけようと思いました。

――そこからどのようにして内容を理解したのですか?

結果的に理解し切れたか、というと、今、こうやってインタビューを受けさせていただけるときでさえ「どうなんだろう?」と考えたりするレベルで。撮影が始まっても“正解”というものは見つけられない中で演じていました。

このセリフが伝えたいこととか、そういう部分での正解はあったものの、全体の正解は永遠の謎というか、正解がわからないことが正解だと割り切ってもいました。これはもう(原作者の)綿矢りささんに聞かないと(笑)。

撮影に際しては、監督と「これってどういう方向性なんですかね?」というように、一つひとつお話をしながら、監督の撮りたいものを撮っていく、という感覚でした。

まだ僕には事前に自分で理解して作り込んでいくような技量はないので。現場で話を聞いて、そのときの自分が感じるままに、探り探りやっていました。「これって難しいことをしているんだろうな」と、自分でも思いながら。

――そうすると、現場に入る前にはどんな準備をしましたか?

撮影前に監督と何回かお話をさせていただける機会があって、そのときに「たとえには作間くんっぽいところがあるから、作間くんのイメージでやってもらって構わないよ」と言われたのですが、「おっと、難しいのが来たぞ」と(笑)。「それってどういうことなんだろう?」って。

ただ作り込んだりするのは違うんだろうな、自分を変えちゃいけないんだろうな、とは思ったので、情報をあまり取り込まないようにしました。

今の自分のままでやった方が、たぶん監督の期待には応えられるんだろうな、と。逆に設定やセリフの言い回しを覚えるとかの基本的なことしかしないようにしました。

――物語の中では描かれていないたとえのバックボーンなどについて考えることはありましたか?

それが求められる瞬間も確かにあったんですけど、そこもぼやっとさせておきました。どうして親とあんな関係性になっているのか、とか、(付き合っている)美雪(芋生悠)との馴れ初めみたいなところも自分の中では正解は出していないし、このあとたとえがどうなって行くのか、ということも考えられませんでした。

というか、考えても正解が見つからなかった感じ。何となくこんな感じだろうな、という想像はしましたけど、細かい設定は決めませんでした。

たとえとは似ているところがある

――作間さんはたとえをどんな人だと思っていましたか?

頭がいいな、と思いました。僕もプライベートでやるんですけど、ケンカしたら後々がめんどくさいからケンカはしない、とか。とにかくめんどくさいことになりそうなことは拒むところがあるな、と。

一見、穏やかそうには見えますけど、自分の世界を守りたいから他からの侵入を拒んでいて。その反面、自分のことをわかってくれている美雪のことは大事にする。自分にとって暮らしやすい環境を作りながら生活をしてますよね。

だからこそ、その生活圏を壊すような愛(山田杏奈)に対して、たとえも初めて自分の囲いのようなものを取っ払って向き合うんだと思います。

――たとえに共感する部分はありましたか?

たとえの人を受け入れない感じみたいなのは、自分と似てると言えば似ているところがあって。この業界って出会いが多いんですけど、それが苦手というか、人間関係を広くしていくことが得意ではないんです。

学生時代も同じクラスの人とは最低限の関わりはあったんですけど、他のクラスの人とかに対しては「やめて、来ないで」みたいな感じで(笑)。その辺りはすごく共感できました。あとは監督もおっしゃっていたように、見た目もこんな感じなんだろうな、と。

ただ物語の終盤での愛との夜の教室でのシーンがあるんですけど、そこでたとえが初めて胸の内を打ち明けて、愛に辛辣な言葉を投げかけるんですね。そのときは、たとえが言い過ぎのような気がして、監督と相談してニュアンスを柔らかめに変えてもらうということはありました。

よくよく考えると、それって僕自身の感情を大事にしてしまったのかな、とは思うんですけど。たとえというキャラクター設定を守るのであれば、脚本通りに行くべきだったとも。

でも、目の前にいる愛を見ると、少し同情の気持ちが生まれてしまって。あれ以上のことをやってしまうと、たとえが悪く見えちゃうって思ってしまいました。

――演じる中で大切にしていたことは?

