ホンダ新型「ヴェゼル」が早くもヒット! 質感も走りもお値段以上にレベルアップ!

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内外装がスタイリッシュに進化した新型ヴェゼル

 事前受注開始から2か月で3万2000台(2021年5月24日現在)の累計受注となるなど、ホンダ久々の会心のヒット作となった新型「ヴェゼル」。いま注文してもグレードによっては納車がかなり先になってしまうようです。

 現在、急ピッチで生産・納車がおこなわれているようですが、このクラスはライバルも多いため「慎重に検討してから」という人も多いと思います。

早くもヒット作となったホンダ新型「ヴェゼル」

【画像】ホンダ「ヴェゼル」のデザイン激変! カスタム仕様もカッコイイ!(39枚)

 エクステリアは「よりクーペライク」「よりスタイリッシュ」「より優しい」に進化。一目でヴェゼルだとわかるスタイルながらも、初代モデルと並べて見ると意外と共通項はありません。

 伸びやかかつワイド&ローが強調されたことからボディサイズが拡大されたように見えますが、じつは全長4330mm(±0mm)×全幅1790mm(+20mm)×全高1590mm(−15mm)と初代モデルとほとんど同じです。

 グレードによっては17/18インチ仕様がありますが、ボディとのバランスの良さは18インチの圧勝。ホイールのデザインもホンダ純正にしては攻めています。

 インテリアは機能性を重視した水平基調のシンプルで伸びやかなデザインが特徴。それに加えて、柔らかな触感の素材やメッキ/ピアノブラックなどの加飾のバランスや、ホンダ車がもっとも苦手としていたスイッチの触感/操作感の統一など、細部まで調和が取れたクオリティも相まって、「おっ、値段以上」と感じました。

 ただ、勿体ないのはほかのモデルと共通の事務的なメーター周り。せめて新型「フィット」のようなデザインならばと思ってしまったのも事実です。

 筆者(山本シンヤ)の個人的な“ツボ”は左右の空調レジスターの横にダイヤルと共に配置される「そよ風アウトレット」。

 サーキュレーターのような効果を持ち、エアコンの風が直接当たると寒すぎたり暑すぎるといった悩みを解消するもので、スイング機能以来の空調界のナイスアイデアです。

 内装色は黒基調が基本ですが、個人的には最上級グレード「PLaY」にのみ設定される「グレージュ」はホンダらしくないセンスの良さ。これだけでもこのグレードを選ぶのもアリかなと思いました。

 新型ヴェゼルの走りはどうでしょうか。まずはもっとも売れ筋の「e:HEV」(ハイブリッド)のFFモデルに試乗です。

 パワートレインの基本構成はフィットと同じですが、重量増や車両のキャラクターに合わせて1.5リッターエンジンの高出力化(72kWから78kW)、電動式CVTのローレシオ化、バッテリーの出力アップ(80kWから96kW)のためにセル数アップ(48から60)などがおこなわれています。

 日常域であればドライブモード「ノーマル」はもちろん、もっとも穏やかな特性の「ECON」でも十分以上の実力です。

 静粛性の高さと振動の少なさもポイントのひとつで、こちらも日常域ならばEV走行からエンジン始動はほぼわからないレベル。エンジン音も体感的には遠くで回っているイメージでほぼ気になりません。

 ただ、ワインディングや高速道路の交流などアクセルをグッと踏み込むシーンでは、「もう少し余裕が欲しいな」と感じたのも事実。

 エンジン音もかなり高まるので定常走行とのギャップは気にならないといえば嘘になりますが、スムーズかつ雑味の無い音質は4気筒のメリットが活かされており、不快には感じませんでした。

 プラットフォームは初代モデルの進化版ですが、車体はサスペンション取り付け点の剛性性アップや剛性バランス、力の流れ方の見直し、ステアリングは剛性アップ、サスペンションは横力キャンセルスプリングや低フリクションダンパー、リアサスの液封コンプラブッシュの採用など、変更点は多岐に渡ります。

