車種構成の見直しによって廃止される車種の条件がある

 今の自動車メーカーは、電動化を含めた環境性能の向上、安全装備や自動運転技術の開発などに取り組む。その一方で商品の売れ行きは伸び悩み、国内と海外の両方で、生産規模の縮小を発表するメーカーもある。

 そこで実施されるのが車種構成の見直しだ。今まではカテゴリーと車種の数を増やしながら発展してきたが、今後は流れが変わる。開発と製造のコストを抑えるため、エンジン、プラットフォーム、車種の数を減らさねばならない。

 そうなると従来の車種をフルモデルチェンジせずに廃止して、位置付けの異なる別のクルマを投入することも考えられる。たとえば近年のマツダは、マツダ2(旧デミオ)やマツダ6(旧アテンザ)などを残すものの、プレマシーなどのミニバンは廃止した。その代わりSUVは充実させている。エンジンやプラットフォームはスカイアクティブシリーズに刷新され、従来とは違う商品構成を築いた。このような生き残りを賭けた商品戦略もあり、今後は廃止される車種も増えそうだ。

 廃止の条件はいくつか考えられる。まずは発売から10年以上を経過した車種だ。ここまで設計が古くなると商品力も下がり、従来型から乗り替えるユーザーも減ってしまう。存続させるには長くても9年でフルモデルチェンジしないと、従来型の乗り替え需要を新型につなげられない。

 従って10年以上を経過した車種は、フェードアウトする確率が高い。ただし生産台数の少ないオフロードSUV、商用車、一部のスポーツカーは、フルモデルチェンジの周期も長い。10年以上を経過した後でフルモデルチェンジする場合もある。

 廃止される2つ目の条件は、売れ行きの落ち込んだ国内専用車だ。海外で販売されず、なおかつ国内でも不振になると、商品として成立しない。これらの条件を考えると、以下の車種に生産を終える可能性がある。

1)トヨタ・プレミオ&アリオン

 ホンダ・グレイスが国内販売を終えた今、プレミオ&アリオンは、継続生産モデルのカローラアクシオと並ぶ貴重な5ナンバーセダンだ。それなのに2007年の登場後、フルモデルチェンジを行っていない。このまま終了すると思われる。

 ただしホイールベース(前輪と後輪の間隔)がプレミオ&アリオンと同じ2700mmに達する海外版カローラをベースにするなど、設計の大幅に異なる新型セダンを投入する可能性は残されている。

2)日産フーガ&シーマ

 フーガは2009年、そのロング版となるシーマは2012年の発売で、売れ行きが大きく下がった。車種の位置付けとしては大切だが、放置されている時間が長く、このまま終わりそうだ。

売れ行きが落ち込むことで新型車と入れ替わり消えていく可能性も

3)レクサスGS

 ほぼ同じサイズで、前輪駆動を採用するレクサスESが加わり、GSは廃止される。ただし今はLSが過剰に大きくなり、日本のユーザーからは「車庫に入らず先代LSから乗り替えられない」という不満も聞かれる。

 そこでGSは、実用的なESとは異なる4ドアクーペ風の後輪駆動プレミアムセダンにフルモデルチェンジすべきだ。従来のGSやESよりも位置付けを高め、先代LSのユーザーをカバーしたい。

4)日産キューブ

 高い天井と和風の内装により、独特のリラックス感覚を備える優れたコンパクトカーだ。しかし2008年に発生したリーマンショックの影響もあり、次期型の開発は凍結されてしまった。現行型も衝突被害軽減ブレーキなどが採用されず、生産を終えている。

5)トヨタ・ポルテ&スペイド

 2012年に発売された背の高いコンパクトカーだが、売れ行きは下がり、今では2016年に登場したルーミー&タンクが主力になった。ポルテ&スペイドは今後もしばらく生産を続け、ヤリスのプラットフォームを使った新型ハイトワゴンが登場すると、入れ替わりに引退する可能性が高い。

 このほかホンダS660、ホンダ・オデッセイ、日産エルグランド、トヨタ・プリウスαなども、現在の売れ行きと市場性を考えると、先行きは不透明だ。