今やワープロソフトといえばマイクロソフト社の「Word」が一般的だが、かつて国内では「一太郎」を使う人も多かった。現在でも一部の省庁や企業で使われているというが、ほとんど見かけなくなっている。

そうした中、農林水産省が相次ぐ法案ミスを受けて、一太郎を原則として省内で使用しないよう通知を出したと報じられた。

FNNが3月30日に報じたところによると、一太郎は互換性の問題から法案の条文ミスを招くだけでなく、民間企業とファイルをやりとりする際にし不便だという理由で「事実上の一太郎使用禁止令」が出たという。しかし、農水省広報担当者は「法案ミスを受けての通知ではありません」と説明する。

2017年にも"一太郎禁止"を通知していた

一太郎はジャストシステムが販売する国産の日本語ワープロソフトだ。しかし、同ソフトで作成したファイルはWindows以外のOSでは読み取ることが出来ず、互換性のあるフリーソフトもない。同担当者は、

「以前から民間企業や地方公共団体など外部の人より『一太郎で送られると困る。Wordを使用してほしい』といった声が寄せられていました。2017年にも省内で『極力Wordを使用して』と通知したのですが、同じ内容を改めて今月25日に通知しました」

と話す。2017年の通知以降、省内でWordの使用者が増加し、いまや多数派となっている。「一太郎はなじみのある人が主に法令文書作成などで使っていますが、指定ソフトではないので、Wordで作成しても大丈夫です。省外ではそちらを使う人のほうが多いですしね」と同担当者は語る。

また、一太郎の使用が法案ミスにつながるという指摘については、「それはまた別の話です。『法案ミスを受けて』と報じられるのは想定していませんでした」とコメントした。

現在でも使っているのは50〜60代?

ITジャーナリストの井上トシユキさんは、「1990年代には一大シェアを築いた一太郎ですが、現在も使用している職場は少ないです。しかし、一太郎の形式で作成された書類があるため、ずっと使い続けている職場はあるかもしれません」と話す。

「使っているのは主に50〜60代です。昔からの利用者が多く、日本語の文章を感覚的に作成できるため、便利だという人もいますね。でも、若い人は触ったことがないという人が多いです」

新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入する企業が増えている。以前は対面やFAXで書類の受け渡しができたが、テレワークが進む中、自身の環境では開けないファイルが送られてくると業務に支障が生じかねない。誰もが閲覧可能な形式でファイルを送るに越したことはないといえるだろう。