基本的には僕のままでいいとは言われたものの、「間を空けて」と言われていて。たとえなりに言葉を受け取ってから少し考える間があって、それから言葉を発してほしい、と。それは意識していました。

あとは気持ちを作り込むのではなく、その場でセリフを聞いて、それに対して感情を出す、ということを全体的にはしていました。声の出し方もそのときの感情でぼそぼそ話したければそうしたり。

それから、目を死なせていたというか。僕、昔よく友達から「目が死んでない?」って言われたり、仕事のときも「もっと目を生かして」とかって言われていて(苦笑)。

最近は何とかなっているんですけど、その当時を思い出して、目に力を入れない、というのはやっていました。原作の小説にも「瞳の奥が暗い」というような表現もあったので。

――愛はどんな女の子だと捉えていましたか?

実行するかどうかは別として、学生のころって、愛のように暴れたい、めちゃくちゃにしたい、というような感情を持つ人ってたくさんいらっしゃるとは思っていて。だから普通だな、って。「こういう人もいるでしょうね」と。ただ今回はそれを映画にしているので、より一層過剰に表現しているとは思います。

たとえの目線から見ると、愛は確かに自分の中にズカズカと踏み込んでくる怖い人、ということになるんですけど、その関係性を外側から見てみると、ありえる話だな、とは思いますね。

僕の人生では叶わなかったことが叶えられた

――共演の山田さん、芋生さんとお芝居について話すことはありましたか?

今回はそれが本当になくて。ドラマ『恋の病と野郎組』とか、これまでの現場では自分はあまり言わなかったですけど、周りはよくそういう話をしていたんです。だから今回も「あるのかな?」と思っていたんですけど、ホントに何もなくて。

現場に入るとすぐに段取りに入って、そのまま本番みたいな。あっという間に終わってました。本番中に相手の様子を見ながら、それが脚本には書かれていないようなことでも、臨機応変にやっていく。それが役者ってことなのかな?って思いました。

――ご自分の撮影がなかった日に、山田さん、芋生さんの撮影を見に行ったそうですが、それは何か理由があったのですか?

現場の雰囲気を掴みたいっていう。あとは、スタッフさんともコミュニケーションを取りたかったので。泊まり込みで撮影をしていたんですけど、丸1日オフになる日があって、どうせやることもないし(笑)、見学させてください、とお願いしたんです。

現場に付きっきりで、夏だったので蚊取り線香を出したり、飲み物を持って行ったり。そういうことをしながら、自分が出てないシーンってどういうテンションなんだろう?とか。

愛と美雪がどんなやり取りを辿ってきているのか、その感情を知れば知るほど、たとえが返す言葉の重みみたいなものを増したり、逆に減らしたりもできるとも思ったので。なるべく撮影に寄り添うような気持ちでいました。

――それは役に立ちましたか?

難しいシーンを撮影する前だったので、特にそういうシーンではスタッフさんとコミュニケーションを取れていたからこそ、言葉を交わさずともわかることもありました。

共演者の方とも、相手のお芝居をたくさん見れば見るほどどういう感じで来るか予測もできるので、そこはやりやすくなりました。

――完成作を観たときはどんな想いがありましたか?

最初は自分がスクリーンの中にいるってことが違和感で。「俺いるわ」って(笑)。あとは当時の思い出が頭の中をぐるぐるしていました。

さっきも言いましたけど、(栃木県の)足利に泊まり込みで2週間くらいいたので、河辺を歩いたこととか、休みの日にショッピングモールで映画を観たこととか。「懐かしいな〜」って。

そんなことを考えていたら、作品のことを何か感じる前に終わってしまって。もう一回観たい、というのが感想です(笑)。

――気に入ってるシーンはありますか?

