(C)2019「天気の子」製作委員会

写真拡大

1月3日の21時よりテレビ朝日系にて、新海誠監督『天気の子』が地上波初放送となる。
それを記念し、公開直前のタイミングで行われたインタビューを掲載する。
新海監督は『天気の子』と『君の名は。』の違いや、自身の志向や作風の変化などを語っている。

恋愛が成就する物語ではなくて、二人が共に乗り越える物語

時代の変化と作品の変化

──前号の特集で、醍醐さんと森さんにお話をうかがいました。お二人ともキラキラしたまなざしで「新海監督は本当に優しくて、素敵な方です!」って言ってました(笑)。

新海 (前号のページを見ながら)そうですか(笑)。二人はね、なんか本当にキラキラしていますよね。

──二人のキラキラした存在感が、作中の主人公たちにも反映されていた気がします。

新海 そうですね。もちろん、二人がキャストに選ばれる前に物語としては完成していたし、Vコンテも出来ていたし。そこで描いている帆高の声、陽菜の声を、オーディションをして探していき、たどり着いたのがこの二人だったんですよね。今振り返ると、もうこの二人以外ではあり得なかったなって思うんですが、選んでいる時はすごく悩みました。ほかにも力のある方は何人かいらっしゃったし、最終的には二人のバランスと組み合わせが大事だと思ったので。どういう二人なら相性がいいかなって確かめながらオーディションをしたので、醍醐くんには陽菜役の候補の七菜ちゃん以外の人ともやってもらったし、七菜ちゃんにはその逆をやってもらったし。そういう意味では、この二人になったことで映画中のセリフが変わった、物語が変わった、みたいなことはないんです。でも同時に、この二人がこの映画にくれた力というのは非常に大きいとは思います。アフレコの最中もまだ作画期間だったので、作画のスタッフも二人に会っていましたし。この二人の声を念頭におきながら、最後の作画の仕上げもしていたんじゃないかなと思います。

──キャラクターデザインは『君の名は。』同様、田中(将賀)さんです。今回は主人公の二人をどんなキャラクターとして描きたいと、田中さんと話をされましたか?

新海 僕らも一緒に仕事をするようになって、わりと長いので。今回は、田中さんとそういう言葉のやりとりはしたかなぁ……。脚本会議の段階から田中さんにも一緒に参加してもらっていたので、脚本作業を進めながら陽菜や帆高、その他のキャラクターのスケッチも出してもらっていたんです。それに対して、僕からあまりオーダーはしなかったです。そういう意味では、脚本を読んだ田中さんの中から、生まれてきたキャラクターだったと言えますね。ただ、僕が最初に書いた企画書があって、そこに帆高と陽菜の何となくのイメージは描かれてはいたので、その雰囲気が、ベースにあったとは思います。
 企画書の表紙に僕が描いた絵は、映画のポスタービジュアルにとても近い絵でした。ビルの屋上で、帆高と陽菜が空を見ているという絵で、帆高はTシャツにジーンズで黒髪……まあ、普通の子ですけど(笑)。陽菜はパーカーでショートパンツ。そのイメージは最初に描いたイラストの段階からあって、そのイラストの気分を田中さんが上手く具体化してくださったという面もあるかと思います。でも、あまり言葉にしてのやりとりはしなかったですね。

──帆高と陽菜は、とても「元気」な主人公という印象が強かったです。何となく新海監督が描く主人公が、作品ごとにだんだん元気になっている気がするのですが。

新海 だんだん元気になっているかぁ……そうかもしれないですね(笑)。僕は常に自分の見たいものを──自分が最初の観客ですから──作っているし、とはいえ、自分だけが見たいものを作っても仕方がないので、「今、みんなはこういうものを見たいんじゃないかな」って自分なりに感じたものを作っているんですよね。そういう意味で言うと、30代に作っていた初期の作品の頃、あの時の自分が見たかったのは、どちらかというと内省的な主人公だったし、少なくとも僕の周りにいるお客さんたちが見たいのは、そういう方向じゃないかという気持ちがあったと思います。