写真上はホンダ「新型ヴェゼル」、写真下はマツダ「CX-30」(写真:ホンダ/マツダ

ホンダの新型「ヴェゼル」とマツダ「CX-30」。いずれも近年人気が高いコンパクトSUVというジャンルに属し、ホンダマツダ各社のSUVラインナップで主軸となるモデルだ。


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まさにガチンコの競合車種といえる2モデルだが、例えばトップクラスの広い居住性や荷室の高い実用性など、多くの共通点を持つ。一方で、設定するパワートレインについては、ハイブリッド車を中心にしたグレード展開のヴェゼル、ガソリン車とディーゼル車、それにマイルドハイブリッド車といった3タイプを用意するCX-30と、相違点も大きい。また、ヴェゼルのトランスミッションはCVT(無段変速機)のみであるのに対し、CX-30は6速AT(オートマチック・トランスミッション)のほかに、最近のモデルには珍しく6速MT(マニュアル・トランスミッション)も設定する(ディーゼル車を除く)。

今回は、そういったヴェゼルとCX-30の類似点や相違点を浮き彫りにすることで、ライバル2車それぞれの魅力や個性、ターゲットとするユーザー層の微妙な違いなどを検証する。

新型ヴェゼルの外観とランナップ


新型ヴェゼルの外観(写真:ホンダ

2021年4月23日に発売された新型ヴェゼルの外観は、大ヒットした先代モデル(2013年発売)が持つクーペ的フォルムは継承しながらも、イメージを一新している。特に、「インテグレーテッドグリルデザイン」と呼ばれるフロントグリルが特徴的で、よりシャープになったヘッドライト形状と相まって、先代のフェイスデザインから大きな変化を遂げている。また、ボディサイドのラインは、前後に貫かせた水平基調のデザインにしたほか、F1マシンの設計・開発などを行うHRD Sakuraの風洞実験施設でテストを重ねたことで、高い空力性能も追求している。

ラインナップには、1.5Lガソリンエンジンに走行用と充電用の2モーターを組み合わせた独自のハイブリッド機構「e:HEV」搭載車を3グレード設定。先代で5グレードあった1.5Lガソリン車は1グレードのみとし、先述のとおり、ハイブリッド車を中心に据えた。駆動方式は、2WD(FF)のほか、最上級グレード「e:HEVプレイ」を除く全車に4WDも設定する。


マツダ「CX-30」の外観(写真:マツダ

一方のCX-30は、コンパクトハッチバック車「マツダ3」に続く、マツダの新世代ラインナップ第2弾として2019年10月に登場した。先行で2.0Lガソリン車と1.8Lディーゼル車を発売、2020年1月には新世代ガソリンエンジン、2.0Lの「e-SKYACTIV X(イー・スカイアクティブ エックス)」搭載車も追加された。2020年12月には、e-SKYACTIV X搭載車の最高出力を180psから190psへ、ディーゼル車も116psから130psへアップするなどの改良を実施。2021年4月には、e-SKYACTIV X搭載車の排出ガス性能と燃費を改善する改良も施された。なお、駆動方式は、全車に2WD(FF)と4WDを用意する。

外観は、マツダ車の共通デザインテーマである「魂動デザイン」を具現化する洗練されたフォルムを採用。スポーティで都会的な雰囲気に、SUVらしさを融合したスタイルが特徴だ。そのデザインは、国内はじめ海外でも評価が高く、国際的な自動車ジャーナリストが選出する「2020ワールドカーオブザイヤー」で、メルセデス・ベンツやポルシェといった高級車を抑え、同社のマツダ3と並ぶ世界トップ3に選出されている。

なお、両車のボディサイズは、ヴェゼルが全長4330mm×全幅1790mm×全高1580〜1590mm、CX-30は全長4395mm×全幅1795mm×全高1540mm。CX-30のほうが全長で65mm長く、逆に全高はヴェゼルより40〜50mm低い。SUVながら、よりクーペらしい低く長いプロポーションを持つのがCX-30、背の高さでSUVらしさも強調しているのがヴェゼルだといえるだろう。

ヴェゼルとCX-30で内装の違いは?


