写真は、プリウスα“ツーリングセレクション”(7人乗り)。2017年11月の一部改良で衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」を全車標準装備としたほか、外板色の追加や特別仕様車も設定された(写真:トヨタ自動車

2011年に期待とともに誕生した「プリウスα」が、モデルチェンジを待たず2021年3月に生産を終了することが明らかになった。プリウスαは、前型プリウス(3代目)を基に、ワゴン的に荷室容量を備えたハイブリッド車(HV)として登場し、4ドアハッチバックでは荷室容量が足りないと感じてきた消費者に朗報となった。

しかし、「プリウス」が2015年にフルモデルチェンジをして4代目となり、その翌年に同じTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)プラットフォームを使うSUV(スポーツ多目的車)の「C-HR」が誕生したが、プリウスαはそのまま生産を続け、販売台数も低下して、生産そのものを終えるに至ったのである。

SUV好調の陰で消えゆくトヨタの人気車種

昨今のトヨタは、TNGAの効果を活かし、SUVの充実に努めている。実際、C-HRにしても、あるいは「カムリ」を基にした「RAV4」や「ハリアー」にしても、11月の販売台数を見るとハリアーが9897台で4位、RAV4が5329台で12位、C-HRが2222台で24位である。C-HRがやや少なめとはいえ、4年も売り続けてきたSUVなので、消費者にはすでにかなりの台数が行き渡ったということだろう。


プリウスαとともに生産終了が発表された「ポルテ」「スペイド」「プレミオ」「アリオン」。2020年12月、ひっそりと5車種の生産終了が伝えられた(写真:トヨタ自動車)

トヨタのSUVの販売動向を知れば、それ以外の車種を売るゆとりがないとさえいえそうだが、11月の上位7位まではすべてトヨタ車で、8〜9位とホンダ車だが、その後13位まで再びトヨタ車の名前が並ぶのである。コロナ禍に翻弄された2020年だが、まさにトヨタ独り勝ちの市場が販売順位から窺える。

これほど新車販売が好調であれば、台数の落ち込んだ車種の整理は当然行われるということだろう。ポルテ/スペイドに続いて、プレミオ/アリオンとともにプリウスαも生産を終える決断が下されたのである。

しかし、本当にそれでいいのだろうか。私は、SUVの人気は今が頂点にあり、そろそろ落ち着きを見せるのではないかと考えている。理由は、SUVは存在が目立って所有する満足をはた目にも実感しやすいが、じつは乗りにくいクルマでもある。座席位置が高い、荷室床が高い、それらによって乗り降りがしにくく、重い荷物は載せにくいのである。そのような車種を、何年も、何世代も乗り継ぐだろうか?

かつて、RV(レクリエーショナル・ヴィークル)とか、クロカン四駆(クロスカントリー用四輪駆動)などと呼ばれた、アメリカ・ジープやトヨタ・ランドクルーザー、三菱パジェロなどは、一部の消費者には好まれたが、車体の大きさなども含め誰もが選ぶ車種ではなかった。


普段使いからレジャーまで楽しめる5ナンバーSUVとして人気を博しているライズ(写真:トヨタ自動車)

しかし、今のSUVは、5ナンバーのトヨタ「ライズ」やダイハツ「ロッキー」はもちろん、軽自動車のスズキ「ハスラー」、ダイハツ「タフト」などに至るまで、誰もが欲しがるクルマとなった。各社ともに人気のSUVを充実させ、バリエーションを増やすことで車体の大きさといったデメリットを払拭している。

それでもいざ使ってみれば、上記のような不便もある。一度試してみたいという消費者の欲求が満たされれば、次はより使い勝手のいい車種に目が移るだろう。そうすれば、再び4ドアセダンやステーションワゴンという選択肢が求められるのではないかと思うのである。

高齢社会に求められるセダンやステーションワゴン

今日の4ドアセダンは、大人4人が快適に乗れ、荷室にもそれ相応の荷物を十分に載せられる。なおかつ、後席背もたれを前方へ倒す機能を利用すれば、長いものも載せられる。さらにステーションワゴンであれば、より容易に荷物の出し入れができる。

同時にまた、4ドアセダンやステーションワゴンは座席位置が低いので、乗り降りが楽だ。体の動きが硬くなったり、足腰に力が入りにくくなったりした高齢者にも、乗降しやすい車種である。これからさらに高齢社会が進展するとされる現在、SUVに乗り降りできる高齢者は少なくなっていくだろう。

その点で、プリウスαは基になったプリウスより8cmほど車高が高く、あまりかがまなくても乗り降りしやすい車体だ。それでいて、ワゴン的なクルマだから座席位置は低い。また屋根が高いぶん、荷室への荷物の出し入れも頭をぶつける心配が減り、便利であるはずだ。つまり、発売当時はもちろんのこと、これから先も改めて使い勝手が見直される可能性の高いつくりである。


5人乗りと7人乗りの設定があり、大人数の移動はもちろん、大きな荷物も積みやすい車室が魅力のプリウスα。それでいてSUVのように車高も高くないステーションワゴンは、乗り降りや荷物の積み下ろしもしやすい(写真:トヨタ自動車)

2011年の発売当時、5人乗りはニッケル水素バッテリー仕様で、3列座席の7人乗りはリチウムイオンバッテリーを採用した。リチウムイオンを選択したことによりバッテリー寸法を小型化しながら、車両重量の増加に対して十分な出力を得られるようにしていた。

トヨタ車の中では、リチウムイオンバッテリーの経験をより永く持つ車種でもある。その知見を活かし、プラグインハイブリッド車(PHEV/トヨタはPHVと呼ぶ)へ進化させれば、近年の自然災害の甚大化においても電力供給能力を備えたワゴン車として、活躍できる場面が増えてくる可能性がある。


次世代環境車としてEV走行距離を従来比2倍以上の68.2kmに延ばし、2017年2月にフルモデルチェンジしたプリウスPHV(写真:トヨタ自動車)

現行のプリウスPHVは、前型に比べ大きく性能を進化させた。それをプリウスαで実現すれば、商品性は高まったのではないだろうか。もちろん、モデルチェンジをしてTNGAを採用すれば、あらゆる意味で優れた性能のPHVとなったであろう。現行プリウスPHV発売の折、内山田竹志会長は、「HVの次はPHVだ」と期待を語ったが、プリウスPHVのあとはようやくRAV4PHVを加えたのみで、それも生産台数が追い付かず受注を中断するありさまだ。プリウスαでPHVを実現していれば、消費者のPHVに対する期待をより実感できていたのではないか。

HVの成功で後手にまわるトヨタの車両開発

国内においても、電動車両の導入を前倒しする動きが急となり、豊田章男社長は日本自動車工業会会長の立場も含め、雇用の維持などに懸念を示すが、逆に環境問題の深刻化に対するトヨタの姿勢は後手であり、悠長というか鈍感とさえ思える。しかも普及のメドが立たない燃料電池車(FCV)をフルモデルチェンジしておきながら、プリウスαのような身近で将来性を残すHVワゴンのモデルチェンジをせず、生産を終えるという。


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初代プリウスの誕生は、まだ20世紀の1997年であった。初代での苦労は報われ、HVで成功を収めたトヨタだが、その成功に甘んじて本格的電動化で後れをとっている。EVはつくれるというが、つくれることと売れることでは違うことを知らない。気づいていない。そこがEVの難しさだ。

21世紀も20年が過ぎ、それでもなお20世紀の価値観のまま冬眠したかのようだ。プリウスαの生産終了については、なんとも理解不能である。