8月6日のプロ野球巨人VS阪神戦の8回裏途中、11点差で負けている状態の巨人がマウンドに野手登録の増田大輝選手を送り込んだ「野手登板」が、賛否両論を呼んでいます。

上原浩治さんやダルビッシュ有さんといったメジャーリーグを知る元選手らを含めた賛成派からは、「メジャーリーグではよくある起用」「長いシーズンを戦うなかで勝ち試合に投げさせたい投手を温存するのは合理的な作戦」「いいものは取り入れる固定観念にとらわれない采配」と好意的な声が上がっています。

一方で巨人OBで監督もつとめた堀内恒夫さんは「これはやっちゃいけない」「巨人軍はそんなチームじゃない」「こんなことして相手のチームは馬鹿にされてるとは思わないだろうか」と否定的な意見を表明し、江夏豊さんも「お客さんに失礼ですよ」と反対の立場を表明するなど、強い反対の声も上がっています。

一見すると「合理的」である賛成側の意見と、「情緒的」でしかないと受け止められる反対派の意見ですが、その実、賛成派の「理」とそれを解決する「手段」には大きなかい離があると言わざるを得ません。

「長いシーズンを戦ううえで投手を休ませるための野手登板」は確かに合理的でありますが、本来その問題点を解決する手段は「試合数を少なくする」「登録選手の人数を増やす」「シーズンの期間を延長する」などであるべきであって、まだベンチには専業の投手が残っているにも関わらず、半笑いしながら「手投げ」で投球する野手をマウンドに上げ、「物珍しさ」で捨て試合を正当化することではないはずです。

そもそも今季このようなコロナ禍のなかでも120試合という試合数を設定し、それをこなすための過密日程を組んでいるのは日本プロ野球自身です。それは商売として多くの試合をこなしたい、すなわち「お金が欲しい」というビジネス上の理由に過ぎません。そして、「お金が欲しい」に由来する日程の苦しさを解決するために「野手登板」という手段を持ち出すのは「金は欲しいが、ラクもしたい」ということでしかありません。それはプロの興行として誇れる姿勢なのでしょうか。

お客様に野球をお見せしたい、日本に元気を与えるために1試合でも多く試合をこなしたいという意図での「120試合過密日程」であるならば、1イニングでも2イニングでも疎かにせず、捨て試合・捨てイニングすら作らないように全力でプレーをするのが筋というもの。「120試合過密日程」が苦しいのであれば、シーズンを成立させることなど無理に追い求めず、100試合なり90試合なりのできる範囲の試合数に減じるべきでしょう。

「よくある起用」であるとされるメジャーリーグでは、2019年には90試合もの野手登板が記録されており、2021年シーズンからは目に余る野手登板を規制するルールが導入されます。「いいものを取り入れる」ことを称賛する賛成派も含めて、日本プロ野球は「野手登板」を規制するルールを迅速に導入すべきでしょう。「金は欲しいが、ラクもしたい」というファン軽視の起用が、ルールの歯止めもないままに、日本プロ野球界の各球団に感染拡大する前に。

文=フモフモ編集長