 そんな新型ヴェゼルの走りは、初代のネガティブな部分を解消するだけでなく、ワンランク上の走りを実現しています。

 具体的には操作に対して忠実な反応、コーナリングの一連の動作の連続性、動かす所は動かし抑える所は抑えるボディコントロール、4つのタイヤを上手に使ったコーナリング姿勢、抜群の直進安定性など、走りにおける基本的な部分の純度が高められました。

 つまり、インパクトよりも本質が高められたハンドリングに仕上がっていますが、本質を追求するがあまり牙まで抜かれてしまったフィットとは違い、新型ヴェゼルは初代モデルの軽快でキビキビした良さを残したままです。筆者はそれこそが、現代における「ホンダらしい走り」だと思っています。

 それに加えて、快適性も大きくレベルアップしています。それも単純に「乗り心地が良い」だけではなく、すべての領域でスムーズかつ雑味の無い足の動きや凹凸を乗り越えた際のショックの吸収のさせ方や時間、アタリのまろやかさなど、数値に表れにくい動的質感も高いレベルに仕上がっています。

 とくにリアシートに関しては「初代モデルは一体何だったのか?」と思ってしまうくらいの伸び代です。

新型ヴェゼルのガソリン車はダークホース的存在!?

 新型ヴェゼルの4WDはどうでしょうか。他社のハイブリッドモデルの4WDは独立したモーターを持つ電動式が多いなか、ホンダはプロペラシャフトを用いた機械式にこだわっています。

 クラストップのリア駆動力と見た目よりも高めの最低地上高さを活かした悪路走破性はもちろん、アジャイルハンドリングアシストやスタビリティと軽快感をバランスさせる最適駆動力配分などにより、オンロードではFFよりも前後バランスが良い印象。鉄壁の安定感と4輪をさらに上手に使うことによる抜群のライントレース性能には驚かされました。

新型「ヴェゼル」

 4WDはFFよりも70kgから80kg重いため、発進時やワインディングなどで力不足を感じるシーンがないわけではありませんが、オンロードでも積極的に選んでもいいと思います。ひとつ残念なのは、この走りの良さがまったく伝わらない「リアルタイム4WD」というネーミングでしょうか。

 新型ヴェゼルは現在9割近くのユーザーがe:HEVを選択していますが、1グレードのみの展開するガソリン車は単なる廉価仕様ではなくダークホース的存在の逸品でした。

 1.5リッターエンジンは必要十分な動力性能ながらも、レッドゾーンまでスムーズに回るピュアなエンジン特性と巧みな制御でいい意味でCVTらしくないCVTとの組み合わせで絶妙のバランスを生んでいます。

 パドルシフトは未装着ですが「ブレーキ操作ステップダウンシフト制御付き」で、減速時はシフトダウン、コーナリング中は横G検知でエンジン回転をキープすることが可能。制御の緻密さを含めて「これならパドルいらず」と思う仕上がりでした。

 シャシ系はe:HEVより100kg近く軽量な車両重量とハイトの高い16インチタイヤの組み合わせにより、クロスオーバーSUVを感じさせない軽やかな身のこなしとスッキリした足さばきなどから、「シビック」よりもシビックらしい乗り味に感じたくらいです。

 ただ、現状のガソリン車は装備が乏しいので、装備を充実させたグレードもしくは特別仕様車などが用意されると選びやすくなると思いました。

 ちなみにガソリン車にも4WDが設定されていますが、走りの部分では安定性の高さやバンドリングバランスの良さを感じるものの、FFと比べて100kgの重量増で非力さが否めないパワートレイン、軽快さが削がれたクルマの動きなど、「e:HEV×4WD」ほど積極的に選びたくなるかというと少々悩ましいところです。

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 大成功したモデルのフルモデルチェンジは非常に難しいです。ここ最近のホンダ車を振り返ると「熟成方向」「キープコンセプト」のモデルが多いように感じましたが、新型ヴェゼルは半分キープコンセプト、半分コンセプトチェンジのように感じました。

 開発責任者の岡部宏二郎氏は初代ヴェゼルの開発を担当、その後のマイナーチェンジを担当してきた「Mr.ヴェゼル」といってもいい方です。

 初代の良し悪しを知っているからこそ、「継承と刷新」のバランスが取れたフルモデルチェンジができたのでしょう。そう、新型ヴェゼルには2代目のジンクスはなさそうです。