マイクロソフト「Surface Duo 2」の魅力とは? 「基本」をしっかり揃えた2画面スマホ

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●マイクロソフトが2画面スマートフォン「Surface Duo 2」を発表!
米マイクロソフトは9月22日(現地時間)、同社のモバイルブランド「Surface」シリーズの新製品を発表しました。

発表された製品は、
・Surface Laptop Studio(タブレットスタイルになるノートPC)
・Surface Pro 8(2 in1 タブレットPC)
・Surface Go 3(廉価版 2 in1 タブレットPC)
・Surface Duo 2(2画面スマートフォン)

これらになりますが、この中でも筆者がとくに注目した製品はSurface Duo 2です。

Surface Duo 2は、サムスン電子の「Galaxy Fold」シリーズのような、開くと1枚の大きな画面になる「フォルダブルスマートフォン」ではありません。

非常にシンプルに2つの画面をヒンジでつなぎ、文庫本のように見開き型にした2画面スマートフォンなのです。

一見すると技術的な先進性が分かりづらく、フォルダブルスマートフォンのような目新しさもないため、本当に便利なのか不安視する声もあります。
しかしながら、より「スマートフォンらしく」進化したSurface Duo 2は、背伸びをしない堅実な進化と機能の充実にこそ「売れる要因」が秘められていると感じます。


奇をてらわずシンプルに「スマートフォンの良さ」を追求した2世代目



●「当たり前」ができていなかった初代Surface Duo
Surface Duo 2を解説する前に、まずは初代である「Surface Duo」について語る必要があります。

初代Surface Duoは2019年に米国などで発売されましたが、その評判は芳しくなく、日本ではとうとう正式発売されずに終わりました。

マイクロソフトは、Surface Duoでスマートフォン向けOSであるAndroidを採用しているにも関わらず「スマートフォン」という言葉を敢えて避け、むしろスマートフォンとは違う新しいモバイルツール」として売り込もうとしました。
その結果、人々が求めていたニーズから大きく逸れ、アプリなどの作り込みの甘さも相まって大失敗に終わったのです。

Surface Duo 2では、その失敗の教訓が大いに活かされました。
素直に「スマートフォン」という名称を用い、スマートフォンとして当然あるべき機能をすべて搭載したのです。

例えばSurface Duo 2には、
背面カメラ(メインカメラ)として、広角(標準)、超広角、望遠の3種類のカメラが搭載されています。
ところが初代Surface Duoには3眼カメラどころかメインカメラとなるべき背面カメラが一切搭載されていなかったのです。

今どき、自撮り用(というかSurface Duoの場合チャット目的用)のインカメラしか搭載されていない上に15万円以上もするスマートフォンなど、誰が欲しがるのでしょうか。


マイクロソフトはユーザーニーズを大きく見誤ってしまった(画像は初代Surface Duo)


Surface Duo 2では、背面の3眼カメラ以外にも、チップセット(SoC)としてハイエンド端末用の「Snapdragon 888 5G mobile platform」を搭載して5G通信にも対応し、Surfaceシリーズで利用できる電子ペンが本体にマグネット装着できる仕様にもなっています。

スマートフォンユーザーがハイエンドスマートフォンに欲しいと思っている機能は全部搭載するという「基本的なこと」が、すべて正しくできていることこそが重要だったのです。


スマートフォンとして「あって当然」の機能が揃っていて、初めてプラスアルファの使い方が魅力的になる



●2画面だからこそ超縦長ではないディスプレイが活きる
Surface Duo 2は、ディスプレイとして5.8インチ・1344×1892ドット(13:9)の変則的なアスペクト比のAMOLEDを2枚採用しています。

昨今の一般的なスマートフォンのディスプレイのアスペクト比は、18.5:9や19.5:9といった超縦長ですが、Surface Duo 2の1画面は文庫本に近いアスペクト比となっています。
これこそが、Surface Duo 2の最大の特徴でもありメリットとなります。

十分に横幅がある上に見開き型の2画面であるため、小説や漫画を読むのに非常に適しています。
また、横書きのウェブサイトを閲覧する際にも十分大きな文字で表示でき、1画面に表示される情報量が多くなります。

また、メールやテキスト文章を入力する際には端末を縦に開いて利用することになりますが、その際にも縦方向への解像度が十分にあるため、文章作成が容易になります。

1画面のスマートフォンでは得られない利便性を持たせるためには、ただ単にスマートフォンサイズのディスプレイを2枚並べるのでは意味がありません。
パソコンのディスプレイのように、「作業領域」として十分に活用できるだけの広さが必要だったのです。


料理動画とレシピを同時に表示しても十分な情報量を得られるのも画面が広いからだ



フォルダブルではなく2画面だからこそ、画面を内側にも外側にも折りたたんで使える自由度がある



●技術の隙間に見える美しさ
そのほかSurface Duo 2では、閉じた状態で各種通知を確認する方法として、ヒンジ部の「隙間」を非常にうまく活用しています。

Surface Duo 2は、ヒンジ部全体が塞がれているのではなく上下端にヒンジがあり、それ以外の部分はわずかに隙間が開くようになっています。
こういった開閉式端末のヒンジ部に隙間があることは、一般的にはあまり美しくないとされて極力隙間が開かないように設計されますが、Surface Duo 2ではそれを逆手に取って「隙間から各種通知がチラっと見える」という演出をしているのです。

敢えて2枚のディスプレイの端を曲面加工し、ディスプレイが横から覗き見られるとようにすることで、さり気なく光る通知イルミネーターのように活用しています。
この表現が非常に美しく、また今までにない新しさを感じさせます。

これは、ディスプレイを湾曲しやすくギリギリまで広く配置できるOLEDだからこその表現でもあります。


通知以外にも、時計表示などもチラ見えするのが美しい


Surface Duo 2は米国ですでに予約が開始されており、10月5日の発売予定です。
価格は1,499.99ドル(約16万7000円)です。
日本でも2022年春頃の発売を予定しています。

マイクロソフトはかつて、「Windows Mobile」や「Windows 10 Mobile」といった独自のモバイルOSを搭載したスマートフォンを発売し、AppleやGoogleと市場競争を繰り広げていましたが、その競争に負けて撤退した過去があります。
Surface Duo 2は、そんなマイクロソフトが再起を賭けて挑む「本気のAndroidスマートフォン」でもあります。

デバイスとしての特殊性やハイエンド端末であるがゆえの価格の高さなどは大きなハードルとなります。
しかしながら、同社のビジネスアプリとの親和性などを謳いつつ、フォルダブルスマートフォンにはない使いやすさや使い方の提案を行っている点は、高く評価できる部分です。

そのチャレンジ精神と「基本を大切にした新しさ」へのこだわりがどこまで製品に反映されているのか、今からとても楽しみです。


執筆 秋吉 健