ヴェゼルのインテリア(写真:ホンダ

ヴェゼルとCX-30の室内は、いずれもシンプルな構成ながら、各メーター類やナビモニターなどをドライバーが運転中に見やすい場所に設置し、各スイッチ類も可能な限り着座位置をずらすことなく手が届く位置へレイアウトしている。

ヴェゼルでは、シートの素材にレザーのような風合いを持ち、汚れなどにも強いプライムスムースとファブリックを組み合わせたコンビシートを上位グレードに設定。他グレードにはファブリック素材を採用する。明るく親しみやすい雰囲気の室内は、フロントピラーを後退させたことで、運転席からの広い前方視界を確保する。また、前出の最上級グレード「e:HEVプレイ」には、前後席のルーフに日差しの熱を低減するLow-Eガラスを採用した「パノラマルーフ」も装備し、全席で味わえる広々とした開放感も演出する。


CX-30のインテリア(写真:マツダ

一方、CX-30の内装は、ひとクラス上のモデルと感じさせるほどの高級感が持ち味だ。ブラックやダークブラウンなどを基調とした室内カラーを採用、シート素材には、上級グレードにスムースレザー、それ以外のグレードには環境に優しい素材として注目されているクロスを使用する。また、運転席には、ドライビングポジションメモリー機能付きの「10Wayパワーシート」を採用、運転者の着座位置を体格や好みに合わせて細かく設定できる。さらに、CX-30にも最上級グレードのLパッケージに「電動スライドガラスサンルーフ」をオプション設定し、上質な室内空間に開放的な雰囲気も醸し出している。

後席・荷室の広さは互角だがヴェゼルにアドバンテージ

ヴェゼルの室内サイズは、長さ2010mm×幅1445mm×高さ1225〜1240mm、CX-30は長さ1830mm×幅1490mm×高さ1210mm。長さや高さはヴェゼル、幅ではCX-30が上回る。

だが、後席の足元スペースは両車ほぼ互角で、いずれもコンパクトSUVモデルとしてはトップクラスのゆったりとした広さを持つ。特にヴェゼルは、車体にホンダ独自の「センタータンクレイアウト」を採用する効果が大きい。燃料タンクを一般的な車体後部ではなく前席の床下に設置する。しかも新型は先代と比べ室内長を80mm伸ばし、後席の足元スペースも35mm拡張した。これらにより、先代でも定評があったトップクラスの広い室内スペースをさらに拡大し、室内サイズ自体が広いCX-30にも引けを取らない、ゆったりとして快適な空間を実現している。


ヴェゼルの荷室(写真:ホンダ

荷室に関してもヴェゼル、CX-30ともに広さはほぼ同等だ。両車ともに後席シートの背もたれを前方に倒せば、フラットな空間となるため、大きな荷物も余裕で積載できる。特にヴェゼルは、前席の背もたれも前に倒すことで、約1900mmの長さになるため、最近人気が高いアウトドアでの車中泊にも対応する。CX-30でも無理をすれば膻になることは可能だが、大人がゆっくりと膻になれるという点ではヴェゼルのほうが上だ。加えて、ヴェゼルの後席シートは、座面を背もたれ側に起こせるため、鉢植えなど膻にできない長尺物も積むことができる。シートアレンジの多様さはヴェゼルに軍配が上がる。


ヴェゼルのハンズフリーアクセスパワーテールゲート(予約クローズ機能付)(写真:ホンダ

なお、ヴェゼルには、ハイブリッド車の上位グレード「e:HEV Z」と「e:HEVプレイ」に、テールゲートが自動で開閉する「ハンズフリーアクセスパワーテールゲート」を標準装備する。スマートキーを持っていれば、リアバンパー下に足をかざすだけでゲートが開き、予約クローズボタンを押せば車両から離れると自動でクローズするハンズフリー機能も装備する。一方のCX-30にも、スマートキーの操作で自動開閉ができる「パワーリフトゲート」を採用。使う人の体格や場所に応じて開度を調整できるなどの機能を持つ。こちらには、ハンズフリー機能がないため、両手に荷物を持っている場合にはヴェゼルのほうが便利だ。だがCX-30は、ガソリン車のエントリーモデル「20S」を除く全車に標準装備するため、より幅広いグレードで機能を享受することができる。

