横滑りや乗り上げなどが車両単独での横転につながる

 高速道路の事故現場や、交通事故のニュースなどでときどき見かける横転事故。横転事故には車両単独事故と他のクルマに接触して転倒する車両相互事故の2種類があるが、国内の事故統計では、衝突や路外逸脱などの事故類型による区分はあっても、事故に伴う二次的な挙動としての車両横転の有無に関する調査項目はなく、なかなか数値的な資料が見当たらなかったのだが、(財)交通事故総合分析センターがミクロデータを公表していたので、これを手掛かりに考えてみよう。

 このデータは茨城県のつくば地区周辺で収集された、平成5年から平成15年までの1965件の事故例調査が基になっていて、これによると車両単独事故の22%、車両相互事故の6.6%はクルマが横転する状況に至っている。横転事故全体でみると、車両単独事故が59%で車両相互事故が41%と意外にも車両単独事故のほうが多い。

 単独で横転する原因は、横滑りからの横転と、縁石や法面に乗り上げての横転、そして脱輪・落下と、これらの組み合わせに集約される。クルマが横滑りするきっかけは、ハンドルの急操作や歩道など路上の固定物への乗り上げ、衝突などのケースがある。また高速道路などでは、急な横風を受けてクルマが流れ、カウンターステアを当てたところオツリをもらって蛇行→横転というパターンも報告されていた。

重心が高いクルマや背の高いクルマほど横転しやすい

 一方、車両相互事故の横転は、側突が29%、前突が9%、後突が4%といった具合だ。気になる車両種別の横転発生状況も見てみよう。

 単独事故では、大型貨物、SUV、軽自動車(乗用車)がトップ3で、それに僅差で普通貨物が続く。ところが相互事故では、SUV、ミニバン&1BOX、軽貨物がトップ3で、軽乗用車が4番目。車種別で少ないのは、やはりスポーツカー。セダンも少ない。

 物理的に考えれば、支持基底面から重心がはみ出せば物体は倒れるわけで、重心が高いクルマ、背の高いクルマほど小さな力で横転しやすく、スポーツカーのようにホイールベース・トレッド比が小さく、重心が低い、ペッタンコのクルマは横転しにくい。

 また、ボディ側面の面積が大きいクルマは、横風の影響も大きく受けるし、過積載や荷崩れ、タイヤバーストなどがきっかけで車両が不安定になり横転する事故も報告されているので、メンテナンスや荷物の積み方は非常に重要。

 横転事故は、見た目も派手だが、乗員へのダメージも大きな事故になりがち。とくにシートベルトが非着用だと、車外に放出される可能性が13%もあり(シートベルトを着用していれば1%)、車両が横転した場合、シートベルト非着用者の死亡率は着用者に比べて6倍になることもわかっている。

 当然、速度も大きく関わっていて、単独事故・車両相互事故ともに、衝突直前速度が高いと横転の発生率も高く、とくに単独の横転事故の25%は高速道路で発生している。

 まとめると、車両単独事故の1/5、車両相互事故の1/15が横転事故に発展していて、横転事故は意外に身近な事故であることがわかってきた。

 横転しやすいからといって車種を変えることはできないだろうが、愛車の特性をよく理解し、無理せず急ハンドルなどを避けること。また風の強い日は十分速度を落とし、走行するのを控え、風が強すぎるときは安全なところに退避するのも重要。そして、万が一の横転に備え、乗員全員がシートベルトを着用することも忘れずに。