急勾配の坂を利用したバンクシーの新作“Aachoo!!(ハックション!!)”(画像は『Banksy 2019年12月11日付Instagram「Aachoo!!」』のスクリーンショット)

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家が何者かに落書きされたらオーナーは怒り心頭だろうが、この人物においては例外だ。このほどイギリスのブリストルにある民家の壁に覆面アーティスト「バンクシー(Banksy)」の新作が一夜にして現れ、家主を含め近隣住民は興奮に沸き立っている。『Mirror』『UNILAD』などが伝えた。

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英ブリストルのトッターダウン、ヴェール通りに建つ一軒家の壁に12月10日の朝、正体不明のアーティストとして知られる「バンクシー」の新作が見つかった。

バンクシーイギリスを拠点に活動する覆面アーティストで、映画監督や政治活動家としての顔も持つ。彼の作品は独特なステンレス技法を用いた画法が特徴的で、反資本主義や反権力など政治色の強い内容をブラックジョークを交えた風刺画として描いたものが多い。

バンクシーのストリート作品は世界中の壁や橋などにひっそりと、そして突如現れるために、単なる落書きと勘違いされて消されてしまうことも少なくないという。

このたびの新作“Aachoo!!(ハックション!!)”は頭にスカーフを巻いた女性が大きなくしゃみで入れ歯を飛ばしている姿を描いたもので、バンクシーは11日、公式Instagramを通じてユーモラスな写真で作品を公表した。

急勾配の坂に建つ家という地の利を生かして撮られたこの写真、まるで壁画の女性が隣の家やゴミ箱、道に立つ男性の傘などをくしゃみで吹き飛ばしてしまったかのように見せている。どうやら今回の新作は、壁画そのものと壁を使ったトリックアート作品という2つの見方で楽しめるようだ。

この新作については、これまでの彼の作品傾向から「新型コロナウイルス感染拡大でもマスクを着用しないことを示唆したものだろう」「このブリストルに吹き荒れる強風についても彼は触れているのではないか」などの見方が有力視されている。

なおこの家の持ち主であるアイリーン・メーキンさん(Aileen Makin、57)は、実はこの物件を30万ポンド(約4160万円)で売りに出す予定だった。しかしこのバンクシーの新作によって、資産価値は一夜にしてなんと13倍以上の400万ポンド(約5億5千万円)に高騰しあわてて売却計画を中止したという。

「MyArtBroker」の創設者であるジョー・サイアーさん(Joe Syer)は、バンクシーの壁画の出現に伴うこの家の資産価値についてこのように明かしている。

バンクシー作品の公式認証機関『ペスト・コントロール(Pest Control)』は、ストリートアートの認証と販売は行っておりません。しかし、しかるところに出せば300万ポンド(約4億1600万円)から500万ポンド(約6億9400万円)の価値があると推定できます。」

アイリーンさんの息子ニックさん(Nick)によると、作品を間近で見ようと家の屋根に登る人も現れており、見学者らに囲まれる生活に家族は疲弊しているそうだ。アイリーンさんは現在、このバンクシーの新作を保全する最良の方法を警備会社に相談しているという。

とはいえ「このまま壁を大衆に晒してはおけない」と立ち上がったのが、ちょうど1週間前にこの家を退居したばかりのフレッド・ルースモアさん(Fred Loosmore、28)だ。

家具職人であるフレッドさんは「人々によってこの作品が汚されてしまうのが気がかりだったんだ。幸運にも僕には工房と余っていた材料があったからね」と明かしており、持ち前の技術で1枚の透明なアクリル板を壁画の上に設置した。

フレッドさんは続けて、このように話している。

「これからスクリューでアクリル板を固定するところです。」
「僕がこの家に住んでいた頃、この急勾配の坂に自転車で挑戦しようとする人などでこの場所はとても賑わっていました。」
「ここは素晴らしい場所ですよ。このアートも素敵ですね。」

ヴェール通りはイギリスでも有数の急勾配の坂として知られており、イースター(復活祭)では卵転がし競争も開かれている。

この坂を上手く利用したバンクシーの新作は、人気観光スポットとしてヴェール通りをより賑やかに彩ることだろう。

画像は『Banksy 2019年12月11日付Instagram「Aachoo!!」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 YUKKE)