日本人は、言葉や言い方や見せ方のスキルを知らないだけで、「莫大な損」をしているそうです(画像: msv/PIXTA)

日本を代表する一部上場企業の社長や企業幹部、政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わり、これまでに1000人以上の話し方を変えてきた岡本純子氏。

たった2時間のコーチングで、「棒読み・棒立ち」のエグゼクティブを、会場を「総立ち」にさせるほどの堂々とした話し手に変える「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれ、好評を博している。

その岡本氏が、全メソッドを初公開した『世界最高の話し方 1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた!「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』を上梓した。コミュニケーション戦略研究家でもある岡本氏が「正しく自分を盛って、自信を持って話す方法」について解説する。

日本人は「『盛り』が少ない話し方」で損をしている

「もったいない……」。私は海外でコミュニケーションの修業をし、そのノウハウを日本に持ち帰って、エグゼクティブに伝授をしているわけですが、毎日、こうつぶやかずにいられません。


せっかくの才能や商品を上手にアピールできない、いい考えなのに、うまく伝わっていない……。ほんのちょっとだけ、言葉や言い方や見せ方を変えるだけで、魅力は100万倍アップするのに、そのスキルを知らないだけで、「莫大な損」をしているのです。日本人の「コミュ力ノウハウ不足による経済損失効果」はGDP数パーセント分に相当するとさえ私自身は感じています。

この「もったいない」の代表例が、「日本人は世界最強レベルで『謙虚』であるために『盛り』がとても弱い」ことです。

海外に出て、日本の留学生やビジネスパーソンが強く実感するのは、「周りにいる人たちの『根拠のない自信』はどこからくるのか」ということです。中味が薄くても、英語が下手くそでも、堂々と身振り手振りで話す人々と、知識や知見はあっても、おずおずとしか話ができない日本人。

これは別に生まれつきの問題でもなんでもなく、「文化的・社会的な要因」「環境の影響」が大きいわけですが、このグローバル競争時代に、ちょっと「盛り」が少ないだけで、損をするのはもったいないと思いませんか。

自信は、話し方を少しだけ「盛る」ことで、あっという間に促成栽培できるものです。

そこで、「あなたの自信を削ぐ3つの言葉」を紹介します。次の「3つの言葉」をできるだけ、使わないようにしてみる。そんな「小さな変化」が、「マインドを大きく変えていく」のです。

1つ目は「『ワンクッション置く言葉』を削ること」です。

「削ること」で「自分の信念」をさらにアピールできる

【1】「〜と思います」など「ワンクッション置く言葉」を削る

自分を大きく、自信がある姿を印象付けたいと思うのであれば、最初にこの「ワンクッション置く言葉」を極力減らしてみるところから始めてみてください。その一言とは「〜と思います」です。

これまで、「コミュニケーションの家庭教師」として、1000人を超えるエグゼクティブの指導にあたってきましたが、この言葉が口癖になっている人は実に多いのです。もちろん、たまに使うのは問題ないのですが、何回も何回も繰り返す人も少なくありません

誰でもその名を知るある大企業の社長に、その指摘をすると、彼はこう言いました。「はっきり言い切るのは創業社長で、われわれ、サラリーマン社長は、はっきり言い切るのができないんだよ」と。

でも、次のような「言い換え」は十分できますよね。

お話ししたいと思います → お話しします
ご紹介したいと思います → ご紹介します
今日は〇〇について考えていきたいと思います
→ 考えていきます、考えていきましょう
〇〇が必要だと思っています → 〇〇が必要です
お勧めしたいと思っています → お勧めします!

