「第8回料理レシピ本大賞 2021」で料理部門の大賞を受賞した滝沢カレンさん。話題のレシピ本『カレンの台所
』(サンクチュアリ・パブリッシング)は「料理を楽しく感じられるようになった」「料理って自由でいいんだ」など、料理が苦手な人からも高い支持を得ています。
今回は滝沢さんに、現在の料理生活や料理を楽しむコツなどをインタビュー。『カレンの台所』より、人気のシュウマイのレシピもご紹介します!


滝沢カレンさんにインタビュー

料理が面倒くさくなったら休んでもいい。滝沢カレンさんの楽しいレシピ



まずは滝沢さんのレシピをひとつ、ご覧ください。
続いて、滝沢さんの話し言葉で、料理や器についてたっぷり語っていただきます。

●滝沢カレンさん直伝!包まない「しゅうまい」レシピ



本日は中華の名サイドメニュー、しゅうまいをつくりました。

蒸し器に振り回されて、残念な肩をさせていませんか? 蒸し器なんておかまいなしなのが現在です。ご安心ください。

登場食材は豚のひき肉、シイタケ、タマネギ(または長ネギ)、お豆腐(絹だって木綿だっていい)です。安心のメンバーなので、あまり中華をつくるとかっこつけなくていいので便利です。

さぁ、まずは嫌いな作業から手を伸ばします。
いったいいつまでたったら仲よくなれるんだかというほど、毎回泣かせにかかるタマネギのみじん切りから始めましょう。

涙に耐えたら、お次はシイタケのみじん切りです。好きなだけ粉々にしてください。口当たりが恋しい方は大きめにしてください。
お豆腐はもう嫌ってほど水分を吸い取り、お豆腐の潤いを抹消させます。
水分を奪いきったら、お豆腐、豚ひき肉、タマネギ、シイタケを、ボウルに入れます。

そこに、忘れないように全体に塩コショウをし、ショウガのすりおろし(チューブでもいい)を隠したくはないけど隠れちゃう量をひそかに入れ、ゴマ油を一筆で「ら」を書く意識で、おしょうゆは本当に遠慮させた量で小さなシミをつくる程度でいいです。
最後に鶏ガラスープの素を数えられる程度入れたら、一気に清潔な手で意識を飛ばしてグニャグニャにしていきます。


グニャグニャ具合を納得したら、片栗粉を入れて固まりやすくさせます。量はご自分で判断していただきたいですが、小さな山が中心に立つくらいの量はいかがでしょうか。


グリグリ一心不乱に混ぜたら手を清潔に洗い、しゅうまいの皮をお取りください。しゅうまいの皮を千までいかない細切りします。細かいほうがそりゃ綺麗です。さらに短く半分に切ってもいいです。
そして広げていいお皿にしゅうまいの皮の糸をばらまきます。


先ほどまで散々ネチネチさせていた具を丸めていきます。和菓子の練り物のようにかわいさ満点の小丸肉にしていきます。
では、しゅうまいの皮の糸へ落とし、クルクル糸を粘着力をいいことにくっつけていきます。

それを全て形をそろえたら、シャキシャキ感では負けないスイートコーンを上部に、お花のおしべだかめしべだかのようなつもりで乗せましょう。

そうしたら、熱に勝てるお皿の上にレタスを敷いて、そこに転がるほどかわいくつくったしゅうまいを並べます。隣のしゅうまいのほっぺとほっぺが当たらないように私たちが注意します。

当たり前にラップをこなれた手つきでかけます。あとは電子レンジにバトンタッチして、5~7分温めてもらいます。

ぶわぶわにみずみずしくなったしゅうまいがいたら成功です。

レタスの水分でいつの間にか潤いを与えられ、生き生きとしてるはずです。

●早めに仕事が終わればスーパーへ。その日食べたいものをつくります



仕事が20時くらいまでに終わった日は、たいてい家でごはんをつくっています。その日食べたいものを考えながらスーパーへ。時間がない日はつくりません。

昨夜は豚汁とお漬物を食べました。夕食をつくるときは、長いときで2時間くらい台所に立っています。台所という空間が好きだから苦にならないし、時短はとくに気にしていません。

●蒸し器がなくてもつくれる、簡単シュウマイ



『カレンの台所』でご紹介しているシュウマイは、「蒸し器がないけどシュウマイが食べたい!」という願いから思いついたもの。蒸し器は実家にもずっとなくて、わざわざ買うという感覚がなかったんです。

電子レンジを使うというアイデアをくれたのは、テレビ番組。「ラップをして水分をたしてあげればできる!」ということを知り、何度もチャレンジしました。


加熱時間がわからず仕上がりが生っぽいこともありましたが、さらに温めればいいだけなので問題なし。失敗したって気にしません。

このシュウマイのもうひとつのポイントは、皮で包まなくてもいいこと。皮を細切りしてお皿にばらまき、丸めた具をコロコロするだけなので手が汚れず簡単です。

これは、料理好きの親友の「包むよりかわいいね」から始まったアイデア。料理デビューの子どもさんや料理が苦手な人にもぜひ試してほしいです。私はシュウマイの皮を千切りにするのがただただ楽しくてつくっています。

●切り干し大根は週1回必ず!私にとってはメインおかずです




『カレンの台所』には全30種類のレシピが載っているのですが、その中でも一番よくつくるのは切り干し大根です。特大サイズの保存容器が埋まるくらい一度にたくさんつくるんですが、それでも1日で半分くらいなくなってしまいます。私にとってはみそ汁と同じ感覚。つくりおきはしない派なのに、切り干し大根だけはつくりおきを許されている存在です。