もっとも違いが表れているのがパワートレイン

ヴェゼルとCX-30の個性がもっともわかりやすく出るのが、先述したとおり、搭載するパワートレインだ。特にヴェゼルでは、独自のシステムe:HEVを採用したハイブリッド車、CX-30では新世代ガソリンエンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせたe-SKYACTIV Xの各システムに特徴がある。


ヴェゼルのe:HEVシステム配置説明図(写真:ホンダ

ヴェゼルのe:HEV搭載車は、走行シーンに応じてモーター走行とエンジン走行をスムーズに切り替えるシステムだ。発進時や市街地ではモーターのみで走行する「EVモード」を使用。登坂時や加速時などの高負荷走行時やバッテリー残量が少ないときには、エンジンの力で発電、必要に応じてバッテリーからの電力も使いながら走行用モーターへより大きな電力を供給する「ハイブリッドモード」に切り替わる。高速道路を巡航するなど、よりエンジンが得意とする状況下では、エンジンのみで走行する「エンジンモード」も用意する。

また新型ヴェゼルは、先代のハイブリッド車から進化させた各種の電子制御システムにより、ドライバーが運転する楽しさや快適性も追求する。通常の「Dレンジ」に加え、より減速フィールが増す「Bレンジ」を採用するほか、4段階で減速度を選べる「減速セレクター」も設定。さらに、一般道をスムーズに走るための「ノーマル」、高速道路でのクルーズに最適な「ECON(イーコン)」、ワインディングを楽しめる「スポーツ」といった3つの走行モードも用意する。加えて、4WD車に採用された独自の「リアルタイムAWD」は、特にe:HEVとの組み合わせでより効果を発揮。走行用モーターの大トルクを、素早く最適な駆動力配分とすることで、悪路や雪道、悪天候時など、さまざまな路面環境で安定感のある走りを実現している。


CX-30のSKYACTIV Xエンジン(写真:マツダ

一方、CX-30のe-SKYACTIV Xは、独自の燃焼制御技術「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」を採用した、マツダの新世代ガソリンエンジンだ。ディーゼル車のような力強いトルクと、ガソリン車特有の高回転までスムーズにまわる爽快感を両立し、マツダが標榜する「ドライブする楽しさ」を追求している。さらに、このエンジンには、マイルドハイブリッドシステム「M HYBRID(エム・ハイブリッド)」も搭載し、燃費性能の向上も実現する。

ヴェゼルのe:HEV搭載車との大きな違いは、CX-30のe-SKYACTIV X搭載車は、つねにエンジンが走行の主体となることだ。モーターは発進や加速時など、エンジンに大きな負荷がかかるときにパワーをアシストする。また、アイドリングストップからの再始動時にもモーターを使用するなど、ガソリンエンジンで特に燃費が悪くなる状況下で効果を発揮する。

CX-30はATに加え、6速MTも設定

また、CX-30には、これも先述したように、6速ATのほかに、ディーゼル車を除く全車に6速MT仕様も用意する。近年、自動車の多くはAT仕様もしくはCVT仕様で、どちらも基本的にはアクセルとブレーキの2ペダル式である。ただし、昔からの「クルマ好き」には、アクセル、ブレーキ、クラッチの3ペダルを使うMT仕様を好むユーザーも少数派ながら存在する。理由は「自らが自在に操る感覚」を味わい、より運転を楽しみたいからだ。人気が高いコンパクトSUVに、あえてMT仕様を設定している点も、運転好きや自動車愛好家などに支持者が多いマツダの大きな特徴でもある。AT仕様でマスを狙いつつも、たとえマイノリティであってもMT仕様にこだわるユーザーの要望にも応えている。


