by Mike Seyfang

政治に特化したアメリカのニュースメディア・POLITICOが2021年4月30日に、「Amazonの社員4700人が機密扱いとされているサードパーティ業者の販売データに不正アクセスし、同社の幹部もそれを認識していた」ことを示す内部的な文書を入手したと報じました。

Amazon knew seller data was used to boost company sales - POLITICO

https://www.politico.eu/article/amazon-seller-data-company-sales/

POLITICOが入手した2015年付けの内部監査報告書によると、自社製品のセールスに携わるAmazon社員のうち4700人が、サードパーティー業者の販売データに不正アクセスしていたとのこと。報告書には、2010年にまとめられた前回の内部監査報告書でも同様の問題が指摘されていたと書かれていることから、この問題は少なくとも5年間以上にわたって続いており、Amazonの上層部はそれを把握していたことになります。

Amazonは、以前から「マーケットプレイスの販売データを製品開発に使っている」と非難されていたほか、2020年にアメリカ連邦議会が開催した公聴会でジェフ・ベゾスCEOは「(販売データの利用を禁じる)自社ポリシーに違反したことがないと保証することはできない」と発言していました。そのため、POLITICOは「なぜベゾスCEOが歯に物が挟まったような言い方をしたのかが、この内部文書で明らかになりました」と指摘しました。

Amazonのジェフ・ベゾスCEOが「ポリシーに違反したことがないと保証することはできない」と語る - GIGAZINE



2010年の報告書では、Amazon内部の権限が適切に制限されていなかったため、権限のない社員が販売データの閲覧や編集をすることが可能だったと報告されています。また、今回POLITICOが入手した2015年の報告書により、ベンダーマネージャーの1人が業者の在庫を不正に確認し、ショッピングカートボックス(商品名の下に出品者名が表示されること)の操作を行っていたことも分かりました。

Amazon内部で「なりすましアクセス」と呼ばれているこの手口は、中国を含む世界中のAmazon社員が使える状態になっていたとのこと。匿名を条件にPOLITICOに証言を寄せたAmazonの元社員は、「仕事熱心な社員が、本来は持っていてはいけないデータを取得できるシステムが、Amazonにはありました」と語りました。

Amazonのような大企業による市場独占が問題視されているアメリカでは、前述の公聴会が2020年7月に開かれ、反トラスト小委員会がAmazonに対する調査を進めているほか、11月にはEUの欧州委員会がAmazonを独占禁止法違反で提訴しました。また、日本の公正取引委員会も欧米と足並みをそろえる姿勢を打ち出しています。

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