気付かぬうちに脱水に…油断が招く「室内での熱中症」危険エリア3

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長引く猛暑で熱中症患者が後を絶たない。コロナ禍で在宅の時間がほとんど、という人も油断は禁物。気づかぬうちに体が危険と隣り合わせになっている恐れがあるのだーー。

「急激に暑くなったうえに、コロナ禍で迎えた2度目の夏。これまで以上に熱中症になるリスクが高まっています」

そう語るのは、熱中症に詳しい済生会横浜市東部病院・患者支援センター長の谷口英喜先生。

「今年は梅雨入りが早く、汗をかいて体内の熱を発散する機会が少ないまま真夏を迎えました。暑さに体が慣れる『暑熱順化』ができず、急激な気温の上昇に体がついていけない人が多くいます。そして1年以上にわたる外出自粛から運動不足になり、筋肉が衰えている人が少なくありません。体の水分の4割を蓄える筋肉の量が減ると、それだけ熱中症のリスクも高まってしまうのです」

今年は“家の中”で“気づかないうち”に熱中症になっていて不調を抱える人が増えているそう。

「頭痛や胃のもたれがあっても、不調を夏バテのせいだと思い、季節が変われば改善するだろうと軽く考えている人がいます。しかし調べてみると、その原因が軽度の熱中症というケースがあるのです」(谷口先生・以下同)

密かに私たちの体に忍び寄る、いわば“ステルス熱中症”が、この夏は増えているという。

■血管がもろくなってしまい脳梗塞や心筋梗塞の原因に

「軽い熱中症の状態にある人は、脱水しやすい体質や生活習慣に陥っている可能性が非常に高い。そのことに気づかずに同じ生活を続けていると、血液がドロドロの状態になり血流が悪化します。やがて糖尿病や高血圧症など、生活習慣病のリスクが上がるのです。さらに、血管がもろくなってしまい、脳梗塞や心筋梗塞など突然死を招くこともあります」

ステルス熱中症は、家の中でつい油断してしまうときに起こっている可能性が高いという。

■室内での熱中症危険エリア

〈寝室〉

体温コントロールが難しく、水分補給をしない就寝中が危ない。エアコンのタイマー設定はしないほうがベター。

〈トイレ〉

体が弱った状態で、エアコンがなく水分補給もできない閉鎖空間にいることで熱中症が起こる場合も少なくない。

〈キッチン〉

火を使うため、調理中に高温多湿の環境になりやすい。さらに、アルコール片手の調理は脱水状態に陥るリスクを増大させてしまうので厳禁。

「エアコンが効いたリビングにいるからと安心しないでください。リモートワークやテレビ視聴など、なにかに集中していると水分補給を怠ってしまいがち。とりわけ危険なのが寝室。水分補給ができない睡眠中は体温を調整する力も弱っています。寝室の温度や湿度には気を配りましょう。タイマーを設定している人も多いようですが、明け方は脱水症状も進んでいて危険であるため、できれば朝まで通してエアコンをつけておくことが必要です」

エアコンがなく、狭い空間のトイレも高温多湿の環境になるため注意が必要だという。

「火を使う台所も熱中症リスクが高いです。缶ビールを片手に調理している人は要注意。アルコールは体内の水分を奪ってしまいます」

ステルス熱中症の対策には、やはり水分や塩分をこまめに補給することが大前提。さらに谷口先生は次のように指摘する。

「自分では水分補給をしているつもりでも、それが足りていない人が少なくありません。いまの時期は特に、時間を決めて、薬を服用するように水分補給をしていくことが重要です。起床後、食事の前後、トイレや入浴の前後……など、なにか行動をする前と後に、コップ半分でもいいので水かお茶を飲む習慣をつけるようにしましょう」

しかし、いくらこまめに水分を補給しても、それを吸収する小腸の状態が悪いと脱水状態を起こしやすくなってしまう。

「水分を食事から取る工夫も大切。水分が豊富な野菜や果物を積極的に取ることで、補給した水分やミネラルを体内に長くとどまらせることができます。また、水分と塩分、カリウムを同時に補給することができるみそ汁は熱中症予防には特にオススメ。暑いうちには、冷やしたみそ汁を取るのもいいでしょう」

食欲が落ちがちな季節だが、しっかり食事を取ることは不可欠。

今後も平年よりも高い気温が続く予報が出ている。外出中だけでなく、室内での熱中症にも気をつけて、自分の体を守っていこう。