政令指定都市「幸福度」トップ5


総合1位は、日本サッカーの新聖地「埼玉スタジアム2002」があるさいたま市(写真:K@zuTa/PIXTA)

地域社会に生きる人々の幸福を考えるきっかけをつくることを目指して、2012年から、2014、2016、2018年と2年ごとに(一財)日本総合研究所が発表している『都道府県別幸福度ランキング』。同調査の最新結果が明らかになった。

先日配信した都道府県ランキングに続いて、今回は政令指定都市ランキングを紹介する。

同調査では、地域の社会的状況や構造を示す7つの基本指標と、人々の幸福感を具体的に評価する尺度として「健康」「文化」「仕事」「生活」「教育」の5分野・40指標を設定。これらを総合して、政令指定都市の「幸福度ランキング」を算出している。

【2020年10月9日13時10分追記】初出時、データの一部に誤りがあったため、ランキング表と本文を一部修正しました。

総合1位はさいたま市が返り咲く

20ある政令指定都市の中で総合ランキング1位となったのは、さいたま市だ。前回2位から首位に返り咲いた。「人口増加率」や「勤労者世帯可処分所得」で1位となっており、都心へのアクセスのよさを背景にベッドタウンとして成長を続けている。

また、文化分野では「書籍購入額」が2016年版から毎回順位を上げており、今回で1位に躍り出た。余暇・娯楽領域でも順位は高いほか、健康分野でも上位を維持している。

総合2位は、前回1位だった浜松市。個人や家族の生活指標は徐々に順位を上げている。「生活保護受給率」「一人暮らし高齢者率」の低さからは、地域社会に根ざした強固な生活基盤が形成されていることが読み取れる。

一方で、文化分野と教育分野では、前回から順位がやや低下した。その結果、2018年版からは1ランク順位を落とす格好となった。

総合ランキング3位は川崎市。2018年版に続いて「若者完全失業率」「正規雇用者比率」「製造業労働生産性」が1位となるなど、仕事分野でトップの座を守っている。

所得水準も上位をキープしており、安定した雇用環境に支えられ、市民が豊かな経済活動を行っていることがうかがえる。

健康分野ランキングは仙台市がトップ

続いて、基本指標と5分野のランキングについて解説する。

基本指標ランキングでは、1位がさいたま市、2位が横浜市、3位が浜松市となった。さいたま市は「人口増加率」が政令指定都市の中でも高く、「勤労者世帯可処分所得」も1位だった。

稼働年齢層の転入が多く、若く活気にあふれた街づくりが奏功。結果として、「財政健全度」もトップ5をキープしており、市民経済の豊かさが安定した財政基盤を支えているとみられる。

続いて、健康分野ランキングでは、1位が仙台市、2位が浜松市、3位が千葉市となった。過去2回とトップ3の順位に変動はない。

仙台市は、対象者に直接、健康診査の受診を勧める取り組みを継続。「健康診査受診率」で住民の約半数が受診しており、3位以下と10ポイント以上の差がついている。「生活習慣病による死亡者数」や「平均寿命」も上位5位圏内で安定している。

文化分野ランキングでは、1位に京都市、2位に神戸市、3位に福岡市が入った。神戸市、福岡市はいずれも海外からのアクセスが良好で、インバウンドの増加が影響しているとみられる。

京都市は神社仏閣など日本を代表する文化財を有し、国際的な文化都市としての評価が高い。「姉妹都市提携数」「国際会議外国人参加者数」などの指標が3回連続で1位。「教養・娯楽支出額」も1位となり、市民の余暇活動も充実している。

仕事分野ランキングは、1位川崎市、2位名古屋市、3位広島市の順。川崎市は「製造業労働生産性」が政令指定都市でトップ。「若者完全失業率」「正規雇用者比率」「女性の労働力人口比率」も1位で、製造業の経営基盤が雇用の安定につながっている。

生活分野ランキングでは、1位が新潟市、2位が浜松市、3位が静岡市だった。新潟市は「持ち家比率」で1位、「一人暮らし高齢者率」で2位と、住民が地域に根ざした生活基盤を有している。「生活保護受給率」の低さも上位で、家族や地域社会の中で互いを支え合う住民性が、生活困窮の防止に寄与しているとみられる。

教育分野ランキングでは、1位に京都市、2位に新潟市、3位に熊本市が入った。京都市は「大学進学率」が3回連続で1位となっており、2020年版では20市平均と比べて10ポイント以上高かった。「教員一人あたり児童生徒数」の少なさ、「義務教育費」の高さ、「図書館・博物館等施設数」の多さから、充実した教育環境が整備されていることが読み取れる。