気がつくと、「〜と思います」「〜と考えています」などと、ワンクッション置いていませんか。「言い切って、断定調にしてしまうと、傲慢に聞こえるのではないか」という配慮が働くのかもしれませんが、なくても、まったく違和感はないですよね。

「〜と思います」を省くことで、文章が短くなり、すっきりとして、より自分が信念をもって話しているという印象を与えることができます。

日本には、敬語だけで、尊敬語、謙譲語、丁寧語などと種類があり、上下関係によって、言葉を厳密に使い分けることを要求されます。そうしたなかで、「『了解しました』が失礼である」などの「間違った謎マナー」が蔓延しているわけですが、一般的に、「へりくだりすぎる言い回し」が多用されているきらいがあります。

2つ目は「『過度なへりくだり』をやめる」ことです。

「主導権をとりたい場面」では過度なへりくだりはいらない

【2】「〇〇させていただきます」など「過度なへりくだり」をやめる

謙譲語とは、相手を敬って、自分を低い立場において話す言葉ですが、本来なら対等であるべき人に、むやみにへりくだる言葉を使うことで、「私はあなたより下の立場にいるのだ」とメッセージを発していることがあります。

カリスマ性を上げたいと考えるのであれば、過度に丁寧すぎる言葉が「仇」になるのです。

例えば、最近よく聞くこの言葉。「〇〇させていただきます」。そこに、「と思います」まで加わって、「ご紹介させていただきたいと思います」などといった言い方をしていませんか。これは「ご紹介いたします」でまったく問題ないわけです。

ご説明させていただきます → ご説明します
務めさせていただく → 務めます
拝見させていただきます → 拝見します
についてお話させていただきます → についてお話します
確認させていただきます → 確認いたします

これで十分ですよね。「一文はなるべく短く、言い切る」ほうが言いやすく、聞き取りやすい。そして、より確信をもっているように聞こえるのです。

日本人は「名刺は相手より低い位置で出す」といったような、極度に自分を小さく、下に見せるしぐさやマナーに縛られ、知らず知らずのうちに、自信なさげにふるまうことに慣れてしまっている一面があります。

丁寧で失礼に当たらない言動は大切ですが、会議やプレゼンなど、リーダーシップや主導権を取りたい場面で、「過剰なまでにへりくだる必要はまったくない」ということです。

3つ目は「『間を埋める言葉』に注意する」ことです。

【3】「えー」「あー」「あのー」など「間の埋め言葉」に注意する

リモートでの会議が増えて、話し手のあの言葉が妙に気になりませんか。リアルで会って話をするときには、それほど気にならないのに、リモートだと声に意識が集中してしまうため、なぜか耳障り。

それが、英語では「filler word(穴埋め言葉)」と呼ばれる、

「えー」「あー」「あのー」

といった「間(ま)を埋める」言葉です。

人は話し方にさまざまなクセを持っています。「『思います』『させていただきます』を多用する」「一文が長い」、あるいは「『●●が〜』『●●で〜』と語尾が伸びる」などなど、自分では気づきにくい「話し方のクセ」はたくさんあります。とくに、この「穴埋め言葉」は誰でもついつい使ってしまいがちです。

自分ではなかなか気づかない「話し方のクセ」ですが、意識することで取り除くことができます。人前で話すことが大の苦手だった私は、6年前に渡米し、ニューヨークでコミュニケーション修業を重ねました。

アクティングスクールや、ボイストレーニング、プレゼンのワークショップなど無数の現場に通い、「自信を持って話せるスキル」を学びましたが、「トーストマスターズ」と言われる、パブリックスピーキングのサークルにも参加していました。


岡本純子さんのトークイベント『世界最高の話し方』1DAY講座を11/21(土)14時より天狼院書店「Esola池袋店」で実施します。オンラインでの参加も可能です。詳しくはこちら (画像:maruco/PIXTA)

そこで徹底されていたのが、この「穴埋め言葉」をなくす練習です。英語の穴埋め言葉は「um」「ah」「so」「like」といったものですが、自分がプレゼンをしている間に、どれだけそういった言葉を使ったのかをほかのメンバーが数えてくれました。どれぐらい使っているかを意識することで、「穴埋め言葉」は減らしていけるからです。

みなさんもぜひ、スマホなどで「自分の話している姿」を録画してチェックしてみてください。「意識していなかった話し方のクセ」に気づくはずです。

話し方を「ほんの少し変えるだけ」でOK

ほかにも「ジェスチャー」「姿勢」「言い回し」などをほんの少し変えるだけで、「あっという間に自信を持って話せる方法」は数多くあります。

「堂々と話すことができないのではなく、その『正しい方法』を知らないだけ」。誰でもいつからでも、その達人になれます。みなさんもぜひ、「話し方」を変え、「人生」を変えてみてください