僕は出ていないんですけど、試写を観たときに、愛が暴れたあとに屋上で座り込んでいるシーンが良かったです。映像の色味が愛の心情を表しているようでした。空がちょっと紫色かかっていて、モヤモヤする感じがきれいで。

この『ひらいて』という作品っぽさが出ている映像だな、と。そういう細部にもこだわっているんだな、と思いましたし、すごく目を奪われて感動しました。

――演じた中で青春らしさを感じたシーンは?

文化祭の準備のシーン。僕自身は仕事があったりもして、文化祭というものに一回も参加したことがなかったので。あのときは自分が「最高に青春してるわ!」って思っていました(笑)。

あとは劇中で愛とベランダで花火を見るシーンがあるんですけど、そのとき、少し離れた場所で本当に花火大会が始まって。音が入ってしまうから撮影を中断しなくちゃいけなかったので、その時間は本物の花火をベランダからみんなで見ました。

制服を着て、学校のベランダから花火を見るなんて、僕の人生では叶わなかったことが叶えられて、ホントに「学生してるな!」って感じがしました。

HiHi Jetsのメンバーの力は偉大

――本作で描かれている複雑な三角関係についてはどう思いましたか?

なかなかにいびつですよね。現実ではそうそうないとは思いますけど、奪う相手が自分にとっての同性ということに違和感を覚えるだけで、好きな人を取り合うみたいな関係性はよくありますよね。何かを手に入れるために、何かを犠牲にすることはあることだとは思います。

――愛と美雪は正反対のキャラクターですが、作間さんだったらどちらを選びますか?

これはすごい難しいですね(笑)。でも愛は怖すぎるから美雪かな。愛が高校を卒業して4年くらい経ったら、たぶんまともな心を取り戻していると思うから、そしたら愛かもしれないけど。

ただ美雪はすごくいい子ではあるんだけど、いろいろ抱えているものを僕は支えてあげられる自信がないです。だからどっちも難しいです(笑)。

――美雪はたとえの支えになろうとしますが、作間さんはこの人がいたから頑張れた、というようなことはありますか?

基本的には関わってくださっているすべての皆さんがいるから頑張れるというか、恩返ししたいと思っています。「何のために俺は日々を過ごしているんだろう?」と考えたとき、学生時代は何かしら成功するために勉強しているんだろうな、と思っていたんです。

でも、いよいよ高校を卒業して、今の仕事しか選択肢がなくなったとき、本当に人の支えがなければやっていけないと改めて感じたので、本当にありがとうございます、という想いを伝えながらやっていかなくちゃと思いました。

ただお力を借りるときは積極的にお借りして、その分、出世払いじゃないですけど、大きくなれたら返していきたいと思います。今もそうですし、今後もそうしていきたいですね。

――今回の出演に関してHiHi Jetsのメンバーから何か声をかけられましたか?

作品とか、演技に関して何か言ってくれることも、僕から聞くこともなかったんですけど、撮影のとき、一人で地方に行っていたので、そのときはメンバーの存在を感じました。気持ちの整理がつかないときに、メンバーが電話をしてきてくれて、それで解消されたこともあって。改めてメンバーの力って偉大だな、って。

――最後に今作の見どころを教えてください。

作品全体として感情の変化がすごくあって。愛、美雪、たとえと、それぞれに思春期ならではの感情があるので、いろんなところに感じるポイントがあると思います。

例えば、最初は愛の目線から観て、次は美雪、次はたとえと変えると、またいろんな解釈もできると思います。観てくださる方には、そういういろんな感情を楽しんでほしいですね。


今作が本格的な映画に出演するのは初となった作間さん。インタビューでは演技経験が浅いことを謙遜していましたが、スクリーンでは難しい役どころをリアルに表現する作間さんに心が動かされます。

作間さんも言うように、観る人それぞれの見方によって、湧き上がる感情が違ってくるような作品だけに、今、思春期の人も、かつて思春期を経験した人も、どちらも楽しめると思います。ぜひ劇場で、作間さんの繊細な心情を体現した演技とともに確認してみてください。

作品紹介

映画『ひらいて』
2021年10月22日(金)全国ロードショー