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選手のみなさん、空気あったまりましたでしょうか!?

2021年7月23日、未曾有の危機のなかで迎える東京五輪が開会式を迎えました。開会式はあるのか、できるのか、当日になってなお揺れ動くような異例尽くめの式典でした。開会の時を待つ国立競技場は、はたしてこの大会を前向きに迎えることができるのか、それとも悲惨な始まりとなるのか、緊張感高まる幕開けです。



冒頭は何かを「感じよ」と無言で訴えるかのような内容。多様性を示すかのような多面体。未来への希望を示すかのような種子。招致決定以降のさまざまな日々を振り返りながら、2020年突然に動きを止めた世界の模様が映し出されます。それでも、自宅で、庭で、どうにかして未来への道をつなごうとしてきたアスリートたちの再起動とともに、大会のカウントダウンが行なわれます。国立競技場を「ゼロ」に見立てて打ち上がる花火。「連帯」によって立ち上がれた、「連帯」によって立ち上がろう、そんなメッセージを描くようにパフォーマンスはつづきます。



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天皇陛下おひとりでのご入場となり、「お守りします」の声が胸で響く開会式。高橋尚子さんらが運んできた日の丸の掲揚、日本のディーヴァMISIAさんによるMISIAアレンジ全開の君が代、新型コロナウイルスで亡くなった方へ捧げる黙祷と、式は厳かに進んでいきます。黙祷の時間、僕は震災のなかで亡くなられた方への黙祷も同時に捧げました。今このコロナ禍のなかゆえに、式典があえてそれを言葉にはしなかったのだとしても、神戸市出身の森山未來さんが白装束で舞うのであれば、そこに祈りはあるはずです。あらゆるものへの祈りが。

つづいてフィールド中央には木の舞台が運び込まれ、その上でのパフォーマンスが行なわれます。たくさんの提灯、祭、民謡。さまざまな属性の人が踊り、そのなかを木で作られた輪がやってきます。木の輪がまるで寄木細工のように展開され、五輪のシンボルを成すという仕掛けのようです。木材の色はそのままに、花火によって五色を灯す。東京五輪らしいリングとなりました。

↓この木は1964年東京五輪のレガシーであるとのことです!


ノーベル平和賞受賞者でもあるムハマド・ユヌス博士へのオリンピックローレル授与を経て、式典は選手入場へと進んでいきます。オーケストラのチューニングとアスリートの映像を重ねて興奮を高めていくと、高らかに鳴り響いたのは「ドラゴンクエスト」の序曲として知られる「ロトのテーマ」!その後も「ファイナルファンタジー」「モンスターハンター」「クロノ・トリガー」などさまざまなゲーム作品の音楽が入場行進曲として流れてきます。

「勝利のファンファーレ」が鳴り響き、ぐんぐんレベルが上がっていく選手団。「英雄の証」を背に今まさに困難を討伐に向かわんとする選手団。ゲームの思い出が、冒険の日々が、日本が世界をリードしてきたと誇れる文化が、今世界の皆さんをお迎えしている。ここにマリオやリンクがいればもっと誇らしかっただろうとは思いますが、2016年にマリオがつないでくれた夢をドラクエやFFが受け止めるのも、また胸が熱くなる演出です。マリオのデデッデデデッデッでは行進しにくいのも確かですし。ジャンプしたくなるから。今回は「冒険」感でいきましょう。進め。レベルを上げろ。勝利を掴むその日のために!

↓FFの「メインテーマ」で入場してきたカザフスタンは完全に王女!クリスタル持ってそう!


↓おなじみトンガのピタ・タウファトファさんが今回も来てくれました!


↓トンガに負けず、バヌアツもかなりイイ感じに仕上がってます!


↓ちなみに「チャイニーズタイペイ」として参加している台湾は、日本語50音順の入場で「たいかんみんこく」と「たじきすたん」の間で登場しました!