CX-30には、ATのほか、MT仕様も設定(写真:マツダ

なお、CX-30の6速AT車には、ステアリング奧にパドルシフトも用意し、クラッチ操作こそないが、任意のシフトチェンジを可能にしている。ヴェゼルは、主にシステムの関与を前提としながら運転の楽しさを演出するのに対し、CX-30はAT仕様とMT仕様の両方で、あくまで人(ドライバー)の操作を主体にした設定になっていることも特徴だ。


ヴェゼルのe:HEV×リアルタイムAWDのシャーシイメージ図(写真:ホンダ

ちなみにCX-30もヴェゼルと同様に、4WD車の悪路走行性能が充実している。全グレードに、4輪へ状況に応じて適切な駆動力を分配する独自の「オフロード・トラクション・アシスト」を装備、悪路や滑りやすい路面などでの走行に対応する。この機構により、例えば、凹凸がある未舗装路でタイヤがスタックした際も、4輪駆動機構「i-アクティブAWD」と協調しながらタイヤの空転を抑制し、安全に脱出することを可能とする。

燃費性能に関しては、WLTCモード総合で、ヴェゼルのハイブリッド車が22.0〜25.0km/L、1.5Lガソリン車が15.6〜17.0km/L。CX-30は、同じくWLTCモード総合で、マイルドハイブリッドのe-SKYACTIV X搭載車が16.5〜18.2km/L、2.0Lガソリン車が14.8〜16.2km/L、1.8Lディーゼル車が18.4〜19.2km/L。燃費については、全体的にヴェゼルのほうが高い数値となっている。

安全装備の差は少ない

安全装備についても、両車ともに充実しているといえるだろう。ヴェゼルは独自の「ホンダセンシング」を全車に標準装備する。新型では、広角カメラと高速画像処理チップの採用、前後に4つのソナーセンサーを搭載することで、先代モデル以上に機能を進化させている。後方誤発進抑制機能や近距離衝突軽減ブレーキ、オートハイビームなどを新たに追加。高速道路で先行車との車間距離を保ちながら追従走行するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)には、渋滞追従機能も付与されている。

CX-30にも衝突被害軽減ブレーキやペダルの踏み間違い事故防止機能、危険回避ステアリングアシストなど、先進の運転支援システムが採用されている。ACCであるマツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)も、全車速追従機能付きのため、ヴェゼルと同様に渋滞時にも対応する。加えてCX-30には、「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」を全車に標準装備する。運転者前方のフロントガラスに速度や道路標識などを表示する、いわゆるヘッドアップディスプレイと呼ばれる機能で、運転中にメーターに視線を移す必要がないため、わき見運転などの防止に繫がる機能だ。ホンダ車でも、高級セダンの「アコード」には採用されているものの、コスト面の問題からか、ヴェゼルは新型でも不採用のままである。


CX-30のリアビュー(写真:マツダ

近年、ユーザーがスマートフォンを使い、さまざまな車両操作などが行えることで、大きな注目を受けている先進のコネクテッド・サービスについても、両車ともに採用している。いずれもナビモニターが「アップル・カープレイ」や「アンドロイド・オート」に対応するため、スマートフォンと連携させ、アプリや音楽、動画などを車内で楽しむことができる。また、ヴェゼルでは、新型になってナビの地図情報を自動更新する機能が追加されたが、CX-30にも同様の機能を備える。

ほかにも、スマートフォンで離れた場所からドアの施錠などができるリモート操作や、車両の駐車位置を探す機能、事故や出先で急病になった場合の緊急通報など、いずれも両車ともに充実したサービスを提供する。

なお、ヴェゼルでは、専用の「ホンダコネクト・ディスプレー」か純正アクセサリーの「Gathers(Honda CONNECT対応)ナビゲーション」を選び、Honda Total Careプレミアムに契約する必要がある(それぞれ利用できる機能が違う)。利用料金は、新車・中古車問わず初回申込から12カ月は無料で、以降は基本パックが月額550円だ。

一方、CX-30は、車載通信機を全車に標準設定するため、全グレードで利用が可能。こちらも、マツダコネクティッドサービスへの契約が必要だが、購入車両の初度登録日より3年間は無償。4年目以降の料金は未定だが(2021年5月中旬現在)、マツダの販売店に聞いたところ、「月々800円程度になるのではないか」とのことだ。

気になる価格の違いは?


