プロに教わる季節の手しごと。グレープフルーツマーマレードの作り方【ジャムレシピ #1】

教えてくれる人

お菓子研究家 / 飯田順子さん
パティシエによる講習会や本場フランスの専門校での経験を活かし、1998年から料理教室をスタート。フランス菓子の豊富な知識を学べるレッスンが好評を呼び、現在の生徒数は350人にも及ぶ。テレビ出演や著書も多数あり、ジャムレシピ本は3冊出版。2017年には栃木県大田原市のふるさと大使に任命され、地元食材の周知にも力を入れている。

旬のグレープフルーツでジャムを作ってみよう

1年を通してスーパーで見かけるグレープフルーツですが、実のところ旬は4~5月。もっともおいしい時期には、そのまま食べるだけでなくいろいろな方法で旬を味わうのも楽しいですよね。

そこでおすすめしたいのが、皮ごと使うマーマレードジャム!飯田さん曰く、コツさえつかめば失敗しらずなのだそう。実際にグレープフルーツマーマレードの作り方を教えていただきました。

「グレープフルーツマーマレード」作り方

用意するもの

グレープフルーツマーマレード 400ml分
・グレープフルーツ……1個(約300g)
・グラニュー糖……180g(砂糖でも代用可能)
・レモン汁……小さじ1杯

グレープフルーツの総量のうち、60~65%ほどのグラニュー糖を用意しましょう。グレープフルーツは芯の部分が茶色くなっていないものを選ぶと、鮮度や味のバランスがよいそうです。

作り方

1. 皮を塩で擦りワックスを取る

飯田さん:
「皮ごと使う場合、気になるのが農薬や防腐剤が含まれたワックス。市販されているグレープフルーツは海外産が多いので、必ずワックスを洗い流すようにしましょう。

ワックスを取る方法は、塩をまぶして擦るだけ!あら塩を使うのがおすすめです。重曹を溶かした水にひと晩浸けるという方法でも大丈夫ですよ」

2. 皮をカットしていく

飯田さん:
「次に皮をカットしていきます。グレープフルーツはほかの柑橘類に比べて、白いワタ部分が分厚いのが特徴。このワタには栄養素がたっぷり含まれていますが、苦み成分も多いんです。

白い部分を残しすぎてしまうとマーマレードジャムの苦みが強くなるため、この段階である程度取り除きます」

3. 皮のワタを取り除き千切りする

飯田さん:
「皮についているワタもなるべく取り除きしましょう。ただ、グレープフルーツ特有のほろ苦さもおいしさのひとつなので、白い部分が若干残っても大丈夫ですよ」

飯田さん:
「のちほど苦味を取るために皮をゆでこぼす作業がありますが、その前に千切りにするのがポイント。細かくカットすると断面積が増え、ゆがいたときにより苦味が取れやすくなります」

4. 果肉をカットする

飯田さん:
「果肉は芯と種を取り除き細かくカットします。ここでポイントとなるのが、房は取り除かないこと!ジャム作りに欠かせないペクチンは皮や房、種に多く含まれます。

果肉だけでジャムを作ろうとすると固まりにくくサラサラになってしまうので、必ず房ごと刻みましょう」

5. 皮を3回ほどゆでこぼす

飯田さん:
「次に皮の苦味を緩和させるゆでこぼしをおこないます。この下処理によって皮もやわらかくなるので一石二鳥です!

鍋にグレープフルーツの皮を入れたら、十分に浸るように水を入れて加熱します。沸騰したらザルにあげて、ゆで汁は捨ててくださいね。この作業を3回繰り返すと苦みがやわらいで、ちょうどよいほろ苦さになるんです」

6. 調味料を加えて煮る

飯田さん:
「グレープフルーツの果肉と皮、グラニュー糖、レモン汁を鍋へ。まだ火にかけず、この状態で水気が出るまで混ぜ合わせます。

しっとりと馴染んできたら強火にしましょう。次にあくを取る作業がありますが、火力が弱いとあくが出てきません。グラニュー糖が多く入っているので、焦げないようかき混ぜながら様子を見てくださいね」

7. あくを取りながら煮詰める

飯田さん:
「煮立って、白っぽいあくが出てきたら中火に。あくはそのままにしておくと完成したときに白く残ってしまうので、おたまである程度取り除きましょう」

飯田さん:
「冷えるとジャムは固くなるため、少し緩いくらいで火を止めて大丈夫です。手作りジャムで大切なのは火を止めるタイミング。好みにもよりますが、だいたい15~20分ほど煮詰めるとちょうどよいとろみになります。

心配な方は小皿にジャムを垂らして冷蔵庫に入れると、粘度がすぐに確認できますよ!」

グレープフルーツマーマレードの完成

火を止めて瓶に詰めたら完成!むずかしいイメージのあったマーマレードジャムですが、コツを知れば意外と簡単に作れることがわかりました。

グレープフルーツルビーで作るのもおすすめ

飯田さん:
「赤い果肉のルビーでも作り方は同じです。通常のグレープフルーツよりオレンジっぽい仕上がりになりますよ。風味は変わりませんが、ルビーのほうが若干甘みが強いんです。2種類を混ぜて作るのもいいかもしれません♪ 」

長持ちする保管方法

飯田さん:
「長期保管をしたい場合、ジャム瓶は殺菌したものを使用してください。

ジャムが完成したら、温かいうちに瓶の口いっぱいまで入れるのがポイント。空気が入ると雑菌が繁殖しやすくなるんです。瓶のすりきりまでジャムを入れたら、密封するようなイメージでふたをしっかり閉めましょう」

飯田さん:
「ふたを閉めて逆さまにするとジャムの熱で瓶の口まで除菌できます。保管状況にもよりますが、未開封で約1年ほど保管が可能です。開封後は1週間から10日で食べきるようにしてくださいね。

10日じゃ使い切れないと思われるかもしれませんが、ジャムは意外と活用幅が広い食品。調味料としても使えますよ」

旬のおいしさが詰まったジャムは料理でも活躍

これぞプロの手てしごと。グレープフルーツの正しい下処理、火を止めるタイミングなど詳しい作り方を教えていただきました。

せっかく作るのなら、無駄なくおいしく食べきりたいですよね。そこで次回は、グレープフルーツマーマレードの味や特性を活かしたアイデアレシピを飯田さんに伺います。どうぞお楽しみに。

取材・文/大瀧亜友美(macaroniライター)
写真/實重かおり(macaroni編集部)