「あー、そうなんすか?」
「あー、なるほど」
「中国は台湾を認めてないと」
「チャで入場させろと」
「はいはい、なるほどなるほど」
「さーせん、前任者がやっちまってて」
「私はよくわからんのですよ」
「気づいたらこうなってました」
「あー、たぶん前任者っすね」
「いかんせん国際感覚がないもんで」
「たいわんと呼んでたんだと思います」
「たいわんって国だと思ってたのかな?」
「逆に、国じゃないんでしたっけ?」
「とにかく前任者だと思いますわ」
「アイツぶっとばしときます」
「さーせん、さーせん」
「次回は気をつけます」
「さーせん、さーせん」
「次は絶対やらせませんから」
「さーせん、さーせん」


とにかく選手たちがにこやかで誇らしげなことに何よりホッとします。簡素化ということもあって派手な演出はできておらず、椅子も用意できていないという状況ですが、生涯で何度もはない誉れの時間を楽しんでもらえていれば何よりです。さまざまな衣装、さまざまな振る舞い、さまざまな考え方。こうした多様な世界の間を取って大会を運営するのはとりわけ大変な時期ではありますが、少しずつ協力し合って、いい大会にできればいいなと思います。

↓世界にはいろいろな国がある、それを感じる喜びよ!アルゼンチン、イタリアあたりには密の概念まったくナシ!


↓にしても、ポルトガルはいろいろにもほどがあるwww

そんなに盛り上がる演出をした覚えはコッチとしてはないwww

コロナ禍らしくしとけ頼むからwww



今大会に参加する205の国と地域、その最終盤には2028年のロス大会を開くアメリカ、2024年のパリ大会を開くフランス、そして開催国日本が登場します。日本選手団は八村塁さんと須崎優衣さんを先頭に入場してきました。大きな八村さんが手ぶらで、小さな須崎さんが旗を懸命に持つ姿には「協力せや!」とツッコミましたが、どうやら途中交替制だったようで入れ替わりで旗を掲げていました。選手たちが元気いっぱいに入場してくる姿にホッとして、嬉しくなります。この舞台を目指すこと自体も悩んだ日々だったでしょうが、人生で何度もない機会、楽しんで、最高の瞬間を迎えて欲しいものです。

↓頑張れ、頼むぞ、日本の選手団!


最後はもう一度曲がドラクエに戻って入場完了となり、「より速く、より高く、より強く、共に」というモットーが表示されました。今大会を前に新たに追加された「共に」の部分。連帯の五輪を目指す姿勢の表れです。そういう大会にしたいという意気込みです。そうなるように願い、そうなるように努めたいものだなと思います。

選手・審判団・コーチによる宣誓、寸劇とつづき、さまざまな色や形の箱を動かして今大会のエンブレムを作るという演出を行なった段では、空に大量のドローンが飛来し、夜空にもエンブレムを描き出します。さらにドローンは球体のようになり、やがて地球を描き出します。この五輪、そしてパラリンピックを通じて世界がひとつになるように、ということでしょうか。夜空に浮かぶ地球を見ながら、世界各地域の歌い手が「イマジン」を歌うなんて、何だか閉会式の大団円みたいです!



橋本聖子組織委員会会長、IOCバッハ会長、そして天皇陛下による開会宣言。陛下の開会宣言ではテンプレート通りであれば「祝う」とするところを「記念する」と言い換えての宣言となっていました。困難な今を、ともに乗り越えていくための大会とすべく、「祝う」はあえて控えた。改めて今大会の特別さというものが表れる場面でした。

つづいてはコロナ禍のなかで貢献したアスリート、東京のエッセンシャルワーカーらのリレーによるオリンピック旗の掲揚、そしてオリンピック賛歌の演奏。そして開会式で必ず行なう平和の象徴・鳩の登場は、「翼をください」に乗せてハトの紙飛行機が舞うという演出になりました。つづく盛り上げの時間では、パントマイムによるピクトグラム完全再現が圧巻のデキ。ドローンによる技術力もいいけれど、人間が生でやっている「味わい」というものもまたいい。ピクトグラム発祥の大会・東京らしい、繰り返し見たくなる名場面でした!

↓が〜まるちょばに何かあったら、これは取り替えが効かなかったでしょうね!


劇団ひとりさん、荒川静香さんらが登場してコミカルにカッコよく東京の名所に電源を入れていく映像から、市川海老蔵さんによる歌舞伎の披露、上原ひろみさんによるジャズ演奏がつながるくだりは、リオ大会の閉会式を思い出すような部分でした。会場からも笑い声が漏れており、選手たちにも楽しんでもらえたのではないかと思います。本来なら東京観光で本物の歌舞伎を見ていただくのがよかったのでしょうが、少しでも見せてあげられた、見てもらえたのは嬉しい出来事でした。

そして、最後は聖火の点火へ。各地の映像を振り返りながら、トーチを競技場に運んできたのは、昨年困難のなかで聖火を持ち帰ってきた吉田沙保里さんと野村忠宏さん。それを長嶋茂雄さん・王貞治さん・松井秀喜さんが受け取る場面は、日本的な野球推しでもありつつ、王さんのルーツに多様性を見ることもでき、長嶋さんがアテネ五輪時の困難を乗り越えて五輪の舞台に登場したことや、困難に立ち向かう人を支える松井さんの姿にも意味合いを感じられるものでした。「野球大好き!」ということだけではないだろう、そう思います。

さらに聖火はコロナ禍において社会を支えてくれた医療に携わる人々を代表するように、医師・看護師の二人に託され、パラリンピアンの土田和歌子さんへとリレーされました。さまざまな意味合いをこのリレーのなかでも聖火に重ねていくリレーです。いよいよ見えてくる聖火台。聖火は岩手・宮城・福島の子どもたちにリレーされ、復興五輪としての意義を改めてこの舞台に強く刻みました。

このまま最終点火に向かうというのもあり得たと思いますし、そういう気持ちを持って見守っていましたが、最後にもうひとりランナーが……アスリートが待っていました。多様性と連帯、最後にそれを重ねるように大坂なおみさんがやってきた。大坂さんはテニス界のスーパースターではありつつも、リオ大会には出場しておらず、今大会オリンピアンとなったばかりの「これからオリンピアンになる」という存在です。メダリストが過去を振り返るよりも、未来へ向かうことを意図した、そんな意味合いも感じます。大坂さん自身も苦しい状況のなか、よく来てくれました。さまざまな気持ち、聖火に重ねてもらえるとありがたいなと思います。

大坂さんが向かうのはステージに設置されていた山型の台。この山型は富士山を示すもので、頂上にある球体は太陽でしょうか。ラグビーワールドカップのエンブレムを思い出すデザインです。台が左右に開くと光の階段が現れ、球体は変形して花のように開きました。そこに灯された聖火は、一筋の火柱となって天にのぼります。近年の大会では「とにかく大きく」「とにかく多く」「とにかく光らせる」という華美な聖火が多くありましたが、シンプルで品のある聖火だなと思います。富士山に朝日がかかった、そんな気持ちになります。夜明けの予感がします。

↓聖火が国立競技場に灯った!東京五輪のはじまりです!

「富士山噴火の呪いですね?」とか言わない!

悪意で見れば何でも悪く見えますが、悪意で見る世の中はしんどいですよ!



かつてない困難のなかで簡素化が図られ、過去の大会のゴージャスな祝祭と比べると、静かな式典ではありました。ロンドン大会のお祭り騒ぎや、北京大会の巨大なエネルギーは、この開会式には備えられていませんでした。至らない部分はあったかもしれません。それでも、聖火によって気持ちはあたたまりました。熱はこもりました。はじまる、という気持ちになりました。全員ではないかもしれませんが、僕は、なりました。

世界のアスリートたちも、いよいよ本格的に始まる大会へと気持ちを高めてくれていたらいいなと思います。開会式は自慢のためでも接待のためでも観衆が評論するためでもなく、選手たちに捧げるためのもの。楽しいオマケがあまりない今大会で、少しでも楽しくて盛り上がる思い出にしてもらえたら、開催都市の住人として嬉しく思います。これでようやく、やっと、リレーは「選手」につながりました。どうにかしてこの機会を整えました。どうぞ、どうぞ、どうぞ頑張ってください。生涯最高の瞬間を得られますように!


「どうにかしてできた」ことを意気に感じてもらえていますように!