嫌いな具が入っていても、切り干し大根に入っていたら食べられます。じつはニンジンがあまり得意ではないんですが、切り干し大根に混ざってくれるニンジンは変え難い存在です。ニンジンあっての切り干し大根です。

●おもてなしするならラザニア。ドンと大皿を出したいです




インスタライブより

今はコロナ禍でごはんを人に振る舞う機会がありませんが、もしそれができる状況になったらつくりたいのはラザニア。私がつくる唯一のイタリア料理で、どのお店より自分のラザニアが一番好きです。ソースを大量に仕込むから、パーティー向き。どうせつくるなら大きいお皿でつくりたいですね。

おもてなしのメニューを考えるのも大好きです。切り干し大根も絶対出します(笑)。

●器に興味を持ち始めて、料理がさらに楽しくなりました



じつは器が大好きすぎて、集めた器をインスタグラムに載せたいから料理の写真を投稿し始めたくらい。服にしか興味がなかった過去の自分が信じられないほどたくさん持っています。

産地やブランドに詳しくはないけれど、インスタグラムで「いいな」と思ったものを調べてたくさん買っています。オンラインの陶器市にアクセスして販売開始時間前からスタンバイしたことも。

かつて真っ白なお皿しか持っていなかった私にとって、作家さんのお皿が家にあるというのは誇り! どの器に盛ろうかな〜と思うとワクワクするし、組み合わせを考えていると飽きません。食べ進めていくとお皿の全貌が見えてくるあの感覚! 食べ終わっても楽しいんです。

青いお皿は差し色どころじゃない、こんなにいい役を演じてくれるんだということを最近知りました。青の懐の深さといったらありません。

豆皿は食卓のアクセサリー。小皿じゃ大きすぎて存在感が高すぎるというときに活躍してくれています。ぐい呑みやおちょこも、器として使っているすてきな投稿を見つけて気になっています。


器たちは、きらいな後片づけの気持ちも少しラクにしてくれています。料理は好きだけどお皿洗いや片づけは楽しい頭になりません。そこに感情はなく、「無」の気持ちでやっています。お皿には、自分で棚に帰ってくれよ! と思ったりもします。でも作家さんの器は大切な1枚だからこそ、今日のうちにきちんと片づけよう、割らないように丁寧に洗おうと思えるんです。

そういう大切な器は、自分だけで使って幸せを噛み締めます。おもてなしには10枚セットの安いお皿でじゅうぶん(笑)。みんなで食べるときは食器より料理の味を楽しみたいです。

●料理は入り口で「褒められた」「成功した!」と思えたらやりたくなるかも



私はたまたま料理が好きになれて、苦にならないタイプ。そのことにすごく感謝していますが、苦手な人もいますよね。何事も、入口ってすごく大事です。なにかに挑戦したときに人からものすごく褒められたら、それはもう楽しくなっちゃう。でも怒られたり失敗したりすると、もうやりたくないなと思います。


インスタライブより

私の料理の入り口は、コンビニで買ったパスタのレトルトミートソースとスパゲッティ(乾麺)でした。当たり前だけど、それがおいしくできたんです。お湯を沸かして乾麺を茹でて、成功した! だれかがつくったパスタソースだけど、これは自分の味だって自信を持てたんです。私にとって、入り口で成功体験を得られたことはとてもラッキーでした。あのときミートソース用のひき肉を買うところから始めていたら、もしかすると私は料理がきらいになっていたかもしれません。

なにかを切ったり、お皿に盛るだけでもいい。家にあるものをたすだけでも、その料理は自分の作品になります。ご飯にふりかけをかけるだけでもいいんです。褒めてもらえればうれしくなるし、だれも褒めてくれなくても「おいしい!」と自分が思えばそれは自分に対する褒め言葉です。

●料理はしてもしなくても、どっちだっていい!



呼吸することに比べたら、料理はしてもしなくてもどっちでもいいですよね。料理はやらなくたって死にません。食べるものはなにかしらあります。料理は気が向いたときに、ラクなことから始める。だから、「料理してください」なんてことは私には言えません。入り口で楽しいと思っても、その先いろいろな壁や山があるかもしれない。乗り越えたくなければ乗り越えなくてもいいんです。料理に関しては自由!


もし、家族のために毎日料理することがイヤになってしまったら、やめたっていいと思います。私は今そんな状況にはないけれど、もし余裕がなくなったら子どもに外のごはんを食べさせることだってきっとあるでしょう。家族に栄養のあるものを食べてもらうことは大事だけれど、余裕をなくして自分が台所をきらいになってしまうことが一番いやです。

料理が面倒くさくなったら休んでもいい。旦那さんがやったっていい。家族で料理をつくってみんなで毎日楽しく過ごすのが私の夢です。

幸い今の私にとって料理は楽しいものだし、仲間。料理があるから楽しく1日を終えることができています。この世に料理があってよかった! と思っています。

【滝沢カレンさん】



1992年東京生まれ。2008年、モデルデビュー。現在は、モデル以外にもMC、女優と幅広く活躍。主なレギュラー出演番組に『全力! 脱力タイムズ』(フジテレビ)、『沸騰ワード10』(日本テレビ)など。11月には出演する「土竜の唄 FINAL」の公開も控えている。初めての料理本『カレンの台所
』(サンクチュアリ・パブリッシング)が、レシピ本大賞、料理部門の大賞を受賞。

<取材・文/佐藤望美>