ヴェゼルのリアビュー(写真:ホンダ

ヴェゼルの価格(税込)は、ハイブリッドのe:HEV搭載車が265万8700円〜329万8900円、ガソリン車のGが227万9200円〜249万9200円だ。売れ行きは好調のようで、受注予約を開始した3月からの2カ月で約2万9500台を受注。4月23日の発売ながら、2021年4月の新車販売台数ランキングでは13位(3716台・前年同月比157.7%)にランクイン。先代モデルの販売台数との合計とはいえ、同年3月の42位(1789台)から大きくジャンプアップを果たしている。

ただし、半導体不足の影響などで、納期が遅れているのがやっかいだ。ホンダによれば「5月中旬の契約で、最もオーダーが多い『e:HEV Z』で5カ月待ち、最上級の『e:HEVプレイ』に至ってはほぼ1年待ち」だと言う。他グレードは3〜4カ月待ちと比較的短いが、一番の売れ筋やモデルの顔である最上位グレードの生産が遅れているのは、ホンダとってかなり頭が痛いだろう。


CX-30のサイドスタイル(写真:マツダ

一方、CX-30の価格(税込)は、e-SKYACTIV X搭載車が329万4500円〜371万3600円、2.0LガソリンのSKYACTIV-G 2.0搭載車が239万2500円〜303万500円、1.8ディーゼルのSKYACTIV-D 1.8搭載車が288万7500円〜330万5500円だ。

CX-30は、CX-5やCX-8、CX-3、MX-30といったマツダSUVラインナップ中で、2020年にもっとも売れたモデルといえる。年間(1〜12月)新車販売台数ランキングで27位(2万7006台)となり、コンパクトハッチバック車「マツダ2」の25位(2万8368台)に次ぐ売り上げを記録した。

だが、2021年に入ると1月21位(2584台)、2月31位(2017台)、3月27位(3895台)、4月40位(923台)と大きく後退している。これはヴェゼルが発売された影響なのかは定かではない。6月には1376台で28位へ再浮上し復活の兆しはあるし、販売店によっては、ヴェゼルと比較してCX-30を購入する顧客もいるという。

納車の早さではCX-30が有利


CX-30のスタイリング(写真:マツダ

あるマツダ販売店によれば、「CX-30は受注から3カ月程度で納車できることもあり、元々ホンダ車に乗っているお客様が、ヴェゼルと比較したうえでご成約いただくケースもあります」という。その販売店では、現在、CX-30でもっとも売れているのは2.0Lガソリン車「20S」で、中でも最上級グレード「Lパッケージ」に人気が集まっているそうだ。

主な理由は、「価格がリーズナブルな点と、(Lパッケージに)設定されているホワイトのスムースレザーシートの高級感が高い」こと。確かにハイブリッド車にこだわらなければ、内装などの高い質感を持つモデルを比較的安価に購入できるメリットは、ユーザーにとっても大きいだろう。

上記はあくまで一例だが、新型ヴェゼルは発売当初から高い人気を誇りつつも、納期の問題がネックになる可能性はある。ユーザーの購買熱が冷めてしまい、他社の競合モデルに流れるからだ。

そう考えると、ここのところ売り上げで苦戦しているCX-30だが、まだまだ挽回の余地はあるだろう。先述のように、6速MT仕様などマツダならではのラインナップを持つことは、CX-30の大きな強みだ。また、内装など装備の充実度は高く、商品性では決してライバルに負けてはいない。

トヨタでも5月18日に部品不足により、国内工場における6月の生産調整を発表。コンパクトSUVでは「ヤリスクロス」が計8日間の生産停止となった。トヨタ販売店によれば、「(4月末のオーダーで)納期が半年以上」だったうえに、急な生産停止となれば納期がさらに遅れる可能性も高い。コンパクトSUV市場における熾烈なシェア争いは、まだまだ続きそうだ。