日本海側を中心とした大雪・猛吹雪により、高速道路会社などが警戒を強めています。ひとたびクルマが自走不能になると、数千台の立ち往生につながるためです。そもそも、なぜこうした立ち往生が起こるのでしょうか。

雪道をノーマルタイヤで走るのは法令違反

 2021年1月8日(金)現在、日本海側を中心に大雪や猛吹雪が続き、NEXCO各社は高速道路の利用を控えるよう呼び掛けています。12月中旬、関越道で数千台が巻き込まれる大規模な立ち往生が発生し、完全解消まで50時間以上を要したこともあり、国土交通省も警戒を強めています。

 こうした大規模な立ち往生が発生する原因は様々ありますが、NEXCO東日本は「高速道路上では、自力走行不能車両が1台でも発生すると、長時間の渋滞や通行止めにつながる恐れがあります」としています。つまり、1台の立ち往生が数千台に影響を及ぼすことがあるのです。


2020年12月に関越道で発生した車両立ち往生の様子(画像:国土交通省)。

 NEXCO西日本によると、その原因車両へのペナルティなどは特段ないということですが、雪道を冬タイヤなどの滑り止めなしで走るのは、実は法令違反です。沖縄県を除く都道府県の公安委員会が道路交通法に基づき制定した滑り止めに関するルール(公安委員会遵守事項)に違反する行為で、罰金も定められています。

 その条文は都道府県ごとに異なりますが、多くは「積雪または凍結のため、滑る“おそれ”のある道路において」と、積雪や凍結が起こる前段階からを想定しています。また滑り止め策についても、「全輪にスノータイヤ(接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないものに限る。)を取り付ける等滑り止めの措置を講ずること」(山形県道路交通規則)というように、冬タイヤのすり減り具合まで言及されている地域もあります。

道路側も対策強化 「強制排除」可能に

 頻発する雪道での立ち往生への対策は、ここ数年で強化されてきました。2014(平成26)年からは、「立ち往生車両の強制排除」が可能になっています。これは、災害対策基本法に基づく区間指定が行われた場合に、道路管理者が重機などを用いて車両を移動させることができるというものです。

 国土交通省によると、立ち往生車両が除雪車両の障害となり、除雪が滞るうちに、さらに別の場所で立ち往生が発生する悪循環に陥るケースがあるといいます。2014(平成26)年2月に関東甲信地方を襲った豪雪で、車両の立ち往生が多発したことを受けて、同年11月には災害対策基本法も改正されました。

 また、2018年から全国の指定区間において導入された、冬タイヤのみではNGという意味の「チェーン規制」も、その目的は車両立ち往生の防止にあります。指定区間は、特に大型車の立ち往生が頻発している峠道などが中心です。


立ち往生車両で除雪に支障が出て、さらに雪が積もる悪循環が起こるという(画像:国土交通省)。

 除雪を担う道路管理者も、近年は除雪のための「予防的通行止め」を行うようになっています。これは、雪が本格的に積もってから通行止めをして除雪作業を開始するのではなく、早めに通行を止めて集中的に除雪を行い、立ち往生の発生を未然に防ぎ、早期の通行再開につなげるというものです

 この手法は雪の少ない首都高でも行れることがあります。首都高においても冬期は路面へ凍結防止剤を散布し、極力、通行止めをしないようにするものの、それでは追いつかないような大雪が見込まれる際に、予防的な通行止めを行うのだそうです。

 高速道路に限らず、雪国の道路除雪は作業員の高齢化や、なり手不足、熟練を要するその技術の継承などに課題を抱えています。法令の面から除雪をサポートする体制がつくられてきましたが、雪道を正しく恐れる、あるいは自重するといったドライバーの心構えも求められます。

※誤字を修正しました(1月